28 / 46
課外授業にトラブルは付き物です。
01
しおりを挟む「ヴィオレティーナ、起きて、朝だよ。ほら、」
朝に弱いヴィオラを起こすのはスヴェンの特権だ。
ふかふかのベッドに埋もれて、ふわふわの黒髪が散っている。真っ白い肌と、艶やかな黒髪のコントラストが美しかった。
曝け出された首筋に、つい舌を這わせてしまうくらいには――
「ばか……こないだあげたばかり、じゃない」
寝起きの少しかすれた声。パカリと開いた口元を柔い手のひらで押さえられた。
「だって、起きないんだから仕方ないだろう? 据え膳食わぬはなんとやら、だよ」
「おきる……起きるわよ。今日は三時間目から授業じゃない。もうすこしくらい寝ててもいいはずよ」
「ヒトは三食しっかり食べないとすぐに身体を壊すじゃないか。早寝早起きは生活の基本だぞ」
「……スヴェン、あなた、吸血鬼なのに朝が得意なのね」
苦手は克服するものだよ、と眩しい笑顔で言われてしまった。
くるる、と喉を鳴らしながら枕元で丸くなっているアダムも飼い主に似て朝が苦手だ。
最近のアダムは、鱗の輝きも増し、食べる量も増えてきた。心なしか、体格も一回り大きくなっている気がする。
「アダム、起きて」
頭を撫でながら、声をかければ「ぐるぅ」と抗議の声を上げられてしまった。
「三時間目って、なんだったかしら」
「魔法薬学……じゃなくて、薬草学だね。箒必須だってさ」
箒必須ということは、野外活動だろう。
薬草学で学ぶのは基本的な薬草の見分け方や種類や効能だ。
上級生ともなれば、座学よりも野外講習の方が多くなってくる。魔法薬学で使う薬草の採取だったり、森の生態調査や、薬草畑の雑草抜きだったり。
箒を使うなら森に向かう可能性が高いだろう。
「ほら、前向いて」
ふわふわの黒髪は寝起きそのままにしておくといつのまにか絡んでしまっていることがある。
朝はたくさん寝たい。けど、朝の準備が人一倍かかる。魔法で櫛を動かすこともできるけど、やっぱり手でやったほうがふわふわさらさらになる。
そこで大きめの櫛を持ったスヴェンの登場だ。
化粧台の前にヴィオラを座らせて、一房一房丁寧に櫛を通していく。絡まったところは、決して引っ張らずに毛先から解いていくのだ。
他愛ない会話をしながら過ごす朝の優しい時間がスヴェンは好きだった。
まだ眠たいとぐずる少女の世話を焼きながら、時折細く白い指が化粧品選びで迷ったら代わりに選んであげる、この穏やかな時間が好きだった。
「うん、今日も可愛いよ、ヴィオレティーナ」
「……ありがとう。貴方も素敵よ、スヴェン」
0
あなたにおすすめの小説
初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました
山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。
だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。
なろうにも投稿しています。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】
いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。
陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々
だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い
何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~
八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。
しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。
それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。
幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。
それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。
そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。
婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。
彼女の計画、それは自らが代理母となること。
だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。
こうして始まったフローラの代理母としての生活。
しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。
さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。
ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。
※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります
※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる