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(1)赤ちゃん女優
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「ふぁあ、ふぁあ、ふぁあ」
映画撮影スタジオの中、赤ちゃんが泣いている。
「よしよし」
赤ちゃんを抱く女性――母親役の女優――が優しく揺さぶると、赤ちゃんはピタリと泣くのを止め、うつらうつらする。
しばらく後。
「……はいっ。OKです!」
監督が声をかけた。
撮影が終わった赤ちゃんは女優から本当の母親の胸へと移された。
「いやあ、お母さん!
本当にスゴい赤ちゃんですね!」
監督が褒める。
「『ピタリ』と泣き止むんですから!
他の子じゃ、こうはなりませんよ!」
「ほんとに……」
母親役の女優が、母の腕の中で目を瞑る赤ちゃんの頭を撫でながら、
「『ねんね、ねんね』と小声で言っていると、ホントにスーッと寝てくれるんです。
なのに、泣く場面ではちゃんと泣いてくれますし」
そして監督と女優はこう締めくくった。
「この子はスゴい、『赤ちゃん女優』です!」
「ありがとうございます」
母親が嬉しそうに、我が娘への褒め言葉を受け止めた。
褒められた当の本人は、母の腕の中で気持ち良さげに目を閉じながら、
(別に何もスゴいことじゃ、なかろうて)
そう、内心ひとりごちていた。
(ワシは『人生二度目』じゃて。
人の言葉が赤子のウチから分かるもんで。
だから、監督さんや女優さんの言うとおりにできるだけなんだわ)
『何もスゴいことないわな』
そう、『天才赤子女優』は思うのであった。
映画撮影スタジオの中、赤ちゃんが泣いている。
「よしよし」
赤ちゃんを抱く女性――母親役の女優――が優しく揺さぶると、赤ちゃんはピタリと泣くのを止め、うつらうつらする。
しばらく後。
「……はいっ。OKです!」
監督が声をかけた。
撮影が終わった赤ちゃんは女優から本当の母親の胸へと移された。
「いやあ、お母さん!
本当にスゴい赤ちゃんですね!」
監督が褒める。
「『ピタリ』と泣き止むんですから!
他の子じゃ、こうはなりませんよ!」
「ほんとに……」
母親役の女優が、母の腕の中で目を瞑る赤ちゃんの頭を撫でながら、
「『ねんね、ねんね』と小声で言っていると、ホントにスーッと寝てくれるんです。
なのに、泣く場面ではちゃんと泣いてくれますし」
そして監督と女優はこう締めくくった。
「この子はスゴい、『赤ちゃん女優』です!」
「ありがとうございます」
母親が嬉しそうに、我が娘への褒め言葉を受け止めた。
褒められた当の本人は、母の腕の中で気持ち良さげに目を閉じながら、
(別に何もスゴいことじゃ、なかろうて)
そう、内心ひとりごちていた。
(ワシは『人生二度目』じゃて。
人の言葉が赤子のウチから分かるもんで。
だから、監督さんや女優さんの言うとおりにできるだけなんだわ)
『何もスゴいことないわな』
そう、『天才赤子女優』は思うのであった。
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