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黒百合の魔女と、灰銀の弟子
しおりを挟む悪魔と人間の混血の子供がおりました。
薄汚い灰色の髪、血のように真っ赤な目。枯れ枝の如く細い手足。ボロ雑巾のような子供がおりました。
「――なぁに、わたくしの森にゴミを捨ててくなんて、怖いもの知らずもいるものねぇ」
美しい魔女がおりました。
黒百合のように美しい、森の魔女がおりました。
真っ黒いドレスを着た魔女は、とんがり帽子を押さえながらしゃがみこんで、ボロ雑巾のように転がる子供を見つめます。
子供の真っ赤な瞳と、魔女の空色の瞳がバチンッと合いました。
「おやまぁ、なるほど、ふむふむ」
ひとりで頷き、納得した魔女は爪先で子供をつまみあげました。
「放置するも、獣の餌にするも良いかしら」
アベル、と呼ばれた大きな狼がどこからともなく現れて、薄汚い子供を咥えました。
美しい魔女は、子供を拾うことにしたのです。
◇ ◇ ◇
美しい魔女さんの日常は、とても忙しいものとなりました。
ろくに読み書きのできない子供――アルフレッドと魔女は名付けました――に一から言葉を教え、魔法の基礎を教え、食べ物にトラウマがあるらしい子供・アルフレッドの食育をしたり、夜泣きが激しければ添い寝をしてあげるくらい、忙しい毎日でした。
気づけば、アルフレッドは成長し、子供から美しい青年へと育ち、子供から魔女の弟子となったのです。
◇ ◇ ◇
艶やかな黒髪が純白のベッドに散らばる。
空を閉じ込めた瞳を瞬かせた黒百合のように美しい魔女――リリーマリアは、自身に覆いかぶさる子供であり弟子である青年を見上げた。
「……アルフレッド、おなかでも空いたのかしら?」
「かあさん」
切ない声に、つい抱きしめてあげたくなる。
薄汚かった子供は、とても美しく成長した。
伸びた灰銀の髪をうなじでひとつに結び、透けるように赤い瞳はまるでルビーの宝石だ。
リリーマリアの腰よりも小さかった背は、逆に見上げなければ目を合わせることができなくなってしまった。
「かあさん、おれ、母さんを見ていると胸がぎゅんってして、下腹部が切なくなるんだ」
「……あらあらあら。それは、そうねぇ……うーん、町へ行きましょうか。町へ行けばそういうお店もあるし、貴方が気に入る娘も、」
「違うッ! おれは、母さんだから、母さんじゃなきゃいやだ」
おっと、不穏な空気だ。
もしかして、棚に置いてあった媚薬でも飲んでしまったかしら。そろ、と視線を棚のほうへずらす。
「こっち、見て」
「んッ!?」
それがいけなかった。
目元を赤らめ、噛み付くようなキスをされる。
「ん、んぅ、あ、アルッ、ふっ、んぁ、や、だめ、だめよっ」
上顎をなぞられると背筋が痺れた。
いつもなら首まで詰まった襟のドレスを着ているのに、今日に限って胸もとが大きく開いたドレスを着ていた。――選んだのは、アルフレッドだ。
まさか、という思いが浮かんですぐに打ち消す。可愛い可愛いアルフレッドがそんな下心に邪心溢れたことをするわけがない。
大きな手のひらが白く細い肩を撫で、胸もとを撫でていく。
ドレスの裾をたくし上げられ、太ももが露わになる。
かあさん、と呼ばれるたびに罪悪感が募っていく。
実の息子ではないにしろ、息子同然に育ててきた子供だ。性教育を後回しにしていたツケだろうか。それともそういう捻じ曲がった性癖に育ってしまったのだろうか。
いかんせん、後悔しても遅かった。
胸もとをブラジャーごとズリ下げられて、小さな顎、細い首筋を唇がたどり、胸の頂きにたどり着いてしまう。
熱い舌先が胸の先を転がし、悪戯に歯で食まれると言いようのない甘い痺れが下腹部に集まった。
切なくもどかしい快感に無意識のうちに腰が動いていた。
「かあさん、気持ちイ?」
「アル、アル……ッ!」
やめて、とめて、という声は聞きいれてもらえず、強すぎる快感に身をよじるしかなかった。
