見習い義肢装具士ルカの決闘(デュエル)

ノバト

文字の大きさ
44 / 68
2章 カタハサルの決闘

5.タイユの陰謀

しおりを挟む
「ルカさんを売っちゃうんですか!?」

「しっ! 声が大きい。」

 タイユは騎士団本部の会議室に、密かに秘書官のロゼを呼んだ。
 騎士団本部ならこの機密情報が外部にれることはないと思うが、それでも用心に越したことはない。

「すいません。驚き桃の木でして…。」

「この情報を知っているのは上層部だけだ。らしたことがわかれば、私もお前も厳罰げんばつを免れないんだぞ!」

 騎士団本部の広い会議室の中で、タイユが小声で叱った。

「すみません…」

 ロゼは背中を丸めて、しおれた花のようにしょんぼりした。

「でも、このことは早くナイヤ様にお伝えするべきでは?」

 すぐにしゃきっとして、ロゼは言った。
 タイユは口をへの字に曲げた。

「バカなことを言うな。そんなことをしたら怒って何をしでかすかわからない。
 いいか?
 お前を呼んで、危険を犯してまで情報を与えるのは、ナイヤ様が取り乱すことがないようにするためなのだぞ?」

 ロゼは小首をかしげた。

「すみません。ちょっと意味がわかりません。
 私、さっきまで、もしかしてタイユさんにプロポーズされるかと思ってドキドキしていたものでして…。」

「誰がお前などにプロポーズするか!」

「えーー。騎士団の殿方の皆様にも、私、結構人気なんですよ?
 タイユさんの目が曇っているんじゃないですか?
 あ、そっか、ナイヤさん一色なんだ!」

「キサマ、殺してやろうか!」

「そんなことより早く話し進めないと! 大事な話しなんですよね?」

 タイユの首筋は真っ赤になっていた。この女は飄々ひょうひょうとしていてつかみどころがない。どこかルカに似ているところもあるので嫌いだ。この女もルカに影響されたのだろうか?

「私の計画はこうだ。
 ルカはローヌ戦での怪我がひどく、静養せいようのため故郷の島に戻った。」

「うーん。なんか、ルカさんのキャラじゃないなー。
 それに故郷の島ってセロスですよね。すぐ帰って来れそうだし、ナイヤさんだと行ってみる!とか言い出しかねませんよ?」

 タイユはうなった。

「では、決闘デュエル隊にいるのが嫌で王様に頼んで自由にさせてもらい旅に出た。とかどうだ?」

「すぐに嘘だとバレそうです。王様は、簡単にはルカさんを手放さないでしょうし、ルカさんも旅立つ前に一度は王都に戻ってこられると思います。そもそも旅っていう設定が、ルカさんっぽくないです。」

「じゃあ、ローヌで静かに暮らしたいので、ほっといてくれという感じで王様に無礼なことを言って追放された。は?」

「もう、めちゃくちゃですね。ルカさんはそこまで無法者じゃないですよ。相手によって、節度を守ることができます。
 それに、そもそもローヌはガラ家の領土になったのですから、ナイヤさんは駆けつけることができます。そんな場所でルカさんが行方不明になったなら大騒ぎですよ? 大捜索が始まりそうです。」

「じゃあ、どうしろというのだ! お前は、秘書官だろうが!否定ばかりするな!」

 タイユが顔を赤くしながら怒ると、ロゼは不思議そうな顔をしてタイユを見つめた。

「タイユさんって顔はイケてるし家柄もいいのに、短気で頭もよくないのですね。」

「な、なんだと?!」

「もったいないですね。そんなんじゃ、私のハートを射止めることはできませんよ。」

「キサマ…!」

 タイユの様子に構うことなく、ロゼは腕を組んで考え始めた。

「うーん。そうですね…。
 ローヌを尋ねてきた昔の顔なじみにあって、怪我で身体が不自由になった人がいるので助けてほしいと言われて、行方知れずになってしまった。
 とかどうでしょう?」

「……王様はどうするのだ?」

「王様は怒ったけど、ルカさんに逃げられたとは言えないので、自分から手放したことにして、密かに行方を追っている最中…。とかかな?」

「……なるほど、手放したという事実をあえて隠さないのか。」

 タイユはうなるしかなかった。偉そうに言うだけのことはあると思った。
 やはり、ロゼに相談して正解だったと思った。

 実は、ロゼに話す前に、タイユは同僚のミラスに相談していた。
 ところが、ミラスはこともあろうかタイユの提案をこばんだのである。仲間だから、この話しは黙っておくが、もうルカをおとしめるような策には関わりたくないというのだ。
 ルカを貶めようなどと思ってない。これはナイヤ様のためだ!と説得しても、ミラスは耳を貸さなかった。。

「でも、そっかー、ルカさんいなくなっちゃんですね。寂しいですね。」

「……」

 タイユは胸の奥がむかむかした。今回の件に関して、自分は何も悪いことはしていない。この話も、ナイヤを落ち着かせ、守るためだ。
 それなのにルカがいなくなると思うと、自分までもが不安も感じるのだ。
 あの者は、幾度いくどとなくナイヤのために役立ってきた。疫病神やくびょうがみに見えるが、実際は幸運のかたまりのような存在だった。偶然のも奇跡と言えなくもない。だが、今回のことで、ナイヤの運命が変わることになるなら、自分は大きな間違いを犯しているのかもしれない。
 
「それで?」

 ふと顔を上げると、ロゼがにっこり微笑んでいた。

「なんだ?」

「これって、タイユさんの陰謀いんぼうですよね?」

「な、なにを! そんないかがわしいものではっ。」

「大丈夫ですよ。私こう見えても、陰謀いんぼうは嫌いじゃないんです。
 ただ、私に協力をお求めなら、必要なものがありますよね?」

「必要なもの?」

「あら、いやですわ。見返りですよ。見返り。」

「……」

 ◇
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...