試し行動の過ぎた恋人に別れを告げました

イセヤ レキ

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「千砂、いい?」
「うん……でも、久しぶりだから、ゆっくりしてくれる?」
「わかった」

ふたり、裸になって、ベッドで重なる。
舌を絡ませあって、会えなかった時間を埋めるように何度もキスをした。

「ふふ。本物が俺の腕の中にいる。写真も綺麗だったけど、実物はもっと綺麗だ。それに、良い香り」
「職業柄、香水とかはつけてないけど……」
「昔から変わらない、千砂の匂いだなって」
「そうなの?」

腕をくんくんと嗅いでみても、何も感じない。

「千砂、可愛いなあ」
「大我は……やっぱり、前にも増して、格好良くなったよね」

私がそう言うと、大我は目を見張った。

「千砂に格好いいって、初めて言われた」
「え?」

私は呆ける。
いや、大我は誰が見たって好みの差はあれど、格好いいと思われるタイプだろう。
けどそうか、私が大我から好きだと言われない、と気にしているのと同じく、大我も私から格好いいと言われない、って気にしていたのかもしれない。

私は、大我の外見だけが好きになったわけじゃないから、改めてそんなこと言う必要はないと思っていたけど。

「大我は昔からずっと、格好良いよ。誰よりも、格好良いと思ってた」
「……うわ、マジで。ちょっと顔にやける」

大我は自分の腕で、赤くなった顔を軽く隠す。

「えーと……言われ慣れてるよね?」
「どうでもいい人間に言われるのと、千砂に言われるんじゃ、心臓への響き方が違う」
「そうなんだ」

確かに、私も今の職場の人から「可愛い」と言われるのと、大我に言われるのとでは、喜びが雲泥の差だ。

「ふふ」
「なに?」
「大我、あの時は子供でごめんね」

大我の気持ちを受け止め流せるほど、出来た人間ではなかった。

「いや、いいよ。むしろ、あの時はあれで正解だったと思う。あのまま結婚してたら多分俺、今頃千砂から離婚を切り出されていた気がする」
「はは……」

ちょっと乾いた笑いになってしまった。
うん、確かにそうかも。
遠回りに見えて、決別を防げた唯一の道を、私たちは辿れたのかもしれない。

「じゃあ、そろそろイタダキマス。五年ぶりのご馳走だから、頑張って加減するわ」
「五年ぶり……?」
「俺、千砂と別れてから当然禁欲生活してたからさ」
「そうなんだ」

どうしよう、嬉しい。
週一以上でえっちなことをしていたから、大我が五年も我慢できるわけがないと思っていた。

「千砂以外とこういうこと、したくないし。抱きたいのも千砂だけだし」
「うん、私も」

私は大我に抱きつく。
大我はふっと微笑んで、私を抱き締め返してくれた。
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