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となりの部屋の、楽しそうな声
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ママに怒られて、なっちゃんは独りぼっちで部屋で泣いていました。
すると、となりの部屋から楽しそうな声が聞こえてきました。
パパと妹たちがおしゃべりをしているのです。
なっちゃんは思いました。
(ムカつく!)
なっちゃんがママに怒られたのは、なっちゃんが妹とケンカしたからでした。
なっちゃんは自分ももちろん悪いけれど、妹にも悪いところがあると思っていました。
なのに、なっちゃんは泣いて、ひとりぼっち、部屋にいるのに、妹は楽しそうにパパとおしゃべりをしているのです。
なっちゃんはすごくイライラしました。
そして
『ドン!』
思わず、壁を叩いてしまいました。
「なっちゃん!」
パパの驚いた声が聞こえてきました。
それからパパとママが部屋にやってきて、
「なっちゃん。
壁を叩いちゃダメでしょ!」
「わーっ」
パパとママに真剣な声で言われて、なっちゃんは大きな声をあげて泣き始めました。
壁を叩くのは悪いことです――なっちゃんにもわかっていました。
皆をビックリさせるし、『ドン』と言う大きな音は怖いでしょう……
でもなっちゃんは妹たちの『楽しそうなおしゃべり』にとても腹を立てました。
それはなっちゃんの気持ちをとても『害した』のです。
だからこそなっちゃんは壁を叩いたのです。
その結果、妹がビックリして、怖がったとしても、『お互いさま』なのではないかと思いました。
なのに、今、なっちゃんだけが怒られているのです……
どうして同じく、『人を傷つけるもの』なのに、『壁をたたくこと』は怒られて、『楽しそうなおしゃべり』は怒られないの?
なっちゃんは泣きながら、そんなことを考えました。
――
なっちゃんが泣き止むと、パパとママはなっちゃんに謝りました。
「パパも悪かったよ。
なっちゃんが一人で部屋で落ち込んでいることを知っていたのに、あーちゃんと楽しそうにしゃべっていて、なっちゃんはそれがつらかったんだね」
「ママも、もっとなっちゃんのこと、気にかけて、一緒にいてあげなきゃダメだったね」
なっちゃんは嬉しくなって、泣きながら『コクリ』と頷きました。
「でも」
パパが言いました。
「なっちゃん、壁は叩いてはいけないよ」
「うん」
泣き止んだなっちゃんは素直に頷きました。
なっちゃんはそれから考えてみました。
何故、同じように人を傷つける行為かもしれなくても、『壁を叩く』のはダメで『楽しそうにおしゃべりをする』のは良いのか。
『悪意』があるかどうかかな、と思いました。
『壁を叩く』のは、『こちらがムカついていることを知らせてやる』と言う気持ちで叩いています。
でも『楽しそうなおしゃべり』には、そのつもりがないのではないでしょうか……
他にも理由があるのかもしれません。
『壁を叩くこと』は、もしかすると壁を壊してしまうかも知れない。
なっちゃんの怒りとは何も関係ない人――例えばお隣さん――にまで迷惑をかけてしまうかもしれない……など。
なっちゃんは『壁を叩くのはもうやめよう』と思いました。
それから『楽しそうなおしゃべり』について考えました。
『楽しそうなおしゃべり』に傷つく場合も、もちろんあります。
しかし誰かが傷ついていることに気付かず、自分もしてしまう場合もいっぱいあるだろうと思いました。
『楽しそうなおしゃべり』自体はきっと何も悪くないのです……
それを聞く人の考え方、感じ方で、印象が変わるのでしょう……
なっちゃんは人の気持ちは難しいな、と思いました。
自分の気持ちだけでも、とても難しいのです……
――終――
すると、となりの部屋から楽しそうな声が聞こえてきました。
パパと妹たちがおしゃべりをしているのです。
なっちゃんは思いました。
(ムカつく!)
なっちゃんがママに怒られたのは、なっちゃんが妹とケンカしたからでした。
なっちゃんは自分ももちろん悪いけれど、妹にも悪いところがあると思っていました。
なのに、なっちゃんは泣いて、ひとりぼっち、部屋にいるのに、妹は楽しそうにパパとおしゃべりをしているのです。
なっちゃんはすごくイライラしました。
そして
『ドン!』
思わず、壁を叩いてしまいました。
「なっちゃん!」
パパの驚いた声が聞こえてきました。
それからパパとママが部屋にやってきて、
「なっちゃん。
壁を叩いちゃダメでしょ!」
「わーっ」
パパとママに真剣な声で言われて、なっちゃんは大きな声をあげて泣き始めました。
壁を叩くのは悪いことです――なっちゃんにもわかっていました。
皆をビックリさせるし、『ドン』と言う大きな音は怖いでしょう……
でもなっちゃんは妹たちの『楽しそうなおしゃべり』にとても腹を立てました。
それはなっちゃんの気持ちをとても『害した』のです。
だからこそなっちゃんは壁を叩いたのです。
その結果、妹がビックリして、怖がったとしても、『お互いさま』なのではないかと思いました。
なのに、今、なっちゃんだけが怒られているのです……
どうして同じく、『人を傷つけるもの』なのに、『壁をたたくこと』は怒られて、『楽しそうなおしゃべり』は怒られないの?
なっちゃんは泣きながら、そんなことを考えました。
――
なっちゃんが泣き止むと、パパとママはなっちゃんに謝りました。
「パパも悪かったよ。
なっちゃんが一人で部屋で落ち込んでいることを知っていたのに、あーちゃんと楽しそうにしゃべっていて、なっちゃんはそれがつらかったんだね」
「ママも、もっとなっちゃんのこと、気にかけて、一緒にいてあげなきゃダメだったね」
なっちゃんは嬉しくなって、泣きながら『コクリ』と頷きました。
「でも」
パパが言いました。
「なっちゃん、壁は叩いてはいけないよ」
「うん」
泣き止んだなっちゃんは素直に頷きました。
なっちゃんはそれから考えてみました。
何故、同じように人を傷つける行為かもしれなくても、『壁を叩く』のはダメで『楽しそうにおしゃべりをする』のは良いのか。
『悪意』があるかどうかかな、と思いました。
『壁を叩く』のは、『こちらがムカついていることを知らせてやる』と言う気持ちで叩いています。
でも『楽しそうなおしゃべり』には、そのつもりがないのではないでしょうか……
他にも理由があるのかもしれません。
『壁を叩くこと』は、もしかすると壁を壊してしまうかも知れない。
なっちゃんの怒りとは何も関係ない人――例えばお隣さん――にまで迷惑をかけてしまうかもしれない……など。
なっちゃんは『壁を叩くのはもうやめよう』と思いました。
それから『楽しそうなおしゃべり』について考えました。
『楽しそうなおしゃべり』に傷つく場合も、もちろんあります。
しかし誰かが傷ついていることに気付かず、自分もしてしまう場合もいっぱいあるだろうと思いました。
『楽しそうなおしゃべり』自体はきっと何も悪くないのです……
それを聞く人の考え方、感じ方で、印象が変わるのでしょう……
なっちゃんは人の気持ちは難しいな、と思いました。
自分の気持ちだけでも、とても難しいのです……
――終――
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