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第七章 海嘯
4 大好きなデザート
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出された食事は、すべてイェロードが毒見をした。
家政婦長が毒見係の奴隷に問題が起こらなかったのを確認して、
「エレイン、お食事を運ぶ準備を」
と云った。
エレインたちは、手分けして三段のカートワゴンに料理を並べ、上段のメインディッシュに釣り鐘型のクローシェを被せた。
「エシフ、ノモク殿下のお食事はこっちよ。間違いのないようにお部屋までお持ちしなさい」家政婦長は、カートワゴンの全体を大きな白い布で覆って目印にした。「ノモク殿下のお食事にはデザートがあります。ギーフ様にはデザートはありません。絶対に間違えないように。わかりましたね?」
「かしこまりました」シュードは、奴隷エシフの口調でこう応えて、恭しく頭を下げた。
——デザートだって? 毒見には出てこなかったけど……。
イェロードは、ふと気になった。毒見した料理のなかでフーシェの得意料理だったのは、あの肉団子のスープだけだった。もしフーシェがオシヤクに来ているのなら、デザートを見れば、すぐにわかる。
——やっぱりデザートの毒見なんかさせてくれないよな……。奴隷には贅沢だし。
イェロードはフーシェが作ってくれたデザートの数々を思いだした。木の実が練りこまれた香ばしい焼き菓子、米を使ったつるつるの蒸し団子、濃厚な馬乳にカットした果物を混ぜて固めたもの——上の兄や姉たちは見向きもしない素朴なデザートだったが、ノモクは、今日は何が出てくるのだろう、と楽しみにしていた。
家政婦長が両手をパンッと鳴らした。食事を運ぶ準備が整ったのだった。イェロードは現実に引きもどされた。
シュードとイェロードがノモクの部屋へ、ソルブと少年奴隷がギーフの部屋へ食事を運ぶことになった。
毒見部屋を出ると、シュードが左右をさっと見回してイェロードの頭巾を巻きなおした。こうべを垂れていれば、顔は見えない。見えるのは呼吸のために表に出ている鼻先くらいだ。声が洩れてもくぐもって聞こえるように口許もきっちり巻いてある。
人気のない長い廊下を四人は進んだ。
カートワゴンの前後をイェロードとシュードが顔を向かいあわせにして挟んでいる。イェロードは進行方向に背を向けてカートワゴンを引いていた。ときどき後ろをふり向かなければならなかったが、頭巾を被っているせいであまりよく見えなかった。
「イェロード、後ろに気をつけるんだよ」
後を追う少年奴隷が声を掛けた。彼は、イェロードと同じように進行方向に背を向けてカートワゴンを引いていた。
「イェロード、場所を代わってやろうか? カートワゴンを押しながら、シュードが訊いた。「おまえは、まだこの館の造りに慣れていない。俺はもう目を瞑ったまま何処にでも行けるがな」
「あ、いや……でも……」カートワゴンを注意深く引きながら、イェロードは言葉を濁した。
するとシュードがニヤリと笑って、カートワゴンを押しだした。
イェロードは急に押されたのでよろけてしまった。両脚がもつれ、尻のなかに埋めこまれた鞭の柄が暴れる。
「あっ、あっ、あっ……」
イェロードは、呻き声を上げながら後退し、
「……あああっ——」
終に尻餅をついてしまった。しどけなく大開けになった両脚のはざまで、屹立したペニスがひくひくと震えている。
「後ろ向きなら隠せると思っていたのだろう」シュードが云いながらイェロードに近づいた。「新しく来た奴隷は『お道具』を勃たせておくものだ」ひくついているペニスを掴む。「四人のうち誰が気に入った?」
「あっ……んっ……」
シュードは、掴んだペニスを扱きたてた。「エレインか? あの女は、この館でいちばんの器量良しだ。だが肉慾も底なしだぞ。おまえに相手が務まるかな?」
ペニスを弄ばれながら、イェロードは想像した。東の男娼館でお披露目をし、その日のうちに性奴隷としてエレインに買われる自分を!
