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第十四話
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「ああ、イルマお姉さま……このエルヴィラ、お姉さまに一生ついていきます。もうお姉さまなしでは生きていけないの……」
しばらくの後。
イルマによる「調教」を受けた少女は、その「お姉さま」にしなだれかかるように寄り添いながら、うっとりとした顔になっていた。
イルマはその少女──エルヴィラの髪を、よしよしとなでる。
「うん。もう悪さはしないって誓うね?」
「お姉さまがそうしろとおっしゃるのなら!」
「じゃあそうしてね」
「はい!」
まるで見た目相応、本当の子供のように嬉しそうな顔で、元気よく返事をするエルヴィラ。
一方、その「調教」の一部始終を見ていたユニスは、顔を真っ赤にしてぺたんと地べたに座り込んでいた。
ユニスがこれまで見たこともない、まして体験したことなんてまったくない目くるめく世界が、今の今まで広がっていたのだ。
だがその一方。
ユニスに向かって、当の「調教」の施し主であるイルマが、伏し目がちになりながら後ろめたそうに報告をする。
「それで、ユニス先輩……その、終わりました、けど……」
「ひゃっ、ひゃいっ! じゃなかった……お、おう、そうか」
「あの、先輩……やっぱり、怒ってます?」
「……へ? 怒る? オレが怒るって、何を……」
そこまで言って、ユニスははたと思い至る。
雑魚とか、黙ってろとか、ユニスのことを蔑ろにしたこととか。
そういえば、散々に暴言を吐かれたのだったか。
それ以上に劇的な事態が起こりすぎてユニスの頭からはまるっきり抜けていたのだが、イルマの様子を見るにそれを気にしているとしか思えない。
今のイルマの姿はまるで、職場の先輩に怒られることを恐れて怯えている普通の後輩のようだ。
とんでもない力で、とんでもないことを為した怪物の態度ではない。
それを見たユニスは、ぷっと吹き出してしまう。
なんだそりゃ、と。
多分そう、イルマの中では同列なのだ。
世界の危機的事態と、職場の先輩との関係とが。
ということは、どうせ先の暴言も、何か考えあってのことなんだろう。
例えば、ユニスに嫌われれば、ユニスを巻き込まずに済むだろう──とか。
まったく、器用なんだか不器用なんだか。
「イルマ」
「は、はい!」
「お前、帰ったらみっちり説教な」
「ふぇぇっ……! で、でも分かりました! この不肖イルマ、密室でユニス先輩からみっちりと手取り足取り説教を受けます! なんなら今夜一晩中、先輩の部屋で過ごしても構いません!」
「お前ホントは反省してないだろ!? ガチで説教してやるからな!」
「えへへー。楽しみにしてます、先輩♪」
そう言って、にへらっと笑うイルマ。
その笑顔を見れば、ユニスも毒気が抜かれてしまう。
「まったく……とんでもない後輩を持っちまったな」
大きくため息をつくユニスであった。
***
それからおよそ一時間後。
グラスベルの魔法少女事務所に帰り着いたユニスとイルマは、その支部長室のデスクに座るレティシアの前に立っていた。
「──ってわけで、とんだ新人研修だった。えらい目に遭ったよ」
ユニスがすべての報告を終えると、その頃にはレティシアの顔は半笑いになっていた。
「……ごめんね、ユニスちゃん。その……ユニスちゃんを信じないわけじゃないんだけど、その報告をそのまま信じろと言われても、にわかには信じがたいわ」
「だろうな。オレも自分で見てなけりゃ信じられない自信あるわ」
「うぅん……でも、そうよね。その報告を信じないと──」
「そ。あいつの説明がつかない」
レティシアとユニスが、新人魔法少女イルマのほうを見る。
いや厳密には、イルマの横で彼女に抱きついているもう一人の少女、エルヴィラをだ。
「ねぇイルマお姉さま。どうしてこんな雑魚どもの言うことを聞いているんです? イルマお姉さまのほうがずっとずぅっと強いし素敵なのに」
「こらエルヴィラ、そういうこと言わないの! 先輩たちのことを悪く言ったら私、エルヴィラのこと嫌いになるよ。いいの?」
「すすすす、すみません! もう言いません! だから見捨てないでイルマお姉さま!」
「うん、いい子だね、よしよし。──ごめんなさいユニス先輩、レティシア先輩。この子、悪い子だけど、悪い子じゃないんです」
「「あはは……そ、そう」」
ユニスとレティシアは、引きつり笑いを浮かべるしかない。
その一方で、二人ともが抱いていたのは──
ああ、まったくとんでもない新人が来てしまったなぁという感想と。
これから賑やかになりそうだという、そこはかとない予感なのであった。
