異世界でレア職業「魔法少女」になった俺がそれでもめげずに世界最強のヒーローを目指す話

いかぽん

文字の大きさ
2 / 4

第2話

しおりを挟む
 光に包まれた俺は、次に気付いたときには鬱蒼と木々の茂る森の中にいた。

 そこかしこに木漏れ日が降り注ぐ幻想的な風景の中、小鳥たちのさえずる声が聞えてくる。

「ここが、異世界……?」

 俺は一人つぶやく。
 右を見ても左を見ても、ほかに誰もいない。

 ちなみに俺の姿はというと、トラックに撥ねられる前と基本的に変わらない高校の制服姿だ。

 一応、自分の体をぺたぺたとさわって確認してみたが、体が女の子になっているというような事もなさそうだ。

 唯一変わっていることと言えば、子供を助ける際に投げ出したせいかバッグを持っていないことと、手には例の「魔法少女カード」を持っていることぐらいだ。

「さて……」

 俺は途方に暮れた。
 いきなり異世界だ、チート能力だなどと言われて、こんなどことも知れない場所に放り出されてしまった。

 これは夢なのだろうか。

 足元に生い茂る草花も、周囲に立ち並ぶ木々も、あるいはそれら植物の匂いや小鳥の鳴き声までも、現実のものとしか思えないが……。

 いずれにせよ荒唐無稽だ。
 何から手をつけたものか──

「とりあえずは、生きることを考えるべきか」

 ひとまずそこに意識を向けることにする。

 食事や飲み水の確保、安全で雨風を防げる寝床を探すことなど、真っ先にやらなければならないことはたくさんあるように思えた。

 そのために、どうするか──

 というと、まずやるべきことは、与えられたチート能力とやらがどんなものなのかを確認することだと思った。

「確かこの『魔法少女カード』は、スマホみたいに操作できるって言ってたよな」

 俺は自らの手に収まっているスマホ大の大きさのカードを左手に持ち、右手の人差し指でその表面を触れてみた。

 するとトレーディングカードのような絵柄が表示されていたカードの表面が一変し、文字通りスマホの画面のようにアイコンがいくつか表示されている状態になった。

「……すげぇな、何これ」

 俺はちょっとした感動を覚えながら、いくつかあるアイコンのうち、「ステータス」と書かれているアイコンをタッチしてみた。

 すると俺の現在の姿が画面に表示され、同時に何やら「能力値」が表示された。


 ***


神成有斗
 職業  :一般人(魔法少女)
 レベル :1
 HP  :150
 MP  :50
 攻撃力 :10
 防御力 :10
 魔力  :10
 魔法防御:10
 敏捷力 :10