シュードが続けた。
「それとも洗濯部屋のエリスか? あれは、エレインの妹だ。男奴隷たちのなかでも人気がある。何故だかわかるか?」
「……し、しら……ない……」イェロードはイヤイヤをするように首を振った。身悶えているうちに両腕にちからが入らなくなり、そのまま後ろに倒れそうになる。「……あっ……」
「おっと、危ない……」シュードが空いたほうの腕でイェロードを背中から支えた。「おや、こんなところにデザートの果物が。イェロード、おまえが溢したのか?」
「え」
「胸苺がふたつ落ちている」
シュードの精悍な顔が、イェロードの胸許に降りてきた。頭巾の隙間から肉厚の舌がちらちらと見える。イェロードは両目を固く閉じた。
「スープが冷めちゃうよ」突然、少年奴隷の声がして、続けざまに、
「そろそろ地下道へ……」ソルブの声がした。
後ろにいたはずのソルブたちが、いつの間にかイェロードの痴態を見ていたのだった。
「ああ、そうだったな」シュードが、イェロードを抱きおこして立たせた。「この角を曲がったらエークが彷徨いているはずだ。あの修道士に見られてはマズい」
シュードはイェロードたちを残して、地下道の扉を開け、消えていった。
ソルブがシュードに代わってイェロードとカートワゴンを押し、ギーフの食事は少年奴隷がひとりで運ぶことになった。
三人は角を右に曲がり、しばらく進んだ。
するとイェロードの背後から、
「お毒見はすんだようね」
とエークの声がした。
三人は、その場ですぐに壁に背を向け、奴隷の待機坐りをした。
エークはイェロードの前で屈み、
「『お道具』の御機嫌は如何かしら?」
と云って、やわらかい指先でペニスを弄んだ。
——いやだ、触らないで……。
イェロードのペニスには、まだシュードの名残があった。それがエークの指づかいによって、別のものに作りかえられてゆく。イェロードは、歯を喰いしばって声を洩らさないように堪えた。
「ねえ、ソルブ。この奴隷のお披露目はいつなの?」
イェロードのペニスを揉みしだきながら、甘ったるい声でエークが訊いた。
「今朝、来たばかりですので……」
「奴隷のレッスンは、エシフにやらせなさい」エークは、イェロードのペニスから手を放して起きあがった。イェロードから離れ、こんどはソルブの前に立った。「ところで、あなたたちが運んでいるのが、あの淫乱坊やのお食事なのよね?」
ソルブが畏まった口調で、
「殿下のお食事でしたら、わたしたちが」
と応え、白い布に手を触れた。
「そう。じゃあ、こうしましょう」
エークは白い布を剥ぎとって、ギーフのカートワゴンに被せた。
——あっ、フーシェの……!
イェロードは、思わず声を上げそうになった。二段目の天板がちょうど目線の位置にあって、そこに大好きなお菓子が置かれていたのだった……。
家政婦長が毒見係の奴隷に問題が起こらなかったのを確認して、
「エレイン、お食事を運ぶ準備を」
と云った。
エレインたちは、手分けして三段のカートワゴンに料理を並べ、上段のメインディッシュに釣り鐘型のクローシェを被せた。
「エシフ、ノモク殿下のお食事はこっちよ。間違いのないようにお部屋までお持ちしなさい」家政婦長は、カートワゴンの全体を大きな白い布で覆って目印にした。「ノモク殿下のお食事にはデザートがあります。ギーフ様にはデザートはありません。絶対に間違えないように。わかりましたね?」
「かしこまりました」シュードは、奴隷エシフの口調でこう応えて、恭しく頭を下げた。
——デザートだって? 毒見には出てこなかったけど……。
イェロードは、ふと気になった。毒見した料理のなかでフーシェの得意料理だったのは、あの肉団子のスープだけだった。もしフーシェがオシヤクに来ているのなら、デザートを見れば、すぐにわかる。
——やっぱりデザートの毒見なんかさせてくれないよな……。奴隷には贅沢だし。
イェロードはフーシェが作ってくれたデザートの数々を思いだした。木の実が練りこまれた香ばしい焼き菓子、米を使ったつるつるの蒸し団子、濃厚な馬乳にカットした果物を混ぜて固めたもの——上の兄や姉たちは見向きもしない素朴なデザートだったが、ノモクは、今日は何が出てくるのだろう、と楽しみにしていた。
家政婦長が両手をパンッと鳴らした。食事を運ぶ準備が整ったのだった。イェロードは現実に引きもどされた。
シュードとイェロードがノモクの部屋へ、ソルブと少年奴隷がギーフの部屋へ食事を運ぶことになった。
毒見部屋を出ると、シュードが左右をさっと見回してイェロードの頭巾を巻きなおした。こうべを垂れていれば、顔は見えない。見えるのは呼吸のために表に出ている鼻先くらいだ。声が洩れてもくぐもって聞こえるように口許もきっちり巻いてある。
