[R-18] 火消しの火遊び:おっさん消防士はイケメン俳優に火をつける

山葉らわん

文字の大きさ
77 / 92
第六章 親分はボディガード

羽田に着きました!

しおりを挟む
 小柳組の親分は、健悟を人通りのない物陰へしょっぴいて行くと、壁に両手をつかせた。本格的な取調べの始まりだ。健悟はゴクリと唾を飲みこんだ。
「おう、小川の——」健悟の背後で組長がドスをきかせた。「おめえさんも知ってのとおり、ここ最近、不審火が続いているじゃねえか」
「は、はい! そうであります!」
 後ろを見ずに健悟は答えた。思えば柳川を消防署で預かることになってから、小火騒ぎが数件、立て続けに起こっている。何か関係があるのだろうか。

 ——おい、相棒。ひょっとしてあの丙午の仕業じゃねえだろうな。
 ——だとしたら一大事だぞ。あれでもあのババアは消防署の人間だぜ?
 ——考えたくもねえが……。

 小柳署長が背後から近づいてくる気配がした。
「小川の、心当たりはねえか?」
 今の段階で答えることはできない。夫人が不審火の容疑者となれば、消防署の恥晒しもいいところだ。
「いや、あの、その……」しどろもどろになりながらも頭を巡らせる。何か答えなくてはならない。「……それで、わたくしめも夜のパトロールをしているところでありまして。ええ、非番の日ですが、自主的にと云いますか……」
「ほう、いい心がけだ」
 と組長は満足げにこう云うと、健悟のジーンズの腰に両手を掛けた。「俺はおめえさんが火をつけて廻ってるんじゃねえかと疑ってるがな。職場でもコソコソ隠れて若い女に火ぃつけていたじゃねえか。ああん?」
 小雪のことだ。額に冷や汗が滲む。しかも小柳組長は、よりによって見合い話を持ちかけようとしている。ならばこの場で誤解を解くのが賢明だ。
「め、滅相もな——うわっ!」
 ジーンズが足首まで一気に引きおろされた。
「おう、凝っとしてろ。職質だ。おっと、俺の職質は任意じゃねえぞ」
 と吼えるが早いか、組長は荒々しい手つきで健悟の下帯をすっかり解いてしまった。「返して欲しかったら素直に答えるんだな」
「は、はい! ところで……」
「何だ? 云ってみろ」
「これって、こ、公然わいせつでは……」
「ああん? 俺を誰だと思ってんだ、てめえ。この島では俺が法律だ。この俺が職質と云ったら職質なんだよ」
 股のあいだから無骨な手が廻ってきて、健悟の頭陀袋がぐいと引っ張られた。
「ひぃぃぃっ!」
「燃料タンクが満タンみてえだな。まあ、当然だろうよ。立派な火炎放射器をぶら下げてるもんな、おめえさんは」
 男の急所は、同じ男が一番識っている。その急所を握られてしまっては、どんな男でも相手に逆らうことはできない。
 くわばら、くわばら……。
 小柳組長が頭陀袋を調べているあいだ、健悟は天を仰いでこう唱えた。これが済めば、つぎは相棒の取調べが待っている。おずおずと夜空から目線を下げていくと……。
 相棒が震えながら健悟に語りかけた。

 ——なあ、健悟。これ、ひょっとしてスミ婆ぁの云ってた……。
 ——趣味の悪い洋館ってこのことか。
 ——そういや、この辺りは早鐘交差点の近くだったな。

 周囲が暗いせいで、その全貌は杳として知れないが、薄ぼんやりとしたシルエットだけでも、この洋館が周囲の景観を損ねるには十分すぎることがわかる。
『いっそ灰になってしまわないかねえ』
 突然、スミ婆ぁの愚痴が頭のなかで再生された。婆ぁさん、あんたの云うとおりだ。江戸の火消しなら、むしろ火の手が周囲に広がらないよう叩き壊して、燃え尽きるのを待つだろう。
「このへんにしておいてやる」
 と小柳の親分が云い、頭陀袋が解放された。署長直々の有り難いお取調べが終わったのだった。
「おう、小川の」
「は、はいであります!」
「どうやら小火騒ぎの下手人は、おめえさんじゃねえようだな」
「そ、そのとおりであります! あっしは善良な火消しでありまして、一年三百六十五日、今年は男四十二の大厄ではありますが、身の危険を顧みず、地域住民の安全のため日々——ひぎぃぃぃ!」
 左右まとめて頭陀袋がむんずと掴まれ、ぐぐっと引っ張られた。
「調子に乗んじゃねぞ、小川の。てめえの急所は俺の手のなかにあるってこと忘れんな」
「へ、へえ」
「心当たりがあるなら吐いちまいな」
 頭陀袋がさらに引っ張られる。
「今現在、調査中でありまして……まだ特定していないのですが——」
「——ですが?」
「どうやら消防士を追いまわすストーカーがいるようでして」
「八百屋お七……」
「そうであります。ご依頼のありました報告書にも書いてありますとおり——」
「——するってえと、おめえんとこのが一枚噛んでいるってわけか」
 健悟は、はっと気がついた。どうやら口を辷らせてしまったようだ。萬屋と放火魔が結びついてしまった。
「ま、まだ同一人物であるかは……。は今、沖縄におりまして」
「夜のニュースでやってたな。国際通りで高齢の観光客が熱中症で倒れたとか何とか。なるほど。それで今夜は小火騒ぎがねえってことか」
 そのとき、健悟の脚許でスマホの着信音が鳴った。
「おう、小川の。動くんじゃねぞ。俺が代わりに出てやる」小柳の親分が下されたジーンズの後ろポケットからスマホを取りだした。「柳川健人か……。出ろよ、両手は壁についたままだ」
 スマホが左耳に押し当てられた。と同時に頭陀袋がゴツい手で揉みくちゃにされる。健悟は呻き声を上げそうになりながら、通話に出た。
「親分! 今、羽田に着きました!」
「おう、柳川……。くふぅ……うっ……」
 ……健悟は悩まし気な声をスマホの向うに送りこんだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

処理中です...