大衆娯楽、短編集

toku

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私の家の近くに住む怪物

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 私の家の近くには怪物が住んでいて、私の家をしょっちゅう壊す。
 大きなものを振りかざし、あっと言う間に私の家を壊す。

 私は一生懸命逃げ出す。
 しかし、ソイツは私の命までは取るつもりがない様子だ。
『無駄な殺傷はしない』 
 そんな大きな声が聞こえる……

 今日も私は、家を壊された。
 せっかく、壊されても壊されても、頑張って作ったのに……

 しかも今日は

『シューッ』

 ソイツは何かイヤな液体を、私の家があった場所に吹き付けた。
  
 もう限界だ。
 ここにはもう住めない、と思った。

 また新たな場所を探さなければならない――家を作るのにふさわしい場所を。

 私は他の場所へと移るために歩み出した。
 今度の場所には、理不尽に家を壊す怪物がいないと良いと思う。





 ――――

 私はベランダの隅を見た。
 蜘蛛がしょっちゅう巣を張って困っていた場所だ。
 巣を作るたびに壊していた。申し訳ない気持ちはあるが仕方ない。
 
 巣を作るのはおそらく毎回同じ蜘蛛だろうが殺すわけにもいかなかった。蜘蛛はばちが当たりそうで殺すのに躊躇いがある――迷信だろうが。
 また蜘蛛は『益虫』とも聞く。実際、蜘蛛の巣を張ることと見た目以外は『益虫』なのだろう。知らんけど。

 今日は蜘蛛の巣はできていなかった。
 良かった。

 蜘蛛の巣を作らせないための『スプレー』を買ってきて、吹きかけておいたのが効いたのだろうか。


 
 ――終――
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