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第19章 妖怪大戦争と全てを蝕む闇
第410話 『四代目』キリツナの力
しおりを挟むとりあえず、こんな夜更けにアポなしでしかも不法侵入かまして来やがった不審者を、照れ隠し&八つ当たり込みの拳で吹っ飛ばし、塀にめり込ませた。
……いや、僕もサクヤの『糸の結界』と同じように、この屋敷に何かしらこう……くせ者とかが侵入した時用の対策はしてたし、それに加えて『指輪』の念話機能でサクヤから報告飛んできたから、何が起こってるのかはわかったんだよ、すぐ。
そして、アイテムも使って気配消してその様子を陰から見ていた。戦闘になったり、そうでなくても何かサクヤが危なくなれば、その瞬間突撃できるようにして。
ついでに言えば、いたのは僕だけじゃない。シェリー、ナナ、ギーナちゃんの3人がそれぞれ隠れて待機中。後詰めに義姉さんとシェーン、掩護要員にミュウとミシェル兄さんを配置した。そして、警戒を兼ねた遊撃にアルバを飛ばし、エルクが司令塔として後方に構える。
これで何が起こっても大丈夫だろう、と思いながら見ていた。
……別の意味で大丈夫じゃなかったけど。
どうやら敵さん……このところ、タマモさん達の懸念事項になっていた『四代目酒吞童子』の手下らしいんだけども、その目的は、サクヤのスカウトだった。
なんか、大昔に『土蜘蛛』の一族は『鬼』と仲が良かったから、今回酒吞童子が天下取ろうとして塀を上げるから手伝えお前、みたいな感じで勧誘されてた。断ってたけど。
それはいいんだけども、その断る時に言っていたことが問題と言いますか……
いや、その……もうちょっとサクヤさん、そんなアレなこと……いや、純粋に好意から言ってくれてるのわかってるんだけどさ。
『悪いが、今の私はもう、そういうお題目で、今の穏やかな暮らしや、女としての幸せを手放す気にはなれん。私が将来、子を産むとしたら……その相手はもう、自分の意思で決めている』
『あいにく……もう二度とこの肢体を手放す気はない。もとよりこれらもまた、私が今最も愛しく思い、その子を授かりたいと熱望している人からの贈り物だ』
『腕がなくては、愛しい人を……ミナト殿を抱きしめることも、授かった子を抱き抱えてやることもできん。私はこの身の全てで……』
このへんで僕の羞恥心は限界に達しました。
褒められすぎてもう何か色々と限界でしたとです。
最初こそ警戒100%だったはずの僕らだけど……なんか話の最中、サクヤさんの惚気みたいな言葉が混じるようになってきてから……ナナとギーナちゃんはびっくりしてたし、シェリーは面白がって『またかわいい子の愛人が増えるわねー♪』なんて僕をからかってきて……。
義姉さんとエルクは『またか』『いつの間にここまで』って呆れてて……ネリドラは真面目に今後のサクヤの立ち位置なんかを考え始めるし……
結局、敵に気づかれないようにする念話での密談が完全にガールズトークになり始めたあたりで、その中心に立たされていることに我慢できなくなった僕が動いた。
で、現在に至る。
「え……!? み、ミナト殿!?」
「あーうん、ごめんサクヤ横から割り込んできて……」
「い、いえ、そのようなことはいいのですが……え、あの……も、もしかして……き、聞いてました、か?」
「………………」
「あ、あの……ど、どこから……?」
「……ごめん、割と最初から……みんなで」
「………………」
あ、やっぱり気付いてなかったんだ、サクヤ……。
最初に『念話』で連絡貰った時から、『すぐ行く』って言ってたから、隠れて誰か聞いてる可能性も考えてると……いや、それは押し付けだよな。
