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原作・悪役令嬢、現在・傍観主希望
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しおりを挟む妹が怖かった。
誰にでも愛される妹。誰にでも好かれる妹。
初恋の人は、妹に恋をしていた。
ユリアだって、いつ妹のことが好きになるかわからない。
不安と恐怖が常につきまとった。
アリスが、アダムに触れようとしたとき、アダムまで取られてしまうと思ってしまった。初恋の人も、お母さんもお父さんも妹に取られてしまったから、この子だけは取られたくなかった。
みゅぅ、と心配そうにアダムが鳴く。
「アダム……私とずっと一緒にいてくれるよね?」
震えたパートナーの声に、小さいながらも「ガゥッ!」と元気な声を上げるアダム。頭を擦り付けて、かぷかぷと柔い肌を甘噛みした。
「んっ、ふふっ、くすぐったいよ、アダム」
使われていない教室は少し誇りっぽい。忘れ去られた教室は、ヴィオラの隠れ場所だった。
教室を外から見ると絵画のかけられたただの壁だ。貴婦人が描かれた絵画を三回ノックすると、教室の扉が現れる仕掛けになっている。
「アダム、私のアダム、約束をしよう?」
このときの私は正気じゃなかった。
アダムを妹に取られてしまう恐怖に取り付かれていた。
「ずっと一緒にいれる、魔法があるの」
みゅう、と鳴いたアダムは翼を広げ、羽ばたきヴィオラの顔の前まで浮遊する。
「私の勝手よ。全部、弱い私が悪いの。――全てを統べる天、星を巡る神、血の契約を持って、永遠を誓おう」
水魔法でナイフを創造して、自身の手首を切りつける。深くナイフの通った手首から、深紅がぷつりと浮かんで床に落ちた。
「私は、ヴィオレティーナ・ナイトレイ」
「みぁ、がぁぅ、がうッ!」
拙い鳴き声に笑みが零れる。
昔、父の書庫で見つけた魔法だ。
お互いの命を共有する、禁忌の魔法。光が二人を包み込む。
「ヴィオレティーナ!!」
ユリアの泣いてしまいそうな歪んだ顔。
バツンッ、と。ヴィオラの意識をそこで途絶えた。
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