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編入生なんてシナリオイベントなかったわ。
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しおりを挟む改めて、考え直した。
目標は、長生きすること。そのためには、ヒロインたる妹と関わらない。第二に、攻略キャラたちと関わらない。
魔法薬の授業が行われる教室内は、奇妙なざわめきに包まれていた。
教壇に立つ教師でさえ、微妙な顔をしている。
一番前の机に座ったヴィオラは、目元を赤く染め、むすっとむくれた表情だ。いつもより雰囲気が刺々しく、話しかけるなオーラが滲み出ていた。
一方、一番後ろの机に座るユリアは左の頬に赤くモミジの後があり、つまらない顔で頬杖をついている。
どの授業でも隣通しで座り、セット感覚でいたふたりが離れて座っている、だと……!? クラスメイトたちにしてみれば前代未聞の事件である。
「あー……ミス・ナイトレイ、席を間違っていないかね?」
「魔法薬学の授業は自由席だと思っていたのですけれど、私の記憶違いでしょうか。それとも、意欲的な生徒を邪魔だと、先生は仰るのですか?」
「……かまわない。さて、授業を始めるとしよう」
尖った声に、早々に諦めた魔法薬学教授は疲れた声で開始の号令をした。
ペアとなって魔法薬を作るのだが、隣に座ったクラスメイトの少女は魔法薬学が苦手で有名だった。いつも先生に叱られては、萎縮してまた失敗しての繰り返し。
不安げに見上げてくるクラスメイトを安心させるように微笑んだ。
「な、ナイトレイさん、わたし、魔法薬作るの苦手で」
「大丈夫よ。順番に、ゆっくりやれば誰だってできるわ」
彼女の使い魔は二尾の子猫だ。人に懐くことはまずなく、気難しい気性の種族が、彼女の声に応えて使い魔になったのなら、なおさら魔法薬は学ばないといけない。
二尾の猫の特徴は薬草の嗅ぎ分けだ。人間にはわからない薬草を摘み取ってきてくれる。
「ゴードンさんが、魔法薬学の授業が終わったら、一生懸命ノートを書き直しているのを私は知っているわ。貴方は、先生がこわぁい顔をしているから手が震えちゃうだけなのよね」
「……それは、わたしが上手にできないから」
「違うわ。誰も最初から出来る人なんていないもの。……私の秘密を教えてあげる」
くりくりと丸い目を瞬かせたクラスメイトにこっそり耳打ちをする。
「私ね、去年の魔法薬学の授業で、生き薬を作らなきゃいけないのに枯れ薬を作ってしまったの」
えっ!? と大きな声を出しそうになった彼女はハッとして口を押さえた。大きな目に、ヴィオラが映りこむ。
植物に対して使う生き薬を作る授業で、工程を全て逆からやってしまい、正反対の植物を枯らす魔法薬を作ってしまったことがある。
さすがにそこまで間違ったことはない少女は目をぱちぱちさせて、優等生の彼女を見る。
「それにね、たくさんある授業の中で、魔法薬学が一番苦手なの」
「……うそ」
「本当よ。苦手だから、なおさら頑張ろうと思ったわ。今日作るのは、”幸運の飲み薬”よね。人一倍頑張り屋さんなゴードンさんなら、予習はすんでると私は思ったわ」
「今日、作るって知っていたから、昨日ノートにまとめたばかりなの」
じゃあそれを見ながらやりましょう! パチン、と両手を合わせたヴィオラに、彼女は憂いを払った表情で力強く頷いた。
その様子を、後ろの席からユリアがじっと見つめていた。
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