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第六章 親分はボディガード
儀式(セレモニー)アゲイン?
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相棒は隆々と勃起したままだ。手で下向きにしようにも、いざ手を放せば勢いよく反り返って腹をべちんと叩く。我ながらしょうがないやつだ。もうどうにでもなれ。健悟は引き戸をガラっと開けた。
「お、親分……」健悟を見るや水上が数歩後退いた。「じゅ、準備できてるっす……」
水上の両目は、あからさまに健悟の相棒に注がれている。まあ無理もない。健悟は不意に水上の儀式を思い出した。あのときもこの新人隊員は目を丸くして、しかし遠慮なしにしげしげと相棒に見惚れていたのだった。
「サンキュー」健悟は何喰わぬ顔で浴室内に這入った。「なんだ、ジロジロ見やがって。男なら同じモノぶら下げてるだろ」準備された腰掛けの前に立つ。「掛け湯だ」
「は、はい!」水上は急いでしゃがみ込み、カランから湯を洗面器に溜めた。手でかき混ぜて温度のチェックをするのも忘れない。「あの……お湯、掛けましょうか?」
「おう、頼む」健悟は両脚を肩幅に展き、分厚い胸の前で両腕を組んだ。
「親分……ま、前を失礼します!」
水上はこう云って健悟の前に跪いた。恭しく捧げ持った洗面器の縁を健悟の臍の上にそっと触れさせ、注意深く湯を注ぎかける。相変わらず両目は健悟の相棒に釘付けになっているが、健悟は見て見ぬ振りをした。
「おい、水上」
「は、はい!」水上は健悟を仰ぎ見ようとして手を滑らせてしまった。洗面器がカランコロンと音を立てて床に転がった。「あっ!」
健悟は内心ハラハラしながらも悠然と云った。「おまえ、去年もそうだったな」
「儀式のことっすよ……ね?」
水上は健悟を見上げたままだ。もちろん上司と部下の関係上、言葉を交わすときには目を合わせないといけない。自分の視界には雄々しく聳える健悟の相棒が這入っているとしてもだ。
健悟は、今目の前にいるのがもし柳川だったら、と想像した。彼ならトロンとした目つきになって、片手で洗面器の湯を掛けながら、もう片方の手で相棒をさすっていただろう。すると相棒が暴れ馬のようにブルルと嘶いた。
水上は、
「うわっ!」
と声をあげて尻餅をついた。展いた股座の中央で、まだ若い相棒が震えている。
「水上、湯を頼む」健悟はしばし、やれやれと云いたげに顔をしかめ、それから表情をゆるめて落ち着き払った口調で云った。「ケツは自分でやる。おまえは隣りに坐れ」
「は、はい!」
健悟は洗面器の湯をささっと尻の谷間に流し込んで腰掛けにどっかと坐った。もとから図体がデカいので両脚を大きく展げるしかなく、いわゆるご開帳の状態だが、気にするようすもない。シャワーヘッドに手を伸ばして栓を捻る。頭を掻きながら浴びると湯気が立ち昇り、目の前の鏡面が白く曇ってゆく。
左隣りでは水上が休めの姿勢のまま佇んでいる。健悟の一挙一動を見ているのだった。曇った健悟の鏡面を気にしている体だが本心はバレバレだ。
ちょっくら揶揄ってやるか。健悟はシャワーヘッドを水上の相棒に向けて、
「おっと、手が滑った」
と湯を浴びせかけた。「ここが燃えてるみたいだぞ。女のこと考えてんのか?」
水上は、あ、いや、その、と云うばかりで突っ立っている。その代わりに彼の相棒が反応を示しはじめた。
「おう、あとは自分でやれ」健悟はシャワーヘッドをフックに掛け、湯を止めるとシャンプーを直接頭に垂らしかけた。そのまま頭を荒々しく掻きむしる。
そこで我にかえったのか、ようやく水上が隣りに腰を下ろした。ふぅ、とため息をついて、
「なんか、思い出したっす」洗面器に湯を溜めながら、ぽつりと云う。「儀式のときのこと」
「生意気だったからな、入隊したてのころのおめえは」健悟はうつむいてシャンプーで髪を洗いながら云った。「だから、つまらんプライドをへし折ってやる必要があった」
しばらく沈黙が流れた。
髪を洗い了えて、健悟は頭からシャワーを浴びた。水上の儀式——健悟の脳裏に去年の出来事が泛んだ。水上を壁に両手をついて立たせた。両脚は肩幅に展かせた。鏡には水上の相棒が映っている。健悟は、その相棒に集中放水してやったのだった。あのとき水上は、シャワーの水圧だけで鏡面を白濁液で汚した。そして、水上はその鏡の前に今夜も腰を下ろしている。
「親分のおかげっす」洗面器のお湯を片手でかき混ぜながら水上がくすりと笑う。「彼女もできたし」
