キングスゲーム ~召喚された異世界は想像以上にRPGでした~

いかぽん

文字の大きさ
11 / 11
第2章

第11話

しおりを挟む
 その後はモンスターに遭遇することもなく、村の入り口までたどり着いた。

 そろそろ夕方という時刻を過ぎ、本格的に暗くなってきた頃だ。

 時間が時間なせいか、外を出歩いている村人の姿は少ないようだ。

 畑の間にぽつりぽつりとあるいくつかの住居では、どこも夕食の支度をしているのか、煙突から煙が上がっている様子が見てとれる。

「王様、まずは宿屋でよろしいでしょうか?」

「そうだな、泊まる場所がないと困るし。でも俺、この世界のことはよく分からないんだよな。ジゼル、悪いんだがその辺──生活周りのことはいろいろと頼んでもいいか?」

「もちろんです、王様! こう見えてボクは、この世界の常識はすべて叩き込まれていますからね。王様の身の回りのお世話は、全部このボクにお任せください」

 ふふんと、誇らしげなドヤ顔でそう答えるジゼル。

 背伸びをしている子供のようで少し不安だが、まあ神々とやらが与えた知識があるのだから、任せておいて大丈夫だろう。

 それにしても、さっそく従者に全部任せて、王様気取りの俺である。
 人は環境に慣らされてしまうのだ。

 ジゼルはまず、近くにいた村人のところまで駆けていって声をかけ、一通りのやり取りをすると、その村人にぺこりと頭を下げてから俺のほうに戻ってくる。

「宿屋は向こうだそうです、王様」

 助かるなぁ。
 俺はジゼルとともに、彼女が指し示した方へと夜道を歩いていく。

 俺はその途中、少し気になっていたことをジゼルに聞いてみる。

「そういえばジゼル、言語関係ってどうなってるんだ? 俺は日本語をしゃべっているつもりなんだが、ジゼルがしゃべっているのって多分、日本語じゃないよな?」

 非常に不思議な話なのだが、ジゼルの言葉は日本語ではない感じがする一方で、俺はそれを日本語と同様のものとして理解できてしまう。

 意思の疎通はできているので問題はないのだが、なんとも奇妙な感じではある。

「はい。ボクは王様に初めてお会いしたときから、この世界の言語でしゃべっています。異世界から召喚された王様には、自動翻訳能力が働いているんです。王様が発する言葉はこの世界の人たちにも自動的に理解できますし、この世界の人たちの言葉も王様は母国語のように理解することができます」

「ふぅん、そりゃあすごいな」

 この異世界の七不思議に、一つ追加だ。
 いや、この世界の不思議は、七個なんかじゃ全然足りない気もするが。

 そんな話をしながら村の中を歩いていると、やがて宿屋と思しき建物の前にたどり着いた。

「ボクが宿の人と交渉してきます。王様はこちらでお待ちください。すぐに戻ってまいります」

 ジゼルはそう言って、宿の戸を開き、中へと入っていく。

 そして言葉通りに、ほどなくして戻ってきた。

「宿泊二人分、お風呂あり、朝食付きで2ゴールドだそうです。かなり良心的な値段かと思いますが、王様、いかがでしょうか?」

「ああ、ジゼルがそう言うんなら、それで。──っと、そう言えばゴールドって、どうやって出すんだ?」

「ステータス画面から『所持金』のところを押していただいて、『引き出し』を選択して金額を入力してください」

「……って、こうか? ──おっ、本当だ、出てきた」

 ジゼルの言われたとおりにしてみると、俺の眼前の空中が黄金色の光を放つ。
 少ししてからそこに、金貨が二枚現れた。

 手を受け皿にして受け取ると、チャリンと音が鳴って手の内に収まる。
 それをジゼルに渡して、宿の宿泊費とした。

 ──のは、良かったのだが。

 ジゼルに手続きを任せ、宿の人に案内されて二階に上がる。
 そして宿泊する部屋へとたどり着いた俺は、困った。

 俺は部屋の中の様子を見渡しつつ、呆れの声をジゼルに向ける。

「……なあ、ジゼル」

「はい、王様。なんでしょう?」

「なんでしょう、じゃなくて。──これどう見ても、二人部屋だよな?」

 そこにあったのは、まごうことなき二人部屋であった。
 部屋は一つ、ベッドは二つである。

 どうもジゼルは、この一室しか部屋を取らなかったらしい。
 しかもまあまあ狭く、ベッドとベッドの間は手を伸ばせば届くほどの距離。

 とてもじゃないが、家族でも恋人でもない男女が一緒に宿泊する部屋ではない。
 しかしジゼルは、堂々と答える。

「はい。いざというときに王様の御身を守れるよう、僭越ながらボクも、王様と同室とさせていただきました。少々狭いのは、申し訳ありませんがご容赦ください。もし騎士風情が王様と同じベッドで眠ることがおこがましければ、ボクは部屋の隅で毛布に包まって眠りますので、どうかお許しを」

「いや、同じベッドで眠ることはもちろん構わないんだが。いや同じベッドってそういう意味じゃなくて。そうじゃなく──いい歳した男女がこう、一緒の部屋で寝るってのは、さすがにまずいだろ」

「ああ、そういうことですか。そのことなら、ボクは女である前に騎士ですので、問題ありません。王様もボクのことは、性別など気にせず、単なる近衛であり、身の回りのお世話をする従者であるとお考え下さい」

「はあ……」

 俺としては、気の抜けた返事をするしかなかった。
 お考え下さい、と言われてもな。

「あのさ、ジゼル。『男はオオカミ』って言葉、知ってる?」

「はい、存じております。男性の方はいずれも、その内側に獰猛なオオカミのような凶暴で野性的な性質を持ち合わせているという話ですね。ボクたち騎士でも、油断をすればそうした本性を現した男性に牙を立てられ、食べられてしまうかもしれないと認識しています。──いつもはお優しい王様も、本性を現せばとてもたくましいのでしょうね」

 そう言ってジゼルは、にこりと笑いかけてくる。
 分かっているのかいないのか、どっちだお前。

 しかし最終的には、ジゼルがいいならいいか、俺が変なことをしなければいいだけの話だし──と考えて、ジゼルとの同室はそのまま通すこととなった。

 身辺警護やら何やらの話で、揉めそうだったし。

「さて、王様。宿も確保したところで、夕食前にご案内したい場所があります。よろしいでしょうか?」

「ああ、いいけど。どこにいくんだ?」

「王様のための場所ですよ」

 それだけ言って、ジゼルは部屋を出ていく。
 俺は首をかしげながら、そのあとについていった。

 宿を出て、歩くことしばらく。
 やがてたどり着いたのは、村の外れにある一軒の小屋だ。

 夜だというのに、小屋の中に灯りがついている様子がない。
 人が住んでいないのだろうか。

 だがジゼルは躊躇うことなく、小屋の戸を開ける。
 鍵は掛かっていなかった。

 小屋の中には、やはり誰もいなかった。
 その真っ暗なところに、ランプを手にしたジゼルが踏み込んでいく。

 そしてジゼルは、床板を調べ始める。
 するとガコンと、取っ手のようなものが床から現れた。

 ジゼルがそれを引き上げると、床板が扉のように開き、地下へと続く石造りの階段が姿を現す。

「どうぞ、王様」

 ジゼルはそう言って促してくるので、俺は床下から続く地下への石階段を下りていった。

 そうして階段を下った先には、地下室があった。
 地上にあった寂れた小屋からは想像できないほどの、明るく広い地下室。

「ミュウのアイテムショップにようこそニャ、候補者様」

 そう声をかけてきたのは、地下室の奥の接客用カウンターの向こう側にいる猫耳の少女だった。

 付け耳とは思えない自然な獣耳が、ぴょこぴょこと動いている。
 異種族というやつだろうか。

 室内を見回せば、たくさんの武器や防具やその他の道具が、ところ狭しと飾られていた。

 また、地下室の入り口すぐのところには、ふよふよと巨大なクリスタルが浮かんでいる。
 あれはこの異世界のスタート地点の広場にもあった、【復活のクリスタル】だろう。

「ジゼル、ここは?」

「ここはキングスゲーム参加者のためのアイテムショップです。王や騎士が使う武器や防具、その他アクセサリーや消耗アイテムまで、ひと通りをここで購入することができます」

 なるほど。
 武器屋、防具屋、道具屋まで、ここだけで全部が揃うというわけか。

 俺は並んでいる商品を、ひと通り物色してみることにした。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

スキル『農業』はゴミだと追放されたが、実は植物の遺伝子を書き換える神スキル【神農】でした。荒野を楽園に変えて異世界万博を開催します!

黒崎隼人
ファンタジー
「そのスキル『農業』?剣も魔法も使えないクズはいらん、失せろ!」 勇者召喚に巻き込まれて異世界へ転生した植物オタクの青年カイルは、地味なスキルを理由に王都を追放され、死の荒野へと捨てられた。 しかし、誰も知らなかったのだ。 彼のスキルが、ただの農業ではなく、植物の遺伝子さえ書き換え、不毛の大地を瞬く間に聖域に変える神の力【神農】であることを。 荒野を一瞬で緑豊かな楽園に変えたカイルは、伝説の魔獣フェンリルを餌付けして相棒にし、傷ついた亡国の美姫ソフィアを助け出し、自由気ままなスローライフを開始する。 やがて彼が育てた作物は「エリクサーより効く」と評判になり、その噂を聞きつけた商人によって、彼の領地で世界規模の祭典――『異世界万博』が開催されることに!? 一方、カイルを追放した王国は深刻な食糧難に陥り、没落の一途をたどっていた。 「今さら戻れと言われても、この野菜は全部、俺とソフィアのとフェンのものですから」 最強の農民が送る、世界を揺るがす大逆転・万博ファンタジー、ここに開幕!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

処理中です...