3 / 99
-3-
しおりを挟む
「サラ、お前の嫁ぎ先が決まった」
「はぁ、そうですか…え?ええっ!?」
その爆弾は、家族揃った夕餉の席にて投下された。
「父上、明日のスケジュールみたいに言うから危うく聞き逃すところでしたよ…えと、私が婿に?」
「違う。お前が嫁に、だ」
「誰がそんな奇特な願いを?」
「ルクセンのサージス殿だ」
「…は?…いや、それはないでしょう」
「いや、事実だ」
私はここにきて、件のサージス殿と交流のある弟をみやる。
弟は、無表情でも確実にこくりと首を縦にふった。
「明日は天変地異が起こるに違いない…」
「ん?何だ?」
「いえ、何でも。私は騎士の仕事に就いていますが、それについては先方は何と?」
「続けて良いらしい」
「はぁ…」
おかしい。
先日だって、たまたま王城で顔を合わせた際には「貴女はまだそんな剣を握っているのですか、嘆かわしい。ガルダー侯爵が不憫だ」とサージスはのたまったのだ。
サージスには、目の中に入れても痛くない程可愛がっている妹がいて、彼女が理想の女性であると公言までしている。
美しく長い銀糸の様な髪にサファイアの様な青い瞳の美青年なのだが、痛いヤツだ。
その妹…ユリアナは、確かに女性のお手本の様な娘で、素直で愛らしく、見た目も性格もそれはそれは可愛らしい。
そんなサージスが私を嫁にとは…?
何か裏がありそうだが、私に拒否権はないだろう。
元々、騎士の道も反対されたのを無理矢理突き進んだのだ。
その時、「もし万が一、求婚されたらそれを受ける。正当な理由なしに断らない」と約束してしまったのだ。
「それと、カダルの結婚も決まった」
「おぉ!!そうなのか!?おめでとう!!」
我が弟であるカダルは、見目麗しく引く手あまたなのに女を寄せ付けず、シスコン気味だったから心配していたのだ。
「ありがとう」
カダルは興味無さげに答える。
おい、自分の話ですらもどうでも良さそうな態度は改めなさい、嫁に逃げられるぞ?
「お相手は誰なんだ?」
「…姉さんも、良く知ってるよ」
食事ばかりで名前を言わない弟に業を煮やし、父上が答える。
「ははは、こちらもルクセンのユリアナ様だ」
「…は??」
カダルの趣味と真逆じゃないか…?
父上の前だったから、辛うじてその疑問は飲み込む事が出来た。
☆☆☆
「カダル、どういうつもりだ?」
「…何が?」
「ユリアナを嫁になど、何を考えている?」
「…別に、何も」
「嘘をつけ。お前がユリアナに全く興味がない事はわかっている。…サージスに、何か弱味でも握られたか?」
カダルが、ごく僅にだが反応を見せた。
他人が見ても…いや、両親が見てもわからないレベルで。
「仮にサージス様に弱味を握られたとして、それがなんで、彼が溺愛している妹との結婚に結びつくんだよ?」
それもそうだ。
しかし。
「…わかった。だがカダル。お前、ユリアナを泣かせる様な事はするなよ?私にとっても、可愛い妹の様なものだからな」
「わかってる。俺は泣かせないよ」
「そうか。なら、良い」
カダルとサージスが何を考えているのかはわからないが、カダルは私にべったりでサージスはユリアナにべったりだ。
そんな環境が結婚という契約で変わるのならば、両親を安心させる為にもその提案に乗ろうじゃないか。
サージスとは気が合わないが、考えてみれば、騎士の仕事をしても良いなどという旦那はこの先現れないだろうし、ラッキーと思う事にしよう。
新たな人生設計を考えるのに夢中で、私はカダルが何か呟いたのを聞きそびれてしまった。
「ユリアナを泣かせるのはサージス様で、俺が泣かせるのは姉さんだからね」
「はぁ、そうですか…え?ええっ!?」
その爆弾は、家族揃った夕餉の席にて投下された。
「父上、明日のスケジュールみたいに言うから危うく聞き逃すところでしたよ…えと、私が婿に?」
「違う。お前が嫁に、だ」
「誰がそんな奇特な願いを?」
「ルクセンのサージス殿だ」
「…は?…いや、それはないでしょう」
「いや、事実だ」
私はここにきて、件のサージス殿と交流のある弟をみやる。
弟は、無表情でも確実にこくりと首を縦にふった。
「明日は天変地異が起こるに違いない…」
「ん?何だ?」
「いえ、何でも。私は騎士の仕事に就いていますが、それについては先方は何と?」
「続けて良いらしい」
「はぁ…」
おかしい。
先日だって、たまたま王城で顔を合わせた際には「貴女はまだそんな剣を握っているのですか、嘆かわしい。ガルダー侯爵が不憫だ」とサージスはのたまったのだ。
サージスには、目の中に入れても痛くない程可愛がっている妹がいて、彼女が理想の女性であると公言までしている。
美しく長い銀糸の様な髪にサファイアの様な青い瞳の美青年なのだが、痛いヤツだ。
その妹…ユリアナは、確かに女性のお手本の様な娘で、素直で愛らしく、見た目も性格もそれはそれは可愛らしい。
そんなサージスが私を嫁にとは…?
何か裏がありそうだが、私に拒否権はないだろう。
元々、騎士の道も反対されたのを無理矢理突き進んだのだ。
その時、「もし万が一、求婚されたらそれを受ける。正当な理由なしに断らない」と約束してしまったのだ。
「それと、カダルの結婚も決まった」
「おぉ!!そうなのか!?おめでとう!!」
我が弟であるカダルは、見目麗しく引く手あまたなのに女を寄せ付けず、シスコン気味だったから心配していたのだ。
「ありがとう」
カダルは興味無さげに答える。
おい、自分の話ですらもどうでも良さそうな態度は改めなさい、嫁に逃げられるぞ?
「お相手は誰なんだ?」
「…姉さんも、良く知ってるよ」
食事ばかりで名前を言わない弟に業を煮やし、父上が答える。
「ははは、こちらもルクセンのユリアナ様だ」
「…は??」
カダルの趣味と真逆じゃないか…?
父上の前だったから、辛うじてその疑問は飲み込む事が出来た。
☆☆☆
「カダル、どういうつもりだ?」
「…何が?」
「ユリアナを嫁になど、何を考えている?」
「…別に、何も」
「嘘をつけ。お前がユリアナに全く興味がない事はわかっている。…サージスに、何か弱味でも握られたか?」
カダルが、ごく僅にだが反応を見せた。
他人が見ても…いや、両親が見てもわからないレベルで。
「仮にサージス様に弱味を握られたとして、それがなんで、彼が溺愛している妹との結婚に結びつくんだよ?」
それもそうだ。
しかし。
「…わかった。だがカダル。お前、ユリアナを泣かせる様な事はするなよ?私にとっても、可愛い妹の様なものだからな」
「わかってる。俺は泣かせないよ」
「そうか。なら、良い」
カダルとサージスが何を考えているのかはわからないが、カダルは私にべったりでサージスはユリアナにべったりだ。
そんな環境が結婚という契約で変わるのならば、両親を安心させる為にもその提案に乗ろうじゃないか。
サージスとは気が合わないが、考えてみれば、騎士の仕事をしても良いなどという旦那はこの先現れないだろうし、ラッキーと思う事にしよう。
新たな人生設計を考えるのに夢中で、私はカダルが何か呟いたのを聞きそびれてしまった。
「ユリアナを泣かせるのはサージス様で、俺が泣かせるのは姉さんだからね」
16
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる