キングスゲーム ~召喚された異世界は想像以上にRPGでした~

いかぽん

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第1章

第2話

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 俺はひとまず、少女の手を取って立ち上がる。

 しかし、何がなんだか分からない。
 俺は少し前まで、安アパートの自分の部屋でスマホを弄っていたはずなのだが……。

 そうだ──『キングスゲーム』
 そんなタイトルのアプリゲームをプレイしようと思ったら、気が付いたらここにいた。

 夢でも見ているのかと思う。
 だが俺の目の前にある風景は、確かな質感をもって、これも現実の一つに違いないと訴えかけてくる。

 となると、ひょっとして──異世界?

 そういえば『キングスゲーム』を始めようとしたとき、『あなたを異世界に召喚します』とかいうメッセージがあったな……。

「状況がよく分からない。ここは、異世界なのか……? 『キングスゲーム』というゲームを始めようとしたら、気が付いたらここにいたんだが」

「うん、その理解で構わない。ここはあなたがこれまでいた世界から見れば、確かに『異世界』だ。──ひととおり、説明をさせてもらってもいいかな? ボクはあなたに、『キングスゲーム』のことを案内ナビゲートする役割も担っているんだ」

 少女の言葉に、俺はうなずく。

 いまだに展開についていけていないが、少なくとも彼女は俺よりは状況が分かっていそうだ。
 ならばひとまず、彼女の言う「説明」とやらを聞いてみよう。

 少女は淡々と、説明を始める。

「この『キングスゲーム』は、異世界から召喚された王の候補者の中からたった一人、この世界を統べるにふさわしい最強の王者を決定するための儀式だ。そしてあなたは、『キングスゲーム』に参加する王の候補者の一人に選ばれた。だからこの地に召喚されたんだ」

 ふむ、情報量が多いな。

 まずここが異世界だということは、ひとまず確定としておこう。
 そうしないと状況認識が前に進まない。

 で、俺は地球の日本からこの異世界へと召喚された「王の候補者」であると。
「王」という表現が漠然としているが、とりあえず特別な存在なのだろうなということは分かる。

 そして彼女の口ぶりからすると、俺以外にも「王の候補者」としてこの異世界に召喚されている人間がいることは間違いないだろう。

 となると、気になることは──

「はい。質問いいかな」

「どうぞ」

「その『王の候補者』っていうのは、全部で何人いるんだ?」

 俺がそう質問すると、少女は首を横に振る。

「それはボクにも分からない。確かに言えるのは、あなた一人だけではないということだ」

「そうか。じゃあもう一つ。俺がその『王の候補者』というのに選ばれたのには、何か理由があるのか?」

 その質問にも、少女は首を振る。

「それもボクには分からない。あなたが王の候補者として選ばれたのは、神々の意志であろうとしか」

 神々の意志ときたか。

 まあでも、細かいことを気にしすぎていても仕方がないな。
 比較的どうでもいいと思うことはスルーしていこう。

 俺は少女に、説明を続けるようにうながす。
 少女はうなずいて、話を続けていく。

「王の候補者となった者には、従者として一人の騎士が与えられる。あなたにとってはボクがその騎士だ。ボクたち王の騎士は、王の剣としてあるいは盾として、王の勝利のために戦う。──あ、王の候補者のことを、ボクたち騎士は『王』と呼ぶんだ。ボクたちにとっては、『契約』をした時点ですでに、仕えるべき主になるからね」

 えーっと、新出の情報は『契約』か。
 まあ何かこのあとに、その『契約』というのをすることになるんだろう。

 しかし情報量が多い。
 俺は再び挙手をして、少女に質問する。

「質問。その『説明』は、あとどのぐらいある?」

「ここまでで半分ぐらいかな。……そろそろ疲れてきた? でも説明をしないで契約をするわけにもいかないしなぁ」

「いや、構わない。続けてくれ」

 あと半分ぐらいなら耐えられそうだ。
 頑張って聞いていくことにする。

 少女は再びうなずき、説明を続ける。

「ボクたち騎士はもちろん、戦う力を持っている。でも王の候補者として選ばれた者自身も、契約をした段階で力を得るんだ。いずれも最初はたいした力は持たないけど、モンスターとの戦いに勝利することでボクたちは徐々に、しかし急速に成長していく。やがては常人には決して到達できない領域にまで至れると言われているね」

 あー……。
 なんかいかにもゲームっぽい話になってきたな。

 モンスターを倒してレベルアップ。
 強くなって魔王を倒せってか。
 いや、倒すのは魔王ではないらしいが。

 あとこの騎士の女の子だけじゃなく、俺自身も戦う力を得ると。
 このあたりは、契約とやらを実際にやってみないと分からなさそうだな。

 それにしても、大きく気になることが一点。

「今、『モンスター』って言ったよな? この世界にはモンスターっていうのがいるのか? 王の候補者が戦うのって、ほかの候補者じゃないの?」

 候補者の中から最強の王を決めるというから、てっきりその候補者同士がぶつかり合うバトルロイヤル的なものかと思っていたが、そうだとするとこの話は少し座りが悪い気がする。

 その俺の疑問に、少女はこう答える。

「うん。このキングスゲームであなたが戦うことになるのは、ほかの候補者よりも、モンスターのほうが圧倒的に多いはずだよ。ほかの候補者は世界中に散らばっていて、そう滅多に出会うことはない。でもモンスターはそこら中にたくさんいて、この世界の人々を苦しめ続けている。王たちはこれと戦い、打倒することによって成長していくんだ」

 なるほど。

 ひょっとするとこのキングスゲームというのは、この世界にはびこるモンスターというのを大掃除する意味合いもあるのかもしれないなと邪推してみたりもする。

 そういった意味では、勇者になって魔王を退治してくるというのと、そんなに大きく外れていないのかもしれない。

 ただそこに、玉座争奪戦というバトルロイヤル的な要素も加わってくると。
 少女の口ぶりから考えても、こちらの要素も確かにあると見てよさそうだ。

 オーケーオーケー。
 ちょっとややこしかったが、だいぶ分かってきた気がする。

 しかし本当にゲームっぽいな。

 いや、俺は『キングスゲーム』というゲームをプレイしようとしていたんだから、別段おかしなことではないのかもしれないが。

 それから少女は、「これで最後」と言ってから、こう伝えてくる。

「以上でキングスゲームのおおまかな説明は終わりだ。あなたはこのゲームに参加することも、参加しないこともできる。キングスゲームに参加する意志があるなら、契約の証として、あなたの騎士となるボクにキスをしてほしい。参加を拒否するなら、あなたは元の世界に戻り、これまで通りの生活を送ることができる。でもその場合、キングスゲームへの参加資格は永久に失われるから、そこは気を付けてほしい」

 ……ん?
 なんか今、真ん中あたりに変な内容があったぞ。

 契約をする場合、この子とキスをしろと……?

 ……いや、落ち着け。
 とりあえずその前に、確認事項だ。

「質問。モンスターとの戦いがどうとか物騒な話があるわけだが、もし俺がこの世界で死んだ場合、やっぱり普通に死ぬの?」

「ううん、そんなことはないよ。厳密にはこの世界に召喚されたのはあなたの魂だけで、この世界のあなたの肉体は今のところは仮初めのものだ。この世界であなたが死んでも、元の世界のあなたが命を落とすことはない。ただキングスゲームからは脱落して、元の世界に強制送還されてしまうけどね」

「ん……? っていうと今、元の世界の俺の体ってどうなってるんだ?」

「魂を失っているから、ある意味で仮死状態だね。ただ生命活動は維持されている。それにボクたちの世界とあなたが元いた世界とでは時間の進みが全然違うから、こっちで何年も過ごしてから元いた世界に帰還したとしても、元の世界では一日も経過していないはずだよ。元の世界の肉体のことは心配しなくて大丈夫だと思う」

 ふーむ、なるほど。
 つまりこのキングスゲームに参加することは、俺にとってはほぼノーリスクと見ていいようだ。

 単純に、やってみたければやればいいと。
 抽選で楽しいゲームの参加権を運よく手に入れたが、辞退したければ辞退してもいいよというぐらいのノリに思える。

 いやまあ、それもこれも全部、この騎士を名乗る少女の言うことを信じるならの話だけどな。
 名前はジゼルとかいったか。

 ただ、これだけの不思議現象に見舞われておきながら、今さらこの子の言うことだけを疑ってかかってもしょうがないだろうとも思う。

 それに正直に言って、この摩訶不思議な状況にあって、少しワクワクしている自分がいるのも確かだ。
 年甲斐もないとは思うが、そのぐらいの童心は持っていたって罰は当たらないはずだ。

 以上のことを考えると、このキングスゲームへの参加は、前向きに検討するってことでいいだろう。

 だが問題は──

「えぇっと……ジゼルだったよな。キミにもう一つ確認だ」

「うん、何かな?」

「キングスゲームへの参加の意志表明には、確か『契約』が必要なんだったよな。で、その契約をするためには……どうすればいいんだって?」

 すると騎士の姿をした美少女は、俺に向かってにっこりとほほ笑みかけてこう言った。

「あなたの騎士であるボクに、あなたがキスをするんだ。そうすることで契約が完了する。あなたはキングスゲームへの参加を表明したことになり、ボクは正式にあなたの従者となる。そうなればボクは、あなたの命令には絶対服従だ。あなたの好きなように、何を命令してくれてもいいよ?」

 えーっと……。

 これなんてエロゲですかね?
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