突然念話飛ばして連絡したら、表情とかで相手に何かしたってバレちゃう可能性があったから、あえて隠れたままでいた僕らももちろん悪いし。
で、まあ……誰も聞いていないと、敵に対して挑発がてら胸の内を正直に述べただけだと思っていた彼女は、全部聞かれていたと知って、僕と同じように顔真っ赤になってパニックになって……わー、肌の色が紫なのに赤くなってるってわかるよちゃんと。こないだより赤いな。
マンガだったら恐らく目がいわゆる『ぐるぐるおめめ』になってるんじゃないかってほどのテンパりっぷりは、見ていて面白くもあり、かわいらしくもあり……けどこういう状況の恥ずかしさをさっきまで味わっていた僕としては、やっぱり可哀そうというか、申し訳なく思う気持ちはある。
とりあえず、あそこまで熱烈な胸の内を語ってくれたからには(語っただけで伝えるつもりはなかったとはいえ)……きちんと、この後にでも話す機会を……
「……?」
そこまで考えて、ふいに僕は……少し間を置いてサクヤも、シリアスモードに戻る。
そして、今しがた吹っ飛ばした侵入者……『鬼』の男の方に視線を向ける。
未だに土煙が立っていてよく見えないけど、徐々にそれが晴れてくると、その向こうに人影が立っているのが見えて来た。
そいつは……ぱんぱん、と、服についた土埃を払いながら、悠然と歩いて出てきた。
結構思いっきり殴った(というか加減間違えた)はずの左のほおには、ほとんど傷らしい傷は見られない。
少し赤くなって腫れてるっぽいけど……あ、ちょっと口元切れて血も出てるな。
でも、それだけだ。
自画自賛になるが……僕の拳を顔面に受けたにしては、明らかに軽傷だと言える。ましてや、ちょっと力加減間違って、人間に打ち込んじゃいけない威力だったパンチを。
顔面陥没と左側の歯全折れくらいはいったか……と思ってたところにこれだ。さすがに驚く。
その鬼は、ペッ、と血の混じった唾を吐き捨てると……さっきまでと変わらない、いまいち感情のこもっていない、いうなれば虚無感に満ちた視線を、僕とサクヤに向ける。
「……話には聞いていた。大陸から来たという異邦人……先程まで話に登っていた男、か」
さっきの恥ずかしさがぶり返し……たりはしなかった。さすがに空気が違う。
歩いて戻ってきた鬼が、手に抜き身の刀を持っているままだってのも、この空気の張り詰め具合に拍車をかけている。特に構えたりはせず自然体だけど……隙は無い、な。こいつ、割と強いな。
「ふーん……知ってんだ、僕のことも」
「不安要素足りうる存在についての情報収集を疎かにする愚など犯す気はないからな。状況を見てだが、可能であるならば……貴様の戦闘能力についての威力偵察も目的の1つだった」
とのこと。そりゃまた……随分な自信だな。
まあ、敵陣に1人で潜入させるくらいなんだし、相応に実力はあるんだと予想は……
(……待てよ? 1人……だよな?)
そこまで考えて、ふと不自然に思う。
こいつはさっき、サクヤのことを攫って行こうとしてたわけだけど……どうやってだ? 運ぶ道具もなければ、仲間を連れてきている様子もない。
いや、道具は収納系のマジックアイテムの中に入れておけば解決だろうけど……何か引っかかる。
条件さえ整えば……何か手段さえあれば、そして邪魔さえ入らなければ、可能だろう。あんまり考えたくないけど……サクヤを、知らない間に拉致するなんてことも。
もっとも、何度も言うように、この家に僕が設置しているマジックアイテムによるセキュリティは、この程度でごまかせるようなもんじゃないし、邪魔が入らないなんて想定は甘……
(……っ!!)
