大人向け童話、児童文学集

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毒舌姫

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 あるところにお姫さまがいました。
 彼女はとても『毒舌』でした。
 言っていることは正しいところもあるのですが、思いやりに欠ける発言を、誰に対してもしてしまうのです。
 
 そのため彼女は『毒舌姫』と呼ばれていました。

 周りの人がその毒舌を改めるように言っても、姫はまるで聞きませんでした。

「もし『毒舌』だから私のことが嫌いと言う人がいるならば、嫌いになれば良いのよ。
『毒舌』は私の大切な性質のひとつなのだから、私が変える必要ないわ」

『ありのまま毒舌で良い』と姫は思っているようでした。
 もし『ありのまま毒舌な姫』を受け入れることができないなら、それは最初から、縁がなかったと言うことだ。と姫は強気に考えていたのです。

 人から見たら明らかな『欠点』に見える、鋭い切り裂きを持つ『毒舌』を封印しない姫は、やはり人々から敬遠されていきました。

『お姫さま』なので、それでも周りに人はたくさんいましたが、皆、姫とは『最小限の付き合い』でいるように心を張っていました。
 それほど姫の『毒舌』は人の心をえぐるのです。
 そして姫は全く治そうと言う気がないのです。


 ――

 そんな姫もお年頃となり、縁談の話が来るようになりました。
 しかし今は『お姫さま』『王子さま』であっても結婚がわりと自由でした。

 なので『毒舌』な姫の『毒舌』に触れて傷ついた王子たちは、
『この縁談はなかったことに』
 と姫をフっていきました。

 それでも姫は自分の『毒舌』を治そうとは思いませんでした。
『自分のあるがままの毒舌を受け入れられない男とは初めから縁がなかった』と言うスタンスを崩しませんでした。

 そして姫は結婚できないまま、56回目のお見合いをしました。
 皆、『今回もダメだろうな』と思いました。
 何故なら姫はやはり『毒舌』を封印する気がなかったからです。

 お見合い相手の王子と対面した姫は、早速、毒舌を始めました。

 王子をこき下ろし始めたのです。

・声が……
・容姿が……
・服装が……

 姫の『毒舌』が王子の心を突き刺している……
 まわりはハラハラとその様子を見守っていましたが……

 当の王子は『ケロリ』としていました。

 姫の『毒舌』が終わると、王子は言いました。

「君の声は、とても綺麗だね」

 王子は怒っているどころか、姫を褒め始めたので、まわりは驚きました。
 周囲の驚きをよそに王子の『褒め言葉』はまだ続きます。

「イントネーションもとても綺麗だ。
まるで歌を歌うように、君はしゃべるんだね」

 

 ――

 その後、姫と王子は結婚しました。

 姫はいまだに『毒舌』ではありますが、王子は気にしていないようです。
 
 あるとき王子は彼の友達にこっそり打ち明けました。
「実は、姫の話の内容はほとんど聞いていないんだよ。
声音と響きを聞いているだけと言う感じなんだ」

 王子は姫の『毒舌』の言葉はほぼ聞き流し、その綺麗な声とイントネーションだけを聞き取れる才能があったのです。
 例えば外国語の美しい歌を歌詞の意味も分からず聞くように、妻の『毒舌』を聞くことができたのでした。

 姫の『毒舌』は変わらないままです。
 姫は今も王子に対し『あるがまま毒舌』を続けています。

 しかし王子は姫の『あるがまま毒舌』を聞き流し、妻の『あるがまま』その美しい声とイントネーションを、愛しているのでした……

 これは姫の望み通り『あるがままの毒舌な姫』を受け入れていると言うことになるのでしょうか……?

 しかし二人は幸せでした。



 ――終――
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