8 / 9
8
しおりを挟む
ジュノが真っ直ぐに向かった先にあったのは、その広さに反してとても殺風景な部屋だった。
どうやらジュノ自身の部屋のようで、「これからチェルシーの服も揃えていこうな」とウキウキとした様子で語りだす。
部屋にあるいくつもの窓にはガラスもなにもなく、太い柱の向こうには、洞穴の中を……住民を一望出来るバルコニーが設置されていて、私はそのバルコニーからぼんやりと外を眺めながらジュノに聞いた。
「あの……何故私なのでしょうか?」
ジュノの国……魔族の国は、強さが全てだと聞いている。だから本来、出会った時、あのモンスターに食べられるだけだった弱い私に、ジュノが興味を示すことはない筈だった。
(私が聖女だから……?)
私が聖女の力を発現してから、お姉様の婚約者も私に強い関心を持ちだした。
だから、ジュノも聖女の力が欲しいと考えるのが自然だ。
であれば、やはり私でなくても良い筈で。
そもそも、聖女の力は遺伝ではないとされている。
今まで聖女の力を自分の家門のものにしようと、平民出身であっても王族や貴族に召し上げられた過去があるが、結果聖女が産まれたことはないという。
(ジュノは癒しの力が欲しいのかしら?……この国の為に……)
しかし、ジュノからの返事はやけにあっさりとした、私には想像出来ないものだった。
「ん?チェルシーが強くて綺麗だと思ったから」
「……え?」
私が強い……とは、ジュノが言っている意味がわからず、首を傾げる。
「初めて会った時。チェルシーだけが、モンスターから逃げずに他人の為だけに真っ直ぐ戦ってたろ?最初、助けるつもりなんてなかったんだけど。その意思の強さって言うか、瞳の奥の底力っつーの?それに目が離せない位に惹かれてさ。気付いたら、助けてた」
あはは、とジュノは笑って言う。
言っとくけど、この国で俺が惹かれた奴なんていないからな、とおどけて言う。
「その癖、他の奴等が死んだ途端、自分の為に足掻くことはしないでさ。俺からみたら、むしろまるで死に急いでるみたいに見えた。チェルシーはさぁ、自分のことは後回しで、他人のことを何よりも最優先にするだろ?他人なんかどうでもいいからさ、俺がチェルシーの最優先になりたいなと思って」
ジュノは、見上げる私の頬にそっと両手を添える。
「チェルシーの目に写るのは、俺だけで良い。俺だけを想って、俺だけ見て、俺だけに笑い掛けて、俺の傍で俺と幸せになって欲しいって思ったんだ。多分これが独占欲って言うんだろうな」
聖女である自分に、そんなことを言う人は初めてだった。
どうやらジュノ自身の部屋のようで、「これからチェルシーの服も揃えていこうな」とウキウキとした様子で語りだす。
部屋にあるいくつもの窓にはガラスもなにもなく、太い柱の向こうには、洞穴の中を……住民を一望出来るバルコニーが設置されていて、私はそのバルコニーからぼんやりと外を眺めながらジュノに聞いた。
「あの……何故私なのでしょうか?」
ジュノの国……魔族の国は、強さが全てだと聞いている。だから本来、出会った時、あのモンスターに食べられるだけだった弱い私に、ジュノが興味を示すことはない筈だった。
(私が聖女だから……?)
私が聖女の力を発現してから、お姉様の婚約者も私に強い関心を持ちだした。
だから、ジュノも聖女の力が欲しいと考えるのが自然だ。
であれば、やはり私でなくても良い筈で。
そもそも、聖女の力は遺伝ではないとされている。
今まで聖女の力を自分の家門のものにしようと、平民出身であっても王族や貴族に召し上げられた過去があるが、結果聖女が産まれたことはないという。
(ジュノは癒しの力が欲しいのかしら?……この国の為に……)
しかし、ジュノからの返事はやけにあっさりとした、私には想像出来ないものだった。
「ん?チェルシーが強くて綺麗だと思ったから」
「……え?」
私が強い……とは、ジュノが言っている意味がわからず、首を傾げる。
「初めて会った時。チェルシーだけが、モンスターから逃げずに他人の為だけに真っ直ぐ戦ってたろ?最初、助けるつもりなんてなかったんだけど。その意思の強さって言うか、瞳の奥の底力っつーの?それに目が離せない位に惹かれてさ。気付いたら、助けてた」
あはは、とジュノは笑って言う。
言っとくけど、この国で俺が惹かれた奴なんていないからな、とおどけて言う。
「その癖、他の奴等が死んだ途端、自分の為に足掻くことはしないでさ。俺からみたら、むしろまるで死に急いでるみたいに見えた。チェルシーはさぁ、自分のことは後回しで、他人のことを何よりも最優先にするだろ?他人なんかどうでもいいからさ、俺がチェルシーの最優先になりたいなと思って」
ジュノは、見上げる私の頬にそっと両手を添える。
「チェルシーの目に写るのは、俺だけで良い。俺だけを想って、俺だけ見て、俺だけに笑い掛けて、俺の傍で俺と幸せになって欲しいって思ったんだ。多分これが独占欲って言うんだろうな」
聖女である自分に、そんなことを言う人は初めてだった。
4
あなたにおすすめの小説
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
感情の無い聖女様は、公爵への生贄にされてしまいました
九条 雛
恋愛
「――私など、ただの〝祈り人形〟でございます。人形に感情はありませぬ……」
悪逆非道の公爵の元へと生贄として捧げられてしまった聖女は、格子の付いた窓を見上げてそう呟く。
公爵は嗜虐に満ちた笑みを浮かべ言い放つ。
「これからは、三食きちんと食べてもらおう。こうして俺のモノとなったからには、今までのような生活を送れるとは思わぬことだな」
――これは、不幸な境遇で心を閉ざしてしまった少女と、その笑顔を取り戻そうとする男の物語。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
完【恋愛】婚約破棄をされた瞬間聖女として顕現した令嬢は竜の伴侶となりました。
梅花
恋愛
侯爵令嬢であるフェンリエッタはこの国の第2王子であるフェルディナンドの婚約者であった。
16歳の春、王立学院を卒業後に正式に結婚をして王室に入る事となっていたが、それをぶち壊したのは誰でもないフェルディナンド彼の人だった。
卒業前の舞踏会で、惨事は起こった。
破り捨てられた婚約証書。
破られたことで切れてしまった絆。
それと同時に手の甲に浮かび上がった痣は、聖痕と呼ばれるもの。
痣が浮き出る直前に告白をしてきたのは隣国からの留学生であるベルナルド。
フェンリエッタの行方は…
王道ざまぁ予定です
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる