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ほんへ
第7話:忘却は蘇り、己の世界は戻る。
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繋くん目線は脳死して見るものですね間違いない。
______
……——
士官らしき男と多くの兵士らしき男たちが詰め込まれた少し大きなテント内。そのむさ苦しい場所には、外から聞こえる聞いたこともない大きなシャフトの回転音だけが、ひたすらに低く共鳴していた。
「…………」
そんな中、その場にいる全員は皆一様に静寂を保っている。緊張した様子で、まるで“何か”を待っているような——その時。
「——ッ!!」
彼らからして右方向か、突如として大きな爆発音が発生する。音の大きさから見るに、かなり近くで発生したようだ。真剣な眼差しで、一同は息を飲む。
……が、いくら待てども爆発が再来する気配はない。
「……様子がおかしいですね」
体感数秒ほどか、ある一人の兵士らしき男が不審に思うかのような口調で、静寂を破った。その腕にはボルトが引き下げられ、発射準備の整っているのであろうことが伺えるSten Gunのようなものが握られている。
「……油断するな。今ここで我々がテントに隠れていることが知られれば……」
士官らしき男は小さな声で、兵士らしき男にそう忠告する。彼らの目的がバレてしまえば、蹂躙されているのは見えているのだ。
……だが、先ほどの爆発音が『想像通り』であれば、どうやら判断は正しかったか。彼らの見た航空機のような“ナニカ”は、少なくとも味方ではないことになる。何せ、『連絡を何も寄越さず、突如として味方を攻撃する』ような軍はこの世に存在しないのだ。そんなことをするのは、精々味方に偽装した敵や、味方との連絡不足の末に発生する事例くらいで、加えてしまえばその可能性も今や存在しないに等しい。
「……あと、20秒」
士官らしき男が腕に巻いた腕時計を見てそう呟くと、それを聞いた周りの兵士らしき男達の表情が一気に引き締まる。
士官らしき男は体の後ろに手を伸ばし、ホルスターの中から一丁のエンフィールド・リボルバーらしきものを取り出す。
「……今だッ!!」
士官らしき男がそう叫ぶと同時に、テントの外へと繋がる布切れが勢い良く開かれた。
——……
「……あれ? 何も起こらないな?」
そのほんの少し前。繋は、操縦桿片手に“街のようなもの”を見つめつつ、そう呟いていた。その顔は至って平然としており、先ほどの行動に対する、何かこれといった感情らしきものは感じ取れない。
「中にいるのが動物か人なら確実に出てくると思ったんだけどなぁ……」
しょんぼりした顔でそう呟く。
『一応もう一回射撃して反応がなければ降りようかな』なんて思って、火に油を注ぐとかそんな言葉を彷彿させるような半ば満面の笑みで30mm機関砲の発射スイッチに手を載せるのだが……
「あっ! テントが——」
繋はそれを見て、思わず声を上げる。先ほどなんの音沙汰もなかったテント。その扉の役割をしているのであろう布が、いきなり開かれたのだ。そして、その次には……。
「って、おわぁっ!?」
間髪入れず、乾いた銃声音が次々と防弾ガラス越しに機内に伝わり、それと共に金属の衝突音が機内を包むかのように、低く反響する。
それが何を意味するか、瞬時に察知した繋は脊椎反射的に操縦桿を後ろに引く。機首が上を向いて後退する中、テントからクソほど湧き出る明らかに『私兵士です』と言わんばかりのカーキ色の見た目をした男たちが視界の端に一瞬入る……が、そんなの関係ねぇ! 今はここから距離を取るのが先だ先!
「やばいやばいやばい!!流石に銃はまずいでしょ!!」
悲鳴にも似た声で叫ぶものの、『全部お前のせいだろ』と言わんばかりの返答が機内に幾度となく鳴り響く。
「……はぁ、はぁ」
間一髪、か。繋を乗せた『Ka-50』は“街のようなもの”から距離を十分に取る。射程距離の限界なのか、射撃音は現在も継続して聞こえるものの、着弾音らしきものが聞こえることはない。ホッとした表情で操縦桿をゆっくりと前に倒してホバリングに移行する。
「ま、まぁ……いきなり機関砲を撃つのはあれかもしれないけど……」
防弾ガラスにいくつか刻まれた弾痕を見て、少し溜め……
「流石に銃はダメじゃない!?」
どっちもどっちだろとかそんな声が散々聞こえて来そうなものだが……ま、まぁあの時はあれくらいしか安全を確認する方法がなかったんです!た、単純に感情に流されたとかそんなことは(ブツブツ)……と、とりあえず、仕方ないね!!!
「って、そうだ! 機体の被害は……」
繋はハッとした表情で、『Ka-50』の被害状況を確認する。先ほどは少なく無い数ノックされていたのである程度の被害は覚悟しなければならないだろう。
と、踏んでいたのだが……
「被害は……特になし?」
念のため機器類に異常がないかチェックするが、特にこれと言った異常は見当たらない。どうやら、本当に被害らしい被害は無いようだ。……防弾ガラスの破損?それは被害ではありません!(大本営発表)
果たして敵の使用した銃の威力が低かったのか、はたまた当たりどころが良かっただけなのかはわからないが、先ほどの攻撃で被害が無かったことは不幸中の幸いだった。流石ロシア製ガチムチ攻撃ヘリ! 民間ヘリじゃ死んでいたね!
「いやぁ……少し驚きはしたけど」
明らかにパニクっていた様子が脳内で再生されようとするが、即座に中止。無かった事としてとして揉み消す。
「目には目を、歯には歯を、銃撃には銃撃をって感じで……」
おい、待て。また同じ轍を踏むつもり……
(“正当防衛”だし許されるよね!)
え?“正当防衛”?あっ、じゃぁ
「仕方ないね♂」
繋はその言葉と共に、『お返しだよ♡』とか言いたげな様相で、30mm機関砲の発射スイッチを力強く押し込んだ。
——……
兵士らしき男たちが、各々の持つSten Gunらしきものを『敵』に向けてトリガーを引き、その度に幾度となく乾いた銃撃音が周囲一帯に響く。排莢口から排出された空薬莢が宙を舞い、地面へと堕ちる。時折、『リロード!』の掛け声と共に射撃が中断するが、それもすぐに元通り。継続した火力投射が続けられる。
「……待て! 射撃中止!」
が、士官らしき男がエンフィールド・リボルバーらしきもののリロードをしつつ、そう声を上げた。少しのタイムラグと共に射撃が止んだ。
「流石に射程外か……せめてライフルさえあれば」
士官らしき男は、何事も無かったかのように平然と垂直飛行を続ける、航空機のような“ナニカ”を一瞥して、そう呟く。
と言うのも、彼ら『23rd E.P.U』は、あくまでも後方部隊。基本ゲリラやパルチザンと言った武装集団との戦闘を想定した近接特化の装備しか配備されておらず、取り回しが悪いものの、遠距離の相手に有効打が与えられるライフルが今このタイミングで無い事が悔やまれる。
だがそもそもの話、完璧とは言えない奇襲ではあったものの、多数の命中弾を与えたはずにも関わらず墜ちる気配すら見せないあの航空機のような“ナニカ”の耐久性は異常。並大抵のものではないな、なんて考えも頭の中には浮いていた。
『さて、どうするか』なんて言いかけた、その時だった。
「敵、発ぽ——」
誰だかわからないが、その声と共に発生したいくつもの大きな連続した発砲音と共に、爆発や破片、爆発により舞い上がった土砂が彼らを襲う。士官らしき男は、無意識に近くに形成された手頃なクレーターへと飛び込む。
「な、何がッ!?」
士官らしき男が、頭を抱えて驚きのあまりに上げたその声も、何度も何度も繰り返し発生する爆発音に掻き消された。熾烈さのあまりその場から動くことすら能わず、その状況把握を著しく阻害する。
ただ、その爆発の合間でわずかに耳で聞き取れる『痛いッ!! 痛いッ!!』だとか、『目がぁぁっ!!』などと言った悲鳴が、その被害を容易く想像させた。
しばらくして、まるで嵐のように吹き荒れた爆発が何の前触れもなく止んだ。士官らしき男は恐る恐る頭を上げ、周囲を確認する。
「……な、なんてことだ」
その視界に入り込んだのは、一般人目線では『この世ならざる景色』。そして、彼らにとって本来『する側』であるはずの、『見慣れた光景』。
道端には何やら得体の知れない“肉のような何かに、布切れ”。辛うじて原型を留めた者に、四肢を失った者と言った者が無造作に転がっている、と言う現実。彼らの所有物であるトラックやその周辺には深い弾痕がいくつも刻まれ、あるトラックはエンジンから炎が盛大に吹き出し、その熱が離れていても尚、肌で感じる。
耳には、うめき声や火の燃える音。遠くからは、低くシャフトの回転音が入り込む。
嗅覚を刺激するような、硝煙や血肉の焼け焦げたかのような匂い。
そして、巻き上がった少々の土煙の間からかすかに見える、航空機のような“ナニカ”。
「……そう、か」
まるで諦めきったかのような表情で、そう一言。
彼はこの時点で、今現在あるどのような手段を以ってしても、あれが“撃破”出来る事は能わない……そう感じていた。
何せ、彼らは奇襲のつもりで攻撃したにも関わらず、結果はこのザマなのだ。相手に被害らしきものは見れず、逆にこちらには甚大な被害。それに、彼我の距離からして見れば、こちらから反撃する事は出来ず、逆に相手はいつでもこちらを蹂躙できる……生殺与奪を握られた状況。
その時、彼の脳内に変化が訪れた。
——それは、『開放感』。
「…………私は」
さも別人かのような口調で、ただ一人そう呟いた。右手で強く握りしめていたエンフィールド・リボルバーらしきものが、腕から力なくポトリと落ちる。
「……嫌だ」
彼の何がそう思わせたか、突如、どこか深い憎しみを交えたかのような口調で、そう叫ぶ。
「私は……死にたくないッ!!!」
刹那、航空機のような“ナニカ”から、光の槍のようなものが発射された。それも、まるで連射するかのように、連続して。それら全てが一様に、まるで流星のように弧を描いてこちらへと飛翔する。
「……に、逃げ、逃げなければッ……!!」
“流星”の向かう向きとは反対へと一心不乱に走る。遅れて発生する、幾重もの爆発。それら全てが先ほどとは比べ物にはならない威力である事は、その衝撃波、そして音で、後ろを振り向くまでもなく想像できた。
「うぁっ!!」
“流星”の一つが、彼にそう近くない場所に着弾。その衝撃波で前方へと吹き飛ばされる。頭から地面に突っ込み、全身を強打。加えて……
「あ、足が……足がぁぁぁァァァッ!!!」
太ももから下が無くなり、勢い良く血を吹き出すその右足を抱えてひたすらに悲痛な叫びを上げる。そこに先ほどまでの威勢はなく、ただ死を恐れていた。それはさも、戦争に行く覚悟がない人間……非戦闘員のように。
激痛に苛まれて意識が朦朧としゆく中、彼ははっきりと、思い出す。
「そ、そうだ……」
“記憶”を。
「私たちは……私たちは、“奴”に——」
無情にも彼の意識は、大きな爆発と共にそこで途絶えた。
—
——
—……
【J mjejzkno yd mjv ykn cadqgnf. Ore J torch jy?】
【RH,ed cadqgnf. Cgnrzn od jy.】
……—
——
—
______
さて、初めての戦闘回でしたが、如何でしたか?……え?生々しい?お前頭おかしい?……そうです。その通り!
これからもこの調子で、変な戦闘描写にギャグもどきとシリアスもどきが入り混じるカオス、そして空を飛び交うパンジャンドラム(大嘘?さて、それはどうかな……)をお届けいたしますので、どうぞ乞うご期待ください。
さて、話は変わりまして。数日前、ツイッターや近況報告でも報告しましたが、登場兵器等に関するアンケートを新設しました。気が向いたらアンケートに回答したりして頂けると嬉しいです!!!!!!!!!!
アンケート:https://forms.gle/DG6e7KpQ6UPqUhiF7
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……——
士官らしき男と多くの兵士らしき男たちが詰め込まれた少し大きなテント内。そのむさ苦しい場所には、外から聞こえる聞いたこともない大きなシャフトの回転音だけが、ひたすらに低く共鳴していた。
「…………」
そんな中、その場にいる全員は皆一様に静寂を保っている。緊張した様子で、まるで“何か”を待っているような——その時。
「——ッ!!」
彼らからして右方向か、突如として大きな爆発音が発生する。音の大きさから見るに、かなり近くで発生したようだ。真剣な眼差しで、一同は息を飲む。
……が、いくら待てども爆発が再来する気配はない。
「……様子がおかしいですね」
体感数秒ほどか、ある一人の兵士らしき男が不審に思うかのような口調で、静寂を破った。その腕にはボルトが引き下げられ、発射準備の整っているのであろうことが伺えるSten Gunのようなものが握られている。
「……油断するな。今ここで我々がテントに隠れていることが知られれば……」
士官らしき男は小さな声で、兵士らしき男にそう忠告する。彼らの目的がバレてしまえば、蹂躙されているのは見えているのだ。
……だが、先ほどの爆発音が『想像通り』であれば、どうやら判断は正しかったか。彼らの見た航空機のような“ナニカ”は、少なくとも味方ではないことになる。何せ、『連絡を何も寄越さず、突如として味方を攻撃する』ような軍はこの世に存在しないのだ。そんなことをするのは、精々味方に偽装した敵や、味方との連絡不足の末に発生する事例くらいで、加えてしまえばその可能性も今や存在しないに等しい。
「……あと、20秒」
士官らしき男が腕に巻いた腕時計を見てそう呟くと、それを聞いた周りの兵士らしき男達の表情が一気に引き締まる。
士官らしき男は体の後ろに手を伸ばし、ホルスターの中から一丁のエンフィールド・リボルバーらしきものを取り出す。
「……今だッ!!」
士官らしき男がそう叫ぶと同時に、テントの外へと繋がる布切れが勢い良く開かれた。
——……
「……あれ? 何も起こらないな?」
そのほんの少し前。繋は、操縦桿片手に“街のようなもの”を見つめつつ、そう呟いていた。その顔は至って平然としており、先ほどの行動に対する、何かこれといった感情らしきものは感じ取れない。
「中にいるのが動物か人なら確実に出てくると思ったんだけどなぁ……」
しょんぼりした顔でそう呟く。
『一応もう一回射撃して反応がなければ降りようかな』なんて思って、火に油を注ぐとかそんな言葉を彷彿させるような半ば満面の笑みで30mm機関砲の発射スイッチに手を載せるのだが……
「あっ! テントが——」
繋はそれを見て、思わず声を上げる。先ほどなんの音沙汰もなかったテント。その扉の役割をしているのであろう布が、いきなり開かれたのだ。そして、その次には……。
「って、おわぁっ!?」
間髪入れず、乾いた銃声音が次々と防弾ガラス越しに機内に伝わり、それと共に金属の衝突音が機内を包むかのように、低く反響する。
それが何を意味するか、瞬時に察知した繋は脊椎反射的に操縦桿を後ろに引く。機首が上を向いて後退する中、テントからクソほど湧き出る明らかに『私兵士です』と言わんばかりのカーキ色の見た目をした男たちが視界の端に一瞬入る……が、そんなの関係ねぇ! 今はここから距離を取るのが先だ先!
「やばいやばいやばい!!流石に銃はまずいでしょ!!」
悲鳴にも似た声で叫ぶものの、『全部お前のせいだろ』と言わんばかりの返答が機内に幾度となく鳴り響く。
「……はぁ、はぁ」
間一髪、か。繋を乗せた『Ka-50』は“街のようなもの”から距離を十分に取る。射程距離の限界なのか、射撃音は現在も継続して聞こえるものの、着弾音らしきものが聞こえることはない。ホッとした表情で操縦桿をゆっくりと前に倒してホバリングに移行する。
「ま、まぁ……いきなり機関砲を撃つのはあれかもしれないけど……」
防弾ガラスにいくつか刻まれた弾痕を見て、少し溜め……
「流石に銃はダメじゃない!?」
どっちもどっちだろとかそんな声が散々聞こえて来そうなものだが……ま、まぁあの時はあれくらいしか安全を確認する方法がなかったんです!た、単純に感情に流されたとかそんなことは(ブツブツ)……と、とりあえず、仕方ないね!!!
「って、そうだ! 機体の被害は……」
繋はハッとした表情で、『Ka-50』の被害状況を確認する。先ほどは少なく無い数ノックされていたのである程度の被害は覚悟しなければならないだろう。
と、踏んでいたのだが……
「被害は……特になし?」
念のため機器類に異常がないかチェックするが、特にこれと言った異常は見当たらない。どうやら、本当に被害らしい被害は無いようだ。……防弾ガラスの破損?それは被害ではありません!(大本営発表)
果たして敵の使用した銃の威力が低かったのか、はたまた当たりどころが良かっただけなのかはわからないが、先ほどの攻撃で被害が無かったことは不幸中の幸いだった。流石ロシア製ガチムチ攻撃ヘリ! 民間ヘリじゃ死んでいたね!
「いやぁ……少し驚きはしたけど」
明らかにパニクっていた様子が脳内で再生されようとするが、即座に中止。無かった事としてとして揉み消す。
「目には目を、歯には歯を、銃撃には銃撃をって感じで……」
おい、待て。また同じ轍を踏むつもり……
(“正当防衛”だし許されるよね!)
え?“正当防衛”?あっ、じゃぁ
「仕方ないね♂」
繋はその言葉と共に、『お返しだよ♡』とか言いたげな様相で、30mm機関砲の発射スイッチを力強く押し込んだ。
——……
兵士らしき男たちが、各々の持つSten Gunらしきものを『敵』に向けてトリガーを引き、その度に幾度となく乾いた銃撃音が周囲一帯に響く。排莢口から排出された空薬莢が宙を舞い、地面へと堕ちる。時折、『リロード!』の掛け声と共に射撃が中断するが、それもすぐに元通り。継続した火力投射が続けられる。
「……待て! 射撃中止!」
が、士官らしき男がエンフィールド・リボルバーらしきもののリロードをしつつ、そう声を上げた。少しのタイムラグと共に射撃が止んだ。
「流石に射程外か……せめてライフルさえあれば」
士官らしき男は、何事も無かったかのように平然と垂直飛行を続ける、航空機のような“ナニカ”を一瞥して、そう呟く。
と言うのも、彼ら『23rd E.P.U』は、あくまでも後方部隊。基本ゲリラやパルチザンと言った武装集団との戦闘を想定した近接特化の装備しか配備されておらず、取り回しが悪いものの、遠距離の相手に有効打が与えられるライフルが今このタイミングで無い事が悔やまれる。
だがそもそもの話、完璧とは言えない奇襲ではあったものの、多数の命中弾を与えたはずにも関わらず墜ちる気配すら見せないあの航空機のような“ナニカ”の耐久性は異常。並大抵のものではないな、なんて考えも頭の中には浮いていた。
『さて、どうするか』なんて言いかけた、その時だった。
「敵、発ぽ——」
誰だかわからないが、その声と共に発生したいくつもの大きな連続した発砲音と共に、爆発や破片、爆発により舞い上がった土砂が彼らを襲う。士官らしき男は、無意識に近くに形成された手頃なクレーターへと飛び込む。
「な、何がッ!?」
士官らしき男が、頭を抱えて驚きのあまりに上げたその声も、何度も何度も繰り返し発生する爆発音に掻き消された。熾烈さのあまりその場から動くことすら能わず、その状況把握を著しく阻害する。
