大人向け童話、児童文学集

toku

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先延ばし太郎

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 あるところに『先延ばし太郎』と周りから呼ばれている者がいました。
 何でも、しなければならない物事を『先延ばし』してしまうのです。

 何もかも『先延ばし』にして、後でひぃひぃ言いながら急いでやる。
 間に合わないときと、間に合うときがありますが、年を重ねていくにつれ、だんだん『間に合わない場合』が増えていきました。

 ある日のときです。
 先延ばし太郎が、部屋で倒れているところを近所の人が発見しました。

 近所の人が慌てて近づいて、
「おい、大丈夫か!?」
 声をかけると、先延ばし太郎はうんと頷きました。
「大丈夫……」

「今、お医者さんを呼ぶからな!」
 しかし先延ばし太郎は首を横に振りました。
「呼ばなくても……良い……」

「何故だ?」
 驚いて近所の人が聞き返すと、先延ばし太郎は微笑んで、
「もう、先延ばし、しなくて済むから……」

「えっ!?」
「死んだら……もう、先延ばしすることもない……」

 先延ばし太郎は、先延ばしをしてしまう自分に罪悪感を持って、これまで生きてきたのでした。
 それでも先延ばししてしまうのですが。

 だから倒れた際、このままもう死んでも良いと思ったのです。
 自分に嫌気がさしていたので、お医者さんに診てもらうことで死ぬことを先延ばしにする必要はないと思ったのでした。

 しかし、
「何弱気なこと言ってんだ、頑張れ! きっと助かるぞ!」
 近所の人は、先延ばし太郎を励ましました。


 ――

 その後、先延ばし太郎はお医者さんによって、命を助けられました。

 命を救われた先延ばし太郎は、今回のことで、自分が思っている以上に自分の『先延ばし癖』を憎んでいると分かったので、今までよりももっと先延ばししないで済む方法について真剣に考えました。

 一人でいると先延ばししてしまうと考え、周りの人に監視してもらうなど、人に協力してもらうことにしました。

 先延ばし太郎は、今でも先延ばしをしますが、これまでよりは致命的な先延ばしが少なくなりました。

 これならば、以前のように倒れても、
『自分の死は先延ばしにしなくても良い』
 と言う悲しいことはきっと言わないでしょう……



 ――終――
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