言いなり聖女、ただひとつの選択

イセヤ レキ

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ジュノが真っ直ぐに向かった先にあったのは、その広さに反してとても殺風景な部屋だった。
どうやらジュノ自身の部屋のようで、「これからチェルシーの服も揃えていこうな」とウキウキとした様子で語りだす。

部屋にあるいくつもの窓にはガラスもなにもなく、太い柱の向こうには、洞穴の中を……住民を一望出来るバルコニーが設置されていて、私はそのバルコニーからぼんやりと外を眺めながらジュノに聞いた。



「あの……何故私なのでしょうか?」
ジュノの国……魔族の国は、強さが全てだと聞いている。だから本来、出会った時、あのモンスターに食べられるだけだった弱い私に、ジュノが興味を示すことはない筈だった。

(私が聖女だから……?)

私が聖女の力を発現してから、お姉様の婚約者も私に強い関心を持ちだした。
だから、ジュノも聖女の力が欲しいと考えるのが自然だ。
であれば、やはり私でなくても良い筈で。

そもそも、聖女の力は遺伝ではないとされている。
今まで聖女の力を自分の家門のものにしようと、平民出身であっても王族や貴族に召し上げられた過去があるが、結果聖女が産まれたことはないという。

(ジュノは癒しの力が欲しいのかしら?……この国の為に……)

しかし、ジュノからの返事はやけにあっさりとした、私には想像出来ないものだった。
「ん?チェルシーが強くて綺麗だと思ったから」
「……え?」

私が強い……とは、ジュノが言っている意味がわからず、首を傾げる。

「初めて会った時。チェルシーだけが、モンスターから逃げずに他人の為だけに真っ直ぐ戦ってたろ?最初、助けるつもりなんてなかったんだけど。その意思の強さって言うか、瞳の奥の底力っつーの?それに目が離せない位に惹かれてさ。気付いたら、助けてた」
あはは、とジュノは笑って言う。

言っとくけど、この国で俺が惹かれた奴なんていないからな、とおどけて言う。

「その癖、他の奴等が死んだ途端、自分の為に足掻くことはしないでさ。俺からみたら、むしろまるで死に急いでるみたいに見えた。チェルシーはさぁ、自分のことは後回しで、他人のことを何よりも最優先にするだろ?他人なんかどうでもいいからさ、俺がチェルシーの最優先になりたいなと思って」

ジュノは、見上げる私の頬にそっと両手を添える。

「チェルシーの目に写るのは、俺だけで良い。俺だけを想って、俺だけ見て、俺だけに笑い掛けて、俺の傍で俺と幸せになって欲しいって思ったんだ。多分これが独占欲って言うんだろうな」

聖女である自分に、そんなことを言う人は初めてだった。
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