大衆娯楽、短編集

toku

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こうかいボタン

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 私はweb小説投稿サイトに小説を投稿している。

『物語を書くのが好きだから、小説を書いている』 
 そう建前では思っているが、
 実際は『人に見てもらうこと』によって、大きな喜びを得ている。

『小説を書く』ばかりではなく、
『小説を投稿する』ことに喜びを得ていたりもするのだ。

 今日も私は小説を書き、『投稿』するために『公開ボタン』を押す。

 しかし。

 ……ん?

 投稿するためのボタン。
『公開』と言う文字の書かれているボタンのはずなのに、『後悔』となっている。

 え……

 まばたき後に見返しても『後悔』である。
 これは『幻覚』……
 
 幻覚を見たことももちろんショックではあるが、ボタンが『後悔』と書かれていると何か押しにくい。
 せっかく書いたのに、投稿できないじゃないか。

 ぐぬ……

 私は仕方なく、『編集ページ』に戻って書いた小説を読み返した。

 すると、
「あっ!」
 とんでもない『誤字』があるではないか!
 
 良かった~、と思った。
 性癖がバレる誤字だった……
 これは投稿したら絶対『後悔』するところだった!

『後悔ボタン』のおかげで、『公開』を踏み止まることができた。感謝。

 私はその後、じっくり書いたものを読み返し、誤字がないことを確認した。
 よし、これで大丈夫!

 しかし……

「ふえ……」

 まだ『公開』ボタンのはずの場所には、『後悔』の文字が……ある。

 それから私は何度も小説を改稿し、ストーリーの変更もしたが、『後悔』の幻覚は消えず、その小説はお蔵入りとなった。

 ちなみに今でも小説投稿サイトの『公開』ボタンがあるはずの場所には、『後悔』の文字があるままである――つまり未だ幻覚は消えていない。
 そして『後悔』ボタンを押す勇気がないのも変わらない。

 しかし私はまだ小説を書き続けている。
 いつか、『後悔』がちゃんと『公開』ボタンに見える日が来ることを夢見て。

 案外悪いことばかりではないのかもしれない。
 人に見せられないことで、『小説を書く』こと自体に以前より集中できるようになったように思える。

 しかし、見せたい。
 頑張る。




 ――終――
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