リリーマリアは、クリトリスが一等弱かった。
触ると、電撃が体中を走り、今は滅多にしなくなった自慰でも、触らないようにしていたくらい。
「や、やぁッ! ぁあ、やだ、アル、アルっ、やめて! ひぁあ、あ、あンッ、ん、ぐ、んん、ふあぁッ」
胸の先を口に含んで、左手でもう片方の乳首をつまみ、空いている手で慎ましやかなクリトリスをこねくり回す。
あられもない声が薄暗い室内に響いた。
夢中で胸もとにしゃぶりつくアルフレッドはまるで赤ちゃんみたいなのに全然可愛くない。
「んっ、んぁ、ぁ、あッ、い、イッちゃう……! イッちゃうからっ! もうだめ、だめ! あ、ァーッ!」
ビクンッ、と腰が跳ねて、甘い快感が全身にじんわりと広がる。
全身が汗だくだった。じっとりと黒髪を肌にはりつけ、火照った身体にキスをしていく。強く吸い付いて、痕を残す。独占欲の表れだった。
下穿きを性急に脱ぎ捨てると、ヘソまで反り返った太く大きな一物が表れる。
「ね、かあさん、入れてもいい?」
前戯は十分であった。
熱くとろけ、蜜をあふれ出すそこに先っぽをあてがわれる。
拒否するなんて無理だった。だって、魔女は快楽に弱いんだもの。
ぐぐ、と腰ごと押し込まれる。
広げられ押し進まれるナカに背中を逸らして耐え忍んだ。
こんなに大きいの初めてだ。圧迫されて、息が止まる。
「ッ、ふ、」
「ひぁあッ!?」
奥の奥まで、入っちゃいけないところまで入ってきそう。
コツン、と奥底を突かれるたびに嬌声が溢れ出た。
ずちゅ、ずちゅ、と律動するたびに淫猥な水音がして、音で犯されているようだった。
◇ ◇ ◇
腕の中で眠る母にホッと息を吐き出す。
よかった、拒絶されなかった。
老いることのない美しい母を、誰にもあげたくなかった。腕の中に閉じ込めて、ずっとずっと一緒にいたかったのだ。
垂れ下がった目尻の柔らかな顔立ちをした美しい母。ぬばたまの髪と、漆黒のドレスは肌の白さを際立たせる。
空を閉じ込めた瞳は甘い感情を秘めてアルフレッドを映し出す。
森を出て、街へ行けば美しい母は注目の的だった。
全身を嘗め回す不躾な視線、下心に溢れた表情、あわよくば手篭めにしようとする薄汚い男たち。
恋人を作ることに興味もあったが、なによりも第一優先は母だった。
長い時を生きてきているはずなのに、ほとんどを森に引きこもっていた母はとても世間知らずで、捨て子だったアルフレッドのほうが知っていることもあった。
母に、リリーマリアに拾われたときは食われると思った。だって、大人よりも大きな狼に咥えられるんだ。食べられないと思うほうが無理である。
「母さん……リリー、マリア。好き、好きだよ、愛してる」
目尻に滲んだ涙を舌先で掬って、頬にキスをする。
母であり、姉であり、師である美しい魔女を愛してしまった。
何もかもを、彼女の全てを独り占めしたい。
縛って、縋って、泣きつかないと、きっとリリーマリアはいなくなっていた。
「そろそろ独り立ちだね」と笑う彼女が憎かった。
「愛してるんだ……愛して、しまったんだよ」
震えた声は今にも泣き出しそうで、薄らと目蓋を持ち上げたリリーマリアはさらさらと流れる灰銀の頭を柔く撫でた。
「いつまでも、甘えっこで仕方ない子ねぇ」
「――母さん」
「そうよぉ。わたくしは、アルフレッドの母で、姉で、師で――他人なの」
仕方ない子、と頭を撫でて、顔を引き寄せる。
「可哀想に。魔女に心を囚われてしまったのね。――それを、わたくしは解放してあげることはできないの」
「どういう、」
「魔女に囚われたヒトは、ずっと魔女と共にあるということよ」
額に、まぶたに、頬に、唇にキスを落とした。慈愛に溢れた空色の瞳に、涙がこぼれた。
かあさん、と呼んだ声は夜の闇に解けていった。
― 了 ―
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