健悟は思わず吹きだした。儀式と彼女ができたことに何の関係があるのだろう。ひとしきり笑って、
「おめえが今いる部屋は——」
「——親分が新人のときに使ってたんすよね?」
「ああ、そうだ」
「だから女運が良いんすかね、俺」水上は小さく笑った。
「何だそりゃ?」健悟は水上の右肩を小突いた。
「親分が女運をお裾分けしてくれたってことで」水上は健悟に顔を向けて、ぱあっと笑った。「代々あの部屋を使ってた先輩たちも、親分の恩恵に預かってるんすよね」こんどは健悟の相棒と頭陀袋に目線を落とす。「さすが親分、あり余ってますもん」
褒められて健悟の相棒がブルルと嘶き、それと同時に頭陀袋がゆっさゆっさと揺れた。
水上はそれを見て両手を合わせ、ありがたやぁ、と拝んだ。
健悟は笑って軀を洗いはじめた。「その女との将来は考えているのか?」
「親分こそどうなんすか?」顔を上げて水上が間髪入れずに訊いた。「小雪さんのこと……」
「ああん?」
水上はもう一度健悟の股間に目線を移した。「ひょっとしてもう……」
「おめえ、何云ってんだ?」
「明日っから『姐さん』って呼ばないといけないのかなぁ」
「おめえは自分のことを考えろ」健悟は否定も肯定もせず、話題を変えた。「で、おまえの相棒はどうなった?」
「手では剥けるようになったっす。だけど早いんじゃないかって」水上は相棒の帽子をすっと脱いでみせた。
健悟は覗き込むようにしてその巨軀を屈めた。「出動のクセがついているのかもな。一分以内か……」
「そんな短くないっすよ! 五分です、五分!」
「鍛えるんだな」健悟はその毛深く太い腕をずんと伸ばし、水上の前のシャワーヘッドを手に取った。「去年やっただろ。こいつの水圧に耐えてみろ」
水上はゴクリと唾を飲み、そしてコクリと頷いた。やおら立上り、壁に両手をつく。それから両脚を肩幅に展き、尻を心持ち突きだすようにした。
「親分、お願いします!」
鏡のなかで水上の相棒が半分だけ起きあがっていた。帽子脱いだ頭がびくびくと震えている。
——やっちまったな、健悟。
——ったく……。冗談のつもりだったんだけどな。
——こいつを柳川だと思ったらどうだ? 背格好も歳も変わらないし、何しろおまえに懐いてる。
相棒との問答を了えて、健悟はシャワーのレバーを上げた。湯が勢いよく吹きあがる。水上の後ろに立ち、シャワーヘッドを持った手を水上の股間に持ってゆく。
水上は目を閉じた。「親分、いつでもいいっす」
「おう」
健悟は短くこう云うと、空いたほうの手で後ろから水上の口を塞いだ。「声出すんじゃねえぞ。先ずは五分耐えてみろ。女のことだけを考えるんだ。わかったか?」
「お、親分……」健悟を見るや水上が数歩後退いた。「じゅ、準備できてるっす……」
水上の両目は、あからさまに健悟の相棒に注がれている。まあ無理もない。健悟は不意に水上の儀式を思い出した。あのときもこの新人隊員は目を丸くして、しかし遠慮なしにしげしげと相棒に見惚れていたのだった。
「サンキュー」健悟は何喰わぬ顔で浴室内に這入った。「なんだ、ジロジロ見やがって。男なら同じモノぶら下げてるだろ」準備された腰掛けの前に立つ。「掛け湯だ」
「は、はい!」水上は急いでしゃがみ込み、カランから湯を洗面器に溜めた。手でかき混ぜて温度のチェックをするのも忘れない。「あの……お湯、掛けましょうか?」
「おう、頼む」健悟は両脚を肩幅に展き、分厚い胸の前で両腕を組んだ。
「親分……ま、前を失礼します!」
水上はこう云って健悟の前に跪いた。恭しく捧げ持った洗面器の縁を健悟の臍の上にそっと触れさせ、注意深く湯を注ぎかける。相変わらず両目は健悟の相棒に釘付けになっているが、健悟は見て見ぬ振りをした。
「おい、水上」
「は、はい!」水上は健悟を仰ぎ見ようとして手を滑らせてしまった。洗面器がカランコロンと音を立てて床に転がった。「あっ!」
健悟は内心ハラハラしながらも悠然と云った。「おまえ、去年もそうだったな」
「儀式のことっすよ……ね?」
水上は健悟を見上げたままだ。もちろん上司と部下の関係上、言葉を交わすときには目を合わせないといけない。自分の視界には雄々しく聳える健悟の相棒が這入っているとしてもだ。
健悟は、今目の前にいるのがもし柳川だったら、と想像した。彼ならトロンとした目つきになって、片手で洗面器の湯を掛けながら、もう片方の手で相棒をさすっていただろう。すると相棒が暴れ馬のようにブルルと嘶いた。
水上は、
「うわっ!」
と声をあげて尻餅をついた。展いた股座の中央で、まだ若い相棒が震えている。
「水上、湯を頼む」健悟はしばし、やれやれと云いたげに顔をしかめ、それから表情をゆるめて落ち着き払った口調で云った。「ケツは自分でやる。おまえは隣りに坐れ」
