悪役令嬢は傍観に徹したい!

白霧雪。

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編入生なんてシナリオイベントなかったわ。

09

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 吸血鬼と言えば、ニンニクと十字架が苦手で、日光が天敵というのが主な伝承だ。ついでに付け足せば、棺桶で眠るくらい。

「――ふたりして、ナイショ話?」
「なんのことかな? って、その手に持ってるのって、ニンニク?」
「食堂で貰ってきたの。備えあれば憂いなし、でしょ」
「……くっさぁい」

 鼻をつまんだスヴェンに言葉がつまる。
 強烈なニンニクのにおいに、アダムにも距離を取られてしょんぼりした。

 スキップでもしそうな機嫌のよさに首を傾げる。
 直前まで、ユリアと話をしていたのは知っている。

 ユリアとは、気まずいままだ。
顔を合わせても一言二言会話をするくらい。雰囲気を感じ取ってか、ユリアが声をかけてこようとすればスヴェンが間に入ってくれる。
 ――これでいいんだ、と何度も自分自身に言い聞かせた。

 ユリアはメインの攻略キャラクターだ。
 不治の病に臥せった母を助けるために、運命の人(・・・・)を探している白雪の貴公子。
 寮は違えど、妹(ヒロイン)に運命を見出したユリアは冬の学園を舞台にシナリオが動き出す。
 ――悪役令嬢としての断罪イベントも、冬が舞台だ。

 ヴィオレティーナが深く関わってくるシナリオはジュキアとユリアのルートになる。
 ジュキアルートになってしまえば、ヴィオレティーナの闇落ちは確定だ。
 今のところ、ジュキアかクリスティアンと結ばれる可能性が高いが、行動をともにしなくなったユリアも最近妹と接触をしている、と同寮の女子が囁いていた。
 その話題になるたびに、彼女たちは伺う目線で見てくるのが煩わしかった。

「それ、どうするの?」
「今日一日持ち歩くのよ」
「えぇ……うっそぉ……」

 ありえないものを見る目で見られた。とてもショックだ。

「冗談に決まってるじゃない。そんな目で見ないでよ」

 茶化して笑ったその時――キャアァァ! と甲高い悲鳴が響き渡った。

「なに……」
「行ってみよう」

 手を引かれて、声のほうへ向かう。


 ざわめきと、焦燥が入り混じる。
 ひとつの教室の前に、人だかりが出来ていた。

「やっぱり……!」
「噂は本当なんだ」
「見ろよ、首のところ」

 たくさんの声がひしめき合い、生徒たちをすり抜けながら、一番前まで来た。

「――あれは」

 驚きに目を見張る。

 教壇の上に横たわった、星の寮の女生徒。青白い顔を横たえて、晒された首筋にはポツリと赤い二つの傷痕。

「吸血鬼だ!」

 誰かの声に、ざわめきが大きくなる。

「ニンニク、役立ちそうだね」

 スヴェンの声が、耳を通って頭に響く。

「……これは、」

 しゃがみこんで、伸ばした指先がきらりと光るモノを拾う。
 つるりとまぁるい鱗だった。

 第二の被害者は、星の寮の中等部三年生。すぐさま魔法病院へと運び込まれていった。
 この事件をきっかけに、学園全体に吸血鬼の噂が広まり、一人行動を慎むようにと御触れが出された。
 使い魔の残り香が、紫水晶の瞳にこびりついて離れない。
 最悪を想定して、ヴィオラは長く息を吐き出した。
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