気付いた。違和感の正体に。
そうだ……想定が甘い。
こんなところでこんなことをして、見つからずにいられるなんて……その想定が甘い。
ただし、見つかるってのは僕にじゃない……タマモさんにだ。
聞いた話だと、タマモさんはこの『キョウ』の都全体に、常に微弱な結界を張っており、侵入者なんかを即座に察知できるのだという。
その仕組みは知らないけど……彼女のことだ。ちょっとした工夫くらいでごまかせるほど簡単なものじゃないはずだし……だとすれば、今のこの状況も、何かしらの形で察知しているはず。
であれば、何かしらこっちに……援軍を即座に、とかじゃなくても、念話か何かを送って状況確認と警告くらいはしてきてもおかしくない。
なのに、それがない、ということは……
『……エルク。タマモさんのところに……夜分に申し訳ないけど、念話か何かで連絡飛ばしてみて』
『たった今やってみたわ。……誰にも通じなかったけど』
……オーケー理解した。
なるほどね、こいつ……1人で来たわけじゃなかったらしいな。
「……とんでもないことしてくれてるな、あんたら……」
と、思わず呟くように言ってしまった僕の言葉に、少しだけ驚いたように、そこの鬼は目を大きく見開いた。
「……! ほう、気が付いたか……なるほど、優秀な感知型の術の使い手がいるらしい」
「何、この機に乗じてあんたら、こっちの大将首でも暗殺しに来たの? とんでもないことするな……テロリストかよ」
「大陸の言葉はあまりわからんが……暗殺などという手段はとらんさ。向こうに行っているのは、単なる挨拶だ。まあ……それで終わるかはわからんがな」
そう言って、鬼は刀の切っ先をこっちに向ける。
と同時に、今までは意図して抑えていたんであろう殺気が開放され、その場の空気が、殺し合いの空間の……それも、凄腕の戦士が臨戦態勢になった時特有の、張り詰めたそれになる。
こないだ、師匠が出した殺気に比べれば全然だけど、それで油断するほど僕は未熟じゃない。
地力では勝っている……とは思うが、何をしてくるかわからないのが『陰陽術』や、妖怪それぞれの固有能力の怖いところだ。
こいつの種族名がわからない以上、何をしてきてもいいように警戒は常にしておかないと。
「……四代目酒吞童子・キリツナ様が配下……『天邪鬼』のサカマタだ」
種族名は今明らかになったけど。
しかし……『天邪鬼』ときたか。また何かこう……色物の気配がする奴が来たな。名前に『鬼』って入っちゃいるけどさ……
「そこな『土蜘蛛』を連れ帰れれば幸いだが……そうもいかないようだ。ならば、少しでも多く情報を持ち帰らせてもらうとする。一手立会願おう、異国の旅人よ」
「別にいいけど……持ち帰るのは無理だよ。お前、もう『キョウ』から出す気ないから。サクヤは下がってて。一応君、狙われてる側だし」
「……承知しました」
言った通りにサクヤが少し下がるのを視界の端に確認しつつ……僕は、両手の拳を打ち合わせる形で、手甲をガチン!と鳴らす。
さて……どんなもんかね。『酒吞童子』配下の鬼の実力とやら。
あるいは……名前からいまいち能力が予測できない、『天邪鬼』の力ともいえるか。
少し不謹慎だが、未知なる種族との戦いは、未知なる術や能力との出会いでもある。
多少楽しめる戦いであればいいけど………………と、言いたいところだが、今回は流石にダメだろうな。
『ミナト……今、最大出力の『マジックサテライト』で確認したわ。タマモさんの方にも、やっぱり敵が行ってるっぽい……でも、強めの結界が展開されているみたいで、いまいち詳しい様子まではわからないのよ』
『なるほど……了解。速攻でこの顔色悪いの片づけて様子見に……場合によっては加勢に行こう。いや、やっぱり僕がこいつ相手するから、残りのメンバーから何人かそっちにもう回しちゃお』
☆☆☆
強い。
それが、タマモ達が『四代目酒吞童子』を……キリツナを相手にして、最初に感じた感想だった。
それが今は……『強すぎる』に変わっていた。
抜刀の瞬間、その場で彼を無力化せんと、『縮地』で一気に距離をゼロにしたイヅナと、帯の刃による長いリーチを持つマツリが斬りかかった。
