見習い義肢装具士ルカの決闘(デュエル)

ノバト

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2章 カタハサルの決闘

7.奴隷の館

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 ダオスタに案内されてオレは立派な洋館の屋敷に入った。屋敷は城の廃材はいざいを再利用して建てたそうだ。ダオスタが楽しげに話していた。
 
「ささ、こちらが私の奴隷どれいの館ですよ。」

 正面の玄関を開けるとそこは食堂になっていた。右手のほうにオープンキッチンがあり、料理人が食事を作っていた。左手には、小さなステージとピアノが置いてあった。ステージがあるということは、ショーでも行うのだろうか? 奥のほうには、ダーツやビリヤード台などの遊戯ゆうぎコーナーまであった。
 食堂のスペースでは 館の住人らしきものたちが、食事をしたり武器をみがいていたりと、おのおのくつろいでいた。

「ダオスタさんおかえり」
「新入りかい?」
うでどうしたの?大丈夫?」

 ダオスタとオレに気づいた何人かは話しかけてきた。
 
「ただいまです。こちらはルカさんです。あらためて夕方の礼会れいかいで紹介します。」

「よろしくー」

 このものたちも奴隷どれいなのだろうか?

「さあ、ルカさんのお部屋は2階になります。」

 2階は一部吹抜ふきぬけになっていて、2階から1階の食堂を見下ろすことができた。吹抜ふきぬけの周りのスペースには、4人がけのテーブルが6台あり、茶を楽しむものや読書やカードをしている貴族風の男女らがいた。
 
 ダオスタから案内された部屋は、広くはないがテーブルも置かれてある立派な個室だった。当然、シュブドー王都の第一兵団用宿舎には劣るが、これが宿屋ならばかなりの宿泊料を請求されるだろう。出品前の奴隷どれいという立場を考えると十分すぎる部屋に思えた。

「ここでの生活は基本的に自由ですが、朝と夕方の礼会れいかいには必ず出席してください。毎日、簡単な事務連絡があります。
 食事は一階のキッチンでいつでも自由に召し上がりください。キッチンには常に人がいるので、何かたずねたいことがあれば彼らにご質問ください。」

 ダオスタは説明を終えると部屋と出ていった。施錠なども一切なかった。

 オレはなんだか拍子抜ひょうしぬけな気持ちになった。奴隷どれいや商品という言葉のイメージから、家畜かちくのようにせまい場所に入れられたり、酷い飯でも食わされるのかと思っていたのだが、随分ずいぶん待遇たいぐうがよい。
 屋敷の住人たちも、おそらくオレと同じような奴隷どれいの立場なのだと思えるが、その表情を見ても、悲壮感ひそうかんや苦悩は感じられなかった。なんだがリラックスしているのだ。

 屋敷の窓から外を眺めると、サロスの港をにひしめく大小様々な船が見えた。それぞれの船が自分の国の色を主張するように、色とりどりにめられている。船の品評会でも行われているようにはなやかに見える。
 視線を外洋に広げると海の青で一色だった。にぎやかな色の港とのコントラストでより青がより美しく見えた。この辺りはサロス島以外の島はないので、遠くを見ても海と空以外には何も見えない。

 島の内陸のほうを見ると、ちた家々が見えた。
 城の近くや港の近くには、様々な形のテントがところせましと設置されていた。様々なはたも立っている。外国のバイヤーが滞在するためのテントのようだ。

  ◇
 
 ガラガラと金属のバケツを転がすような音でオレは目を覚ました。少し横になったら、いつのまにか眠ってしまったらしい。
 奇妙な音は、夕方の礼会れいかいの合図を示すベルの音だったようだ。

 一階に降りてみると、人間が50人以上は集まっていた。
 中には、子ども2、3人だがじっていた。男女比はやや男が多め。意外なことに高齢のものもいた。
 奴隷どれいとして役に立つのだろうか?