 ***


 基準がよく分からないが、清々しいぐらい綺麗な数字だった。

 そういえば、魔法少女への変身にはMPが必要って書いてあった。
 変身するのに1MP、以後十分間持続するごとに1MPだったっけ。

 そうすると、MPが50あるってことは、ざっくり言って八時間ぐらい魔法少女状態を維持できることになるのかな。

 ──などなど、いろんなことを考えながら、俺はその後もスマホを操作するのと同じ動作で、カードの中のほかの情報を調べていった。

 まあいろいろと盛りだくさんで、全体をざっと眺めるだけでも十分以上の時間がかかってしまったぐらいだった。

 全部を説明していくとキリがないぐらいなのだが、中でも特筆モノの「機能」がいくつかあったので、それだけピックアップしてみよう。

 そう、「機能」だ。
 この「魔法少女カード」、情報検索できるだけじゃなくて、これ自体が様々な機能を持った特殊アイテムだったのだ。

 まず一つ目、「アイテムバッグ」機能。

 画面上のアイテムバッグアプリを開いてから一定の操作をすると、カードそのものが光り輝いて形状を変化し、大きめのリュックサックぐらいのサイズの収納袋に姿を変える。

 で、ここに何か物を入れて袋を閉じると、再び光り輝いてカードの形状に戻る。

 袋に収納したアイテムは、そのままカードの中(謎の異次元空間?)に収納された状態になり、重さもなくなる。

 つまりこの「魔法少女カード」、超便利なんでも収納アイテムになるわけだ。

 次、便利機能その二。
 その名も「マップ」機能。

 マップアプリを開くと、カード画面に周辺数百メートル程度の地形と、自分の現在位置が表示されるようになる。

 これによって、右も左も森の木々しか見えなかった今の状態から、北にしばらく行けば街道らしき道があることが分かったし、その街道を少し進むと水場があることも分かった。

 残念ながら距離スケールの拡大・縮小などはできないようだったが、それでも十分すぎるぐらいにお役立ちの機能だ。

 最後にご紹介する、便利機能その三。
 すなわち「鑑定」機能。

 これは、この異世界のアイテムやモンスター、人物などをカードのカメラ機能で撮影して「鑑定」をすると、そのアイテムやモンスター、人物などの能力がモノによっては分かるというものらしい。

 ちなみに俺を映して「鑑定」をしたら、ステータスを開いたときと同じ数字が表示された。

 ただ、俺がはいている靴や、ポケットに入っていた自宅の鍵などを「鑑定」しても何も表示されなかったし、その辺の木や雑草もほとんどは「鑑定」結果なし。

 唯一、近くに生えていた白い花を咲かせる植物の一つが「いやそう」という名称で「鑑定」結果が出た。
 これはわずかだが、HPを回復させる効果があるらしい。

 何に「鑑定」が反応するのかしないのか、よく分からない部分はあるが、このあたりはいろいろと試してみるしかないだろう。

 ──とまあそんなわけで、いろんな機能がよりどりみどりの「魔法少女カード」なのである。

 はっきり言って、魔法少女という職業そのものよりもこっちのほうがよっぽどチートアイテムなんじゃないかと思うぐらいだ。

 ……さて。
 というわけでひとまず、「魔法少女カード」の内容の把握はおおむね完了した。

 次は本題、「魔法少女」への変身とやらだ。

 やり方は、魔法少女カードの中にあった記述で分かっている。
 魔法少女カードを天に掲げて、変身したいという意志と同時に、「変身」と叫ぶだけだ。

 俺は魔法少女カードを片手に、ごくりと唾をのむ。

 ……周り、誰もいないよな。
 誰も見てないよな。

 ……よし。

 じゃあ、せーの──

「──変身!」

 俺は魔法少女カードを天に掲げて、叫んだ。
 カードからまばゆい光があふれ出し、俺の全身を包み込んでいく。

 ほんの一瞬ほど。
 自分の体の何かが変化したような感覚。

 やがて光がやんだ。
 俺の手には、変身を叫ぶ前と同様の魔法少女カードがあった。

 しかし──そのカードを持っている手が、心なしか少し小さい。
 まるでチビッ子のような、ぷにっとしたお手々。

 そして──目線が低い。
 さっきまでよりも、周りの木々の背丈がすごく高く見える。

 俺は自分の手で、自分の体を触っていく。
 柔らかい。

 胸はほんのり膨らんでいて、スカートに包まれたお尻もなんか触り心地が違う。

 うん、スカートだ。
 ピンク色の華やかなスカートを身につけている俺がいる。

 もちろんスカートだけじゃない。
 胴体を包むピンク色の可憐な衣装に、同じ色のグローブやブーツなども見事に着用している。

 俺は魔法少女カードを操作し、手鏡アプリを起動する。
 それそのもの、魔法少女カードが手鏡になるだけのアプリだ。

 その手鏡で、自分の姿を映し出した。

 ピンク色の髪の小っちゃくて可憐な美少女が、そこにいた。

 小学校の中学年──つまり小学校三年生か、四年生ぐらいの外見。
 本来の俺の顔立ちの名残がわずかに見える気もするが、基本的にまったく別人の姿だ。

 俺が戯れにきゃぴっとウインクなどしてみると、手鏡に映った美少女も可愛らしくウインクした。

「マジか……」

 俺は自分の喉から発せられる可愛らしい声とともに、がっくりと膝をつき、orzという姿になって打ちのめされる。

 ガチだった……。
 俺、魔法少女になってしまいました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...