「は、はい!」
健悟は洗面器の湯をささっと尻の谷間に流し込んで腰掛けにどっかと坐った。もとから図体がデカいので両脚を大きく展げるしかなく、いわゆるご開帳の状態だが、気にするようすもない。シャワーヘッドに手を伸ばして栓を捻る。頭を掻きながら浴びると湯気が立ち昇り、目の前の鏡面が白く曇ってゆく。
左隣りでは水上が休めの姿勢のまま佇んでいる。健悟の一挙一動を見ているのだった。曇った健悟の鏡面を気にしている体だが本心はバレバレだ。
ちょっくら揶揄ってやるか。健悟はシャワーヘッドを水上の相棒に向けて、
「おっと、手が滑った」
と湯を浴びせかけた。「ここが燃えてるみたいだぞ。女のこと考えてんのか?」
水上は、あ、いや、その、と云うばかりで突っ立っている。その代わりに彼の相棒が反応を示しはじめた。
「おう、あとは自分でやれ」健悟はシャワーヘッドをフックに掛け、湯を止めるとシャンプーを直接頭に垂らしかけた。そのまま頭を荒々しく掻きむしる。
そこで我にかえったのか、ようやく水上が隣りに腰を下ろした。ふぅ、とため息をついて、
「なんか、思い出したっす」洗面器に湯を溜めながら、ぽつりと云う。「儀式のときのこと」
「生意気だったからな、入隊したてのころのおめえは」健悟はうつむいてシャンプーで髪を洗いながら云った。「だから、つまらんプライドをへし折ってやる必要があった」
しばらく沈黙が流れた。
髪を洗い了えて、健悟は頭からシャワーを浴びた。水上の儀式——健悟の脳裏に去年の出来事が泛んだ。水上を壁に両手をついて立たせた。両脚は肩幅に展かせた。鏡には水上の相棒が映っている。健悟は、その相棒に集中放水してやったのだった。あのとき水上は、シャワーの水圧だけで鏡面を白濁液で汚した。そして、水上はその鏡の前に今夜も腰を下ろしている。
「親分のおかげっす」洗面器のお湯を片手でかき混ぜながら水上がくすりと笑う。「彼女もできたし」
健悟は思わず吹きだした。儀式と彼女ができたことに何の関係があるのだろう。ひとしきり笑って、
「おめえが今いる部屋は——」
「——親分が新人のときに使ってたんすよね?」
「ああ、そうだ」
「だから女運が良いんすかね、俺」水上は小さく笑った。
「何だそりゃ?」健悟は水上の右肩を小突いた。
「親分が女運をお裾分けしてくれたってことで」水上は健悟に顔を向けて、ぱあっと笑った。「代々あの部屋を使ってた先輩たちも、親分の恩恵に預かってるんすよね」こんどは健悟の相棒と頭陀袋に目線を落とす。「さすが親分、あり余ってますもん」
褒められて健悟の相棒がブルルと嘶き、それと同時に頭陀袋がゆっさゆっさと揺れた。
水上はそれを見て両手を合わせ、ありがたやぁ、と拝んだ。
健悟は笑って軀を洗いはじめた。「その女との将来は考えているのか?」
「親分こそどうなんすか?」顔を上げて水上が間髪入れずに訊いた。「小雪さんのこと……」
「ああん?」
水上はもう一度健悟の股間に目線を移した。「ひょっとしてもう……」
「おめえ、何云ってんだ?」
「明日っから『姐さん』って呼ばないといけないのかなぁ」
「おめえは自分のことを考えろ」健悟は否定も肯定もせず、話題を変えた。「で、おまえの相棒はどうなった?」
「手では剥けるようになったっす。だけど早いんじゃないかって」水上は相棒の帽子をすっと脱いでみせた。
健悟は覗き込むようにしてその巨軀を屈めた。「出動のクセがついているのかもな。一分以内か……」
「そんな短くないっすよ! 五分です、五分!」
「鍛えるんだな」健悟はその毛深く太い腕をずんと伸ばし、水上の前のシャワーヘッドを手に取った。「去年やっただろ。こいつの水圧に耐えてみろ」
水上はゴクリと唾を飲み、そしてコクリと頷いた。やおら立上り、壁に両手をつく。それから両脚を肩幅に展き、尻を心持ち突きだすようにした。
「親分、お願いします!」
鏡のなかで水上の相棒が半分だけ起きあがっていた。帽子脱いだ頭がびくびくと震えている。
——やっちまったな、健悟。
——ったく……。冗談のつもりだったんだけどな。
——こいつを柳川だと思ったらどうだ? 背格好も歳も変わらないし、何しろおまえに懐いてる。
相棒との問答を了えて、健悟はシャワーのレバーを上げた。湯が勢いよく吹きあがる。水上の後ろに立ち、シャワーヘッドを持った手を水上の股間に持ってゆく。
水上は目を閉じた。「親分、いつでもいいっす」
「おう」
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