ただ、その爆発の合間でわずかに耳で聞き取れる『痛いッ!! 痛いッ!!』だとか、『目がぁぁっ!!』などと言った悲鳴が、その被害を容易く想像させた。
しばらくして、まるで嵐のように吹き荒れた爆発が何の前触れもなく止んだ。士官らしき男は恐る恐る頭を上げ、周囲を確認する。
「……な、なんてことだ」
その視界に入り込んだのは、一般人目線では『この世ならざる景色』。そして、彼らにとって本来『する側』であるはずの、『見慣れた光景』。
道端には何やら得体の知れない“肉のような何かに、布切れ”。辛うじて原型を留めた者に、四肢を失った者と言った者が無造作に転がっている、と言う現実。彼らの所有物であるトラックやその周辺には深い弾痕がいくつも刻まれ、あるトラックはエンジンから炎が盛大に吹き出し、その熱が離れていても尚、肌で感じる。
耳には、うめき声や火の燃える音。遠くからは、低くシャフトの回転音が入り込む。
嗅覚を刺激するような、硝煙や血肉の焼け焦げたかのような匂い。
そして、巻き上がった少々の土煙の間からかすかに見える、航空機のような“ナニカ”。
「……そう、か」
まるで諦めきったかのような表情で、そう一言。
彼はこの時点で、今現在あるどのような手段を以ってしても、あれが“撃破”出来る事は能わない……そう感じていた。
何せ、彼らは奇襲のつもりで攻撃したにも関わらず、結果はこのザマなのだ。相手に被害らしきものは見れず、逆にこちらには甚大な被害。それに、彼我の距離からして見れば、こちらから反撃する事は出来ず、逆に相手はいつでもこちらを蹂躙できる……生殺与奪を握られた状況。
その時、彼の脳内に変化が訪れた。
——それは、『開放感』。
「…………私は」
さも別人かのような口調で、ただ一人そう呟いた。右手で強く握りしめていたエンフィールド・リボルバーらしきものが、腕から力なくポトリと落ちる。
「……嫌だ」
彼の何がそう思わせたか、突如、どこか深い憎しみを交えたかのような口調で、そう叫ぶ。
「私は……死にたくないッ!!!」
刹那、航空機のような“ナニカ”から、光の槍のようなものが発射された。それも、まるで連射するかのように、連続して。それら全てが一様に、まるで流星のように弧を描いてこちらへと飛翔する。
「……に、逃げ、逃げなければッ……!!」
“流星”の向かう向きとは反対へと一心不乱に走る。遅れて発生する、幾重もの爆発。それら全てが先ほどとは比べ物にはならない威力である事は、その衝撃波、そして音で、後ろを振り向くまでもなく想像できた。
「うぁっ!!」
“流星”の一つが、彼にそう近くない場所に着弾。その衝撃波で前方へと吹き飛ばされる。頭から地面に突っ込み、全身を強打。加えて……
「あ、足が……足がぁぁぁァァァッ!!!」
太ももから下が無くなり、勢い良く血を吹き出すその右足を抱えてひたすらに悲痛な叫びを上げる。そこに先ほどまでの威勢はなく、ただ死を恐れていた。それはさも、戦争に行く覚悟がない人間……非戦闘員のように。
激痛に苛まれて意識が朦朧としゆく中、彼ははっきりと、思い出す。
「そ、そうだ……」
“記憶”を。
「私たちは……私たちは、“奴”に——」
無情にも彼の意識は、大きな爆発と共にそこで途絶えた。
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【J mjejzkno yd mjv ykn cadqgnf. Ore J torch jy?】
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……—
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さて、初めての戦闘回でしたが、如何でしたか?……え?生々しい?お前頭おかしい?……そうです。その通り!
これからもこの調子で、変な戦闘描写にギャグもどきとシリアスもどきが入り混じるカオス、そして空を飛び交うパンジャンドラム(大嘘?さて、それはどうかな……)をお届けいたしますので、どうぞ乞うご期待ください。
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