言いなり聖女、ただひとつの選択

イセヤ レキ

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民の為に、皆の為に、聖女なんだから尽くすのは当たり前……自己犠牲程、美しいものなんてありませんよ。
ずっと、そう言われて生きてきた。

涙が滲んで視界がぼやける。

とんでもないことを言う人なのに……とんでもなく、傍にいたい。
逃げだとしても、誰かに憎まれ続けてあの国にいるより、私を見て、私を欲してくれる人の傍にいたい。


「だから、チェルシー。聖女でもなく、第二王女でもなく、俺の妻になれよ」
ジュノは、そう言って、ゆっくりと顔を近付ける。
私が逃げずに、ジュノの手に自分の手を添えると、優しく笑った。

瞼を閉じた私の唇に、ジュノは自分の唇を押し当てた。




翌日、ジュノはやはり魔族の国の王子だったらしく、彼はバルコニーで、魔族の国の人達の前で私に『忠誠』を誓ってくれた。

彼がそれを私に誓い、私がそれを受け入れれば結婚成立とのことで、私はそのまま単なるチェルシーとして彼の妻になった。

強さが全ての魔族の国では殺傷事件なんて当たり前にあり、私は彼の傍で、いやでも日に日に喜怒哀楽をしっかりハッキリ表現出来るようになっていった。

ジュノはその度に「チェルシーの新しい顔がまた見れた!」と喜び、私は怒っていたとしてもそんな彼に脱力するしかない。

ジュノの妻でいることは楽しくもあったが、大変でもあった。



「……ジュノ、最近ジュノ以外の方を見掛けませんが……」
「ああ、チェルシーを見られるのが嫌だから、ちょっと他に行って貰った」
「はい?」
「俺の嫁可愛すぎだからさ。結構俺牽制してんのに変なの寄ってくんだよね」
「……はぁ……」


「ジュノ!!簡単に人を殺してはいけないと思いますっ!!」
怒りながら、私は歌う。
「こいつら、断りもなくチェルシーに触ったんだよ?殺すでしょ、普通」


「ジュノ、息子と娘は何処へ?」
「今、森に遊びに行ってる」
「……あの、魔物だらけの森ですか?」
「うん。チェルシーは俺とデートに行こう」
「……」


──やはり、異なる文化で育ったジュノと私は、相容れない関係である。



それでも、何度時を遡ったとしても、私はあの時、同じ選択を繰り返すのだろうと、愛しい家族に囲まれながら思うのだった。
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