狙うは、手と足。攻撃の手段と逃走の手段を同時に潰すこと。
相手が相手ゆえに、2人とも慢心はないし、手加減できる相手だと思っていない。切り付ける、あるいは腱を斬るなどと生易しいことは言わず、切り落としてでも、という意気込みで。
タマモの5人の側近の中でも、接近戦において特に強さを発揮するその2人は……しかし、その次の瞬間、刃を振りぬくよりも早く返り討ちに遭った。
キリツナの持つ刃がわずかにきらめいた……かと思った瞬間には、その刃は2度振りぬかれていた。
一太刀目で『縮地』による移動の直後、まさにその瞬間だったイヅナを逆袈裟に斬りつけ、返す二太刀目でマツリの帯の刃を全て断ち切る。
そして、その二撃の斬撃と共に発生した衝撃波により、イヅナとマツリは吹き飛ばされた。
マツリは帯を防御に使うことで数歩後ずさりする程度で済んだが、反応外の速度で深く斬りつけられたイヅナは受け身を取ることすらできず……屋敷の障子とふすまを何枚もぶち抜いて飛ばされていき……見えなくなった。
一瞬のうちに起こった、あまりにも衝撃的な出来事に、その場の全員が硬直仕掛けて……しかし、常より、何が起こっても敵に隙を見せないことを連携の鉄則としている、残り4人の行動は早かった。
素早く手指信号でミフユが部下にイヅナの回収を命じ、彼女自身とサキはそれぞれ得意とする術で攻撃を仕掛ける。
サキは火炎を凝縮した弾丸を、ミフユは猛吹雪で竜巻をそれぞれ作り、左右からキリツナに叩きつける。
相反する2つの属性の攻撃でありながら、連携を前提としてこの2人が放ったこれらは、衝突して相殺するということはなく……むしろ互いが互いを高め合い、補い合って、単純な足し算を超える破壊力を発揮させる。
炎の熱で焼き、あるいは溶かすと同時に冷気でそれらを凍結させる。そこに熱が加わることで、溶ける……よりも早く、ひび割れて砕け散り、その破片とも呼べない小さな粒がまた焼かれ溶けて……を繰り返し、対象を塵にまで分解して抹殺する、凶悪極まりない合わせ技である。
その直撃を受けたはずのキリツナは……その場にいた実力者達でさえ、ほとんどがその目に見えないほどの速さで幾度もその刀を振るい、その剣の衝撃波で、逆に炎と吹雪を切り裂いて消し飛ばしてしまった。
だが、それすら見越して動いていたサキとミフユは、着弾よりも早く次なる術を……本命である、炎と氷を用いた『捕縛』のための術を作り上げていた。
地を這うように放たれたいくつもの炎が、蛇を思わせる動きで絡み付く。
地面に打ち込まれた強烈な冷気が、キリツナを具足の足元から凍り付かせる。
だが、それらはやはり刀の一閃と足踏みの一つで散らされ……しかしそこに、それら2つを目隠しにした、マツリの細帯による拘束が迫る。
それも同じように斬り払おうとするキリツナだが、その帯は先程のそれよりもはるかに頑丈な材質で作られたそれであり……しかも最初から、キリツナではなく、その持っている刀を絡めとる目的だった。ゆえに、振るわれた瞬間にそこに絡みついて動きを封じる。
これにはさすがにすぐには反応できず、振りほどくことも難しいキリツナがようやくその動きを止めて隙を見せ……そこにもう一度、炎の蛇と氷の足かせが迫り、今度こそ彼を拘束した。
そしてその背後に、ヒナタが心臓に狙いを定めて矢を放ち……しかしその瞬間。
「――ふっ!!」
全身から気合と共に、周囲が歪んで見えるほどの『妖力』を放出したキリツナは、またしても拘束を消し飛ばすと、残った刀の帯の拘束を……力ずくで引っ張った。
「な、っ……!?」
「マツリ!」
その結果、反対側を持っている形になっているマツリが、まるで綱引きをやったように、逆に引っ張られて振り回され……まるで鎖鎌の分銅のように、ヒナタに叩きつけられた。
その刹那に放っていた矢も、キリツナはあっさりと手でつかみ取ってしまった。
その振り向いたばかりで死角になっているであろう背中側に、サキが式神『右鬼』『左鬼』を、力を普段以上に注ぎ込んで巨大化させて召喚、その武器を叩きつけさせるが……掲げるように持った刀でそれを防御されてしまう。
刀身には、未だにマツリの帯が結び付いてそれを拘束していた。