「ああ、ルカさんこちらへ来てください。」

 ダオスタに呼ばれて、オレはピアノの側からステージに上がった。

「皆さん、新しいお仲間をご紹介します。
 シュブドーの元決闘デュエル戦士ルカさんです。」

 オレがお辞儀じぎすると、拍手はくしゅで迎えられた。
 「知ってる知ってる」や「ローヌにいたらしい」「怪我して買い手つくかな?」などヒソヒソ声も聞こえた。

「ルカさんは、特クラスで紹介しますので、同じ特クラスの方は仲良くしてください。」

 ダオスタが「特クラス」というと、周囲からどよめきが起きた。
 特クラスとは、なんだろう?

「さて、明日からついにオークションが始まります。一日目は、通常クラスの皆さんからになります。
 浴室や化粧室などが混雑すると思いますので、すみませんが他のクラスの方はご利用を控えてください。
 今夜も『自分をより良く見せる講座』を開きますので、最後の追い込みに向けて励んでください。」

 な、なんだ、この就職説明会みたいな雰囲気は…。

「私からは以上です。それでは、各サークルの先生方におゆずりします。」

 サークル?

 ダオスタがステージから降りると、上半身裸で筋肉隆々りゅうりゅうの男が白い歯を見せながら代って壇上だんじょうした。

「筋肉サークルのホロセウスです。
 筋肉に興味がある方は、私は二階の201号室、砂浜の訓練場近くにいますのでいつでもご相談ください。
 毎朝早朝、砂浜で筋肉トレーニングも行っております。明日からオークション初日ですが、ぎりぎりまで筋肉をきたえて美しい身体を維持いじしましょう。女性向けのメニューもあります。お気軽にご相談ください。
 あ、ルカさんもあと2日しかありませんが、脚の筋肉だけてもいかがですか?」

 ステージの側に立っていたオレに筋肉男はウインクした。どう答えればいいのかわからず、オレは「お、おう」と答えた。

 ホロセウスが降りると、交代で気難きむずかしそうな顔をした男がステージに上がっていった。

「あー、リザストだ。歴史哲学を教えている。今は、南方諸国の歴史講座中だ。
 魔術師の方は、よかったらどうぞ。講義は別館の講義室3で行っている。
 私はだいたい別館にいるので、関心のあるかたは質問してほしい。以上だ。」

 サークルというものは、他にも美容や、決闘デュエル訓練、料理教室、武器マニア、や家事手伝いなどもあった。
 どれも、奴隷どれいとしての自分の商品価値を高める訓練サークルだった。
 参加は自由で、無料で講習を受けることができた。
 集まった奴隷どれいたちは、サークルの案内を笑顔か真剣な表情で聞いていた。
 
 オレは、唖然あぜんとされられることばかりだった。
 ダオスタのコール商人というもののイメージも変わった。こいつ、結構いいやつなんじゃないか?

「フフフ。びっくりしましたか?」

 オレの表情に気づいたのか、ダオスタが笑った。

「私は、安く買い、高く売ります。そのための投資ならしみません。
 奴隷どれいの皆さんも必死に学びます。誰に買ってもらうかによって、自分の人生が大きく変わりますからね。
 できるだけ自分をよく見せようと努力されるのです。
 おかげで、私はもうけさせてもらっております。フフフフフ。」

「オレも何かサークルにはいったのほうがいいのか?」

「どうぞご自由に。」

 ダオスタは、そういうと食堂の中を歩いていった。サークル案内は終わり、食堂には人が集まっていた。その者たちと談笑しはじめた。

 離れていくダオスタとは逆に、オレのほうに近づいてくる者たちがいた。

「ルカさん、ようこそ奴隷どれいの館へ。サロスへ。」

 イケメンの若い男だった。微笑みながら、手を差し出して握手を求めた。

「よろしく。
 君と同じ特クラスのレトワールです。」

 握手に応じると、イケメンはそう名乗った。
 レトワールの後ろには、5人の男女がいた。

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