人気のない長い廊下を四人は進んだ。
カートワゴンの前後をイェロードとシュードが顔を向かいあわせにして挟んでいる。イェロードは進行方向に背を向けてカートワゴンを引いていた。ときどき後ろをふり向かなければならなかったが、頭巾を被っているせいであまりよく見えなかった。
「イェロード、後ろに気をつけるんだよ」
後を追う少年奴隷が声を掛けた。彼は、イェロードと同じように進行方向に背を向けてカートワゴンを引いていた。
「イェロード、場所を代わってやろうか? カートワゴンを押しながら、シュードが訊いた。「おまえは、まだこの館の造りに慣れていない。俺はもう目を瞑ったまま何処にでも行けるがな」
「あ、いや……でも……」カートワゴンを注意深く引きながら、イェロードは言葉を濁した。
するとシュードがニヤリと笑って、カートワゴンを押しだした。
イェロードは急に押されたのでよろけてしまった。両脚がもつれ、尻のなかに埋めこまれた鞭の柄が暴れる。
「あっ、あっ、あっ……」
イェロードは、呻き声を上げながら後退し、
「……あああっ——」
終に尻餅をついてしまった。しどけなく大開けになった両脚のはざまで、屹立したペニスがひくひくと震えている。
「後ろ向きなら隠せると思っていたのだろう」シュードが云いながらイェロードに近づいた。「新しく来た奴隷は『お道具』を勃たせておくものだ」ひくついているペニスを掴む。「四人のうち誰が気に入った?」
「あっ……んっ……」
シュードは、掴んだペニスを扱きたてた。「エレインか? あの女は、この館でいちばんの器量良しだ。だが肉慾も底なしだぞ。おまえに相手が務まるかな?」
ペニスを弄ばれながら、イェロードは想像した。東の男娼館でお披露目をし、その日のうちに性奴隷としてエレインに買われる自分を!
シュードが続けた。
「それとも洗濯部屋のエリスか? あれは、エレインの妹だ。男奴隷たちのなかでも人気がある。何故だかわかるか?」
「……し、しら……ない……」イェロードはイヤイヤをするように首を振った。身悶えているうちに両腕にちからが入らなくなり、そのまま後ろに倒れそうになる。「……あっ……」
「おっと、危ない……」シュードが空いたほうの腕でイェロードを背中から支えた。「おや、こんなところにデザートの果物が。イェロード、おまえが溢したのか?」
「え」
「胸苺がふたつ落ちている」
シュードの精悍な顔が、イェロードの胸許に降りてきた。頭巾の隙間から肉厚の舌がちらちらと見える。イェロードは両目を固く閉じた。
「スープが冷めちゃうよ」突然、少年奴隷の声がして、続けざまに、
「そろそろ地下道へ……」ソルブの声がした。
後ろにいたはずのソルブたちが、いつの間にかイェロードの痴態を見ていたのだった。
「ああ、そうだったな」シュードが、イェロードを抱きおこして立たせた。「この角を曲がったらエークが彷徨いているはずだ。あの修道士に見られてはマズい」
シュードはイェロードたちを残して、地下道の扉を開け、消えていった。
ソルブがシュードに代わってイェロードとカートワゴンを押し、ギーフの食事は少年奴隷がひとりで運ぶことになった。
三人は角を右に曲がり、しばらく進んだ。
するとイェロードの背後から、
「お毒見はすんだようね」
とエークの声がした。
三人は、その場ですぐに壁に背を向け、奴隷の待機坐りをした。
エークはイェロードの前で屈み、
「『お道具』の御機嫌は如何かしら?」
と云って、やわらかい指先でペニスを弄んだ。
——いやだ、触らないで……。
イェロードのペニスには、まだシュードの名残があった。それがエークの指づかいによって、別のものに作りかえられてゆく。イェロードは、歯を喰いしばって声を洩らさないように堪えた。
「ねえ、ソルブ。この奴隷のお披露目はいつなの?」
イェロードのペニスを揉みしだきながら、甘ったるい声でエークが訊いた。
「今朝、来たばかりですので……」
「奴隷のレッスンは、エシフにやらせなさい」エークは、イェロードのペニスから手を放して起きあがった。イェロードから離れ、こんどはソルブの前に立った。「ところで、あなたたちが運んでいるのが、あの淫乱坊やのお食事なのよね?」
ソルブが畏まった口調で、
「殿下のお食事でしたら、わたしたちが」
と応え、白い布に手を触れた。
「そう。じゃあ、こうしましょう」
エークは白い布を剥ぎとって、ギーフのカートワゴンに被せた。
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