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第11話 聖都での神託と招かれざる英雄
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朝焼けの光が王都を照らす頃、リアンとルシェリアは新たな目的地へと向かう準備をしていた。
宿屋の前でミリアが別れを惜しむように立っている。
「本当に行っちゃうの?」
「行かなきゃならない。奴ら“蛇の牙”が動いてる以上、放っておけない」
「……でも無理はしないでね。あなたは、もうひとりじゃないんだから」
ミリアの瞳が少し潤む。リアンはそれを見て苦笑した。
「お前らを置いていくわけじゃない。また必ず帰ってくる」
そして、剣の勇者リオネルが一歩前に出る。
「リアン。お前が俺たちを救った恩、絶対に忘れない。今後は情報を共有する。俺たちも“蛇の牙”を追う」
リアンは頷き、手を差し出した。
「頼んだ。お互い生きてまた会おう」
馬車が出発する。ミリアたちが見送る中、リアンとルシェリアは一路、南の聖都リュミエルへ向かった。
聖都には古代神殿と大神殿があり、女神アリアの神官たちが住む場所でもある。
「聖都に向かうのは正解だと思います」
ルシェリアが言った。
「女神の力を継ぐ者が、無意識のうちに神殿へ導かれているのなら、何かしらの“神託”が待っているはず」
「なら、女神アリアとはっきり話せるといいんだがな」
「そう簡単にはいかないでしょう。彼女は創世の存在。“言葉”ですら真意を伝える術では足りない」
「つまり、また何か面倒くさい事になりそうってことだな……」
リアンがぼやくと、ルシェリアはくすりと笑った。
数日後、聖都リュミエルが見えてきた。
純白の石造りの街並みと、水晶の尖塔が空に向かってそびえ立つ。
大通りを歩く人々はどこか神聖な雰囲気をまとい、教会の鐘が穏やかに鳴り響いている。
大神殿の前へ到着すると、神官たちが来訪者を迎えていた。
一人の神官がリアンに目を留めると、息を呑んだように立ち尽くした。
「そなた……その右手の刻印……まさか勇者の……」
「案内をお願いしたい。女神アリアに関わることだ」
神官たちは驚き、そして慌ただしく中へ案内した。
大神殿の中央広間は荘厳だった。天井には金色の竜と翼の模様、床一面に魔法陣が描かれている。
祭壇の奥に、白いローブを纏った人物――聖女セリスが立っていた。彼女こそ女神アリアの巫女であり、聖都の象徴とも言われる存在だった。
セリスはリアンたちをまっすぐに見つめた。
「よく来ました、勇者リアン=グレイハート。女神はあなたの訪れを知っておられます」
「やはり俺を知っているのか」
「ええ、あなたはかつて封じられた“均衡の鍵”の継承者。闇の勇者が目覚めた今こそ、あなたが世界の釣り合いを取る者だと」
リアンは無意識に拳を握った。
「女神アリアが言ったんだな?」
「はい。しかし……それだけではありません」
セリスが手を上げると、頭上のステンドグラスが金色に光り、女神の声がこだました。
――勇者よ。我が声が届くか。
「……アリア!」
――光と影、今再び均衡が揺らいでいます。あなたが選ぶ力が、闇を滅ぼすのか、あるいは新たな破滅を招くのか。
「どういう意味だ?」
――あなたの中には二人の勇者の魂が在る。ひとつは“光”。もうひとつは、“影”。その完全な融合こそが真なる勇者の姿。
――しかし、影は今、蛇の牙と手を組み、世界を対に引き裂こうとしている。
「アーゼル……!」リアンの声に怒りがにじむ。
――あの者はあなたの半身。滅ぼすことは、同時に自らを削ること。よく考えなさい。
光が消え、静寂が戻る。ルシェリアは難しい表情をしていた。
「やはり、あの幻影の男……アーゼルは実在している。しかも彼自ら意志を