──そんなこんなで今日もまた、グラスベル地方の平和は守られた。
魔法少女たちは日夜、世界の平和を守るために戦い続けているのである。
しばらくの後。
イルマによる「調教」を受けた少女は、その「お姉さま」にしなだれかかるように寄り添いながら、うっとりとした顔になっていた。
イルマはその少女──エルヴィラの髪を、よしよしとなでる。
「うん。もう悪さはしないって誓うね?」
「お姉さまがそうしろとおっしゃるのなら!」
「じゃあそうしてね」
「はい!」
まるで見た目相応、本当の子供のように嬉しそうな顔で、元気よく返事をするエルヴィラ。
一方、その「調教」の一部始終を見ていたユニスは、顔を真っ赤にしてぺたんと地べたに座り込んでいた。
ユニスがこれまで見たこともない、まして体験したことなんてまったくない目くるめく世界が、今の今まで広がっていたのだ。
だがその一方。
ユニスに向かって、当の「調教」の施し主であるイルマが、伏し目がちになりながら後ろめたそうに報告をする。
「それで、ユニス先輩……その、終わりました、けど……」
「ひゃっ、ひゃいっ! じゃなかった……お、おう、そうか」
「あの、先輩……やっぱり、怒ってます?」
「……へ? 怒る? オレが怒るって、何を……」
そこまで言って、ユニスははたと思い至る。
雑魚とか、黙ってろとか、ユニスのことを蔑ろにしたこととか。
そういえば、散々に暴言を吐かれたのだったか。
それ以上に劇的な事態が起こりすぎてユニスの頭からはまるっきり抜けていたのだが、イルマの様子を見るにそれを気にしているとしか思えない。
今のイルマの姿はまるで、職場の先輩に怒られることを恐れて怯えている普通の後輩のようだ。
とんでもない力で、とんでもないことを為した怪物の態度ではない。
それを見たユニスは、ぷっと吹き出してしまう。
なんだそりゃ、と。
多分そう、イルマの中では同列なのだ。
世界の危機的事態と、職場の先輩との関係とが。
ということは、どうせ先の暴言も、何か考えあってのことなんだろう。
例えば、ユニスに嫌われれば、ユニスを巻き込まずに済むだろう──とか。
まったく、器用なんだか不器用なんだか。
「イルマ」
「は、はい!」
「お前、帰ったらみっちり説教な」
「ふぇぇっ……! で、でも分かりました! この不肖イルマ、密室でユニス先輩からみっちりと手取り足取り説教を受けます! なんなら今夜一晩中、先輩の部屋で過ごしても構いません!」
「お前ホントは反省してないだろ!? ガチで説教してやるからな!」
「えへへー。楽しみにしてます、先輩♪」
そう言って、にへらっと笑うイルマ。
その笑顔を見れば、ユニスも毒気が抜かれてしまう。
「まったく……とんでもない後輩を持っちまったな」
大きくため息をつくユニスであった。
***
それからおよそ一時間後。
グラスベルの魔法少女事務所に帰り着いたユニスとイルマは、その支部長室のデスクに座るレティシアの前に立っていた。
「──ってわけで、とんだ新人研修だった。えらい目に遭ったよ」
ユニスがすべての報告を終えると、その頃にはレティシアの顔は半笑いになっていた。
「……ごめんね、ユニスちゃん。その……ユニスちゃんを信じないわけじゃないんだけど、その報告をそのまま信じろと言われても、にわかには信じがたいわ」
「だろうな。オレも自分で見てなけりゃ信じられない自信あるわ」
「うぅん……でも、そうよね。その報告を信じないと──」
「そ。あいつの説明がつかない」
レティシアとユニスが、新人魔法少女イルマのほうを見る。
いや厳密には、イルマの横で彼女に抱きついているもう一人の少女、エルヴィラをだ。
「ねぇイルマお姉さま。どうしてこんな雑魚どもの言うことを聞いているんです? イルマお姉さまのほうがずっとずぅっと強いし素敵なのに」
「こらエルヴィラ、そういうこと言わないの! 先輩たちのことを悪く言ったら私、エルヴィラのこと嫌いになるよ。いいの?」
「すすすす、すみません! もう言いません! だから見捨てないでイルマお姉さま!」
「うん、いい子だね、よしよし。──ごめんなさいユニス先輩、レティシア先輩。この子、悪い子だけど、悪い子じゃないんです」
「「あはは……そ、そう」」
ユニスとレティシアは、引きつり笑いを浮かべるしかない。
その一方で、二人ともが抱いていたのは──
ああ、まったくとんでもない新人が来てしまったなぁという感想と。
これから賑やかになりそうだという、そこはかとない予感なのであった。
──そんなこんなで今日もまた、グラスベル地方の平和は守られた。
魔法少女たちは日夜、世界の平和を守るために戦い続けているのである。
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