投げ飛ばされても拘束を緩めない彼女の精神力は大したものだと言えるだろうが、今の2体の攻撃を刀身と一緒に受け止めたことでわずかなほつれができ……その瞬間、キリツナが素早く刃を引いて切り裂いたことにより、拘束も解かれてしまう。
自由になったキリツナは、直後、地面を蹴る……という動作すら見せずに、体勢がまだ直っていない2人……マツリとヒナタのすぐそばに移動する。
イヅナのそれを見慣れていた2人には、その移動方法が『縮地』であると即座に理解できたが……それに反応できるかどうかは別だった。
横一文字の斬撃で、マツリがその体を、輪切りにするように三分割させられる。
彼女は『一反木綿』であり、人間の体は見せかけに過ぎない。ゆえに、人間であれば致命傷につながるような斬られ方をしても、即座に命が危ぶまれるわけではない。
が……本体である布の束の大部分を失うような形での『傷』を負えば、それはそのまま、彼女にとっても傷の大きさとなってしまう。
ゆえに、本体の布の約3分の2を切り離されてしまった彼女は、すぐに戦線に復帰するのは絶望的とすら言える状態……完全にリタイアといってよかった。
そしてもう1人……ヒナタは、回避は不可能だと一瞬で判断し、腰の刀を抜いてキリツナの一撃を受け止め……そのままインファイトで切り結ぶ。
わずかに思考の表層に出てくる『意思』の残照を、『覚』の能力で読み取って先手を取ろうとするが……膂力、速度、そして武器の性能といった、そもそもの接近戦の能力で上をいかれている以上はそれも僅かに寿命を先延ばしするにとどまってしまう。
ほどなくして、彼女の刀が限界を迎えて折れ……防ぐ術のなくなったヒナタは、刺突の形で鳩尾に突き立てられる刃の冷たい感触を感じながら、同時に放たれた衝撃波で吹き飛ばされた。
しかしその瞬間、彼女が稼いだわずかな時間を目いっぱい使って術を準備していた、ミフユとサキの攻撃が三度迫りくる。
そこには……無数の炎と氷の槍が、その切っ先をキリツナに向けた状態で待機されていた。
そこにさらに、サキとミフユはもう一手間加える。
サキは幻術を使い、見た目だけで実体のないダミーの槍を、本物の数倍の数を出した。
加えて、もともとあった本物の槍のいくつかを消して隠し、不可視の状態にする。
さらにその上で、ダミーと本物を不規則に出したり消えたりしてみせた。
そこにさらにミフユが動く。冷気を操り、空間内の温度を局所的に大きく変えることで、光を異常屈折させて『蜃気楼』を引き起こした。
火種こそ術によるものだが、その現象自体はれっきとした物理法則によるものであるがために、霊力や妖力による知覚では感じ取ることができない、天然の偽装となる。
どれが本物でどれが偽物かわからない上、見えている偽物と見えない本物が混在し、挙句の果てに実際に飛んでくる位置や角度と見えているそれが違うという異常な空間が完成。
その状態で、一斉に攻撃は放たれる。
その直前、戦闘不能となり、倒れ込もうとしていたヒナタが、空中に浮遊する布によって強力に体を引っ張られ、強引にその範囲から離脱する。
そして残りの布で、ほんの刹那の時間、キリツナを妨害してその場に足止めした。
最後の力を振り絞ったマツリの献身だ。
そして、無数の炎と氷の槍が殺到し……しかしその瞬間、
「なるほどな、流石はキョウの妖怪の幹部格……己の思い上がりと力不足を認識させられる」
落ち着いた様子で、そうつぶやくように言ったキリツナは、懐から何かを取り出していた。
それは……
(……黒い……羽?)
人差し指と中指で、挟むようにして持たれていたそれは……カラスか何かの、鳥の羽だった。
すくなくとも、それが見える位置に立っていたミフユには、そう見えた。
その目の前で、今まさに無数の槍がキリツナを貫こうとしている、その瞬間……
黒い羽根が、まるで赤熱した金属のように、あるいは煮えたぎる溶岩のように、禍々しい気配の赤黒い光を放ち始め……次の瞬間、
あたり一帯に、凄まじい閃光と共に爆風が吹き荒れた。
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