大衆娯楽、短編集

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青酸カリ入りお寿司

　借金を重ねた俺はある生死を賭けたゲームをしなければならなくなった。
　このゲームに参加したら、借金はチャラ。
　しかし最悪死ぬ場合がある。

　そのゲームとは……

『青酸カリ入りお寿司ゲーム』

　8つある大トロ寿司のうちの一つにワサビの代わりに『青酸カリ』が入っている……

　俺はそのゲームにチャレンジすることになった。


　――

　その後……
　俺は無事、生還したが『大トロ寿司』が食べられなくなった。

『青酸カリ入り寿司ゲーム』を思い出すから、食べられないのではない。

　俺はときどき思い出す――あのときの大トロ寿司を。

　ピンク色の大きな大トロが乗った、一流の寿司職人が握った、寿司。

「『最後の晩餐』かもしれませんので、最高のものをご用意しました」
　司会者はそんなことを言った。
「最高級ワサビの代わりに『青酸カリ』が入っているかも知れませんが」

　しかし、俺は見事、『最高級ワサビ入り最高級大トロ寿司』の方を当てたのだ！

　あのときの、感動……！
　そして、あの美味しさ！

・最高級大トロ寿司。
・死なずに済んだ。
・借金チャラ。
　
　その全ての要素がきっと、あの『美味しさ』の理由だった。


　――

　借金がなくなった俺は普通の暮らしができるようになった。

　しかしもう二度と『大トロ寿司』は食べないだろう。
　あの美味しさを越えるものは二度と食べることができないとわかっているから。

　いや、一つだけ方法はあるだろうか。
――『また借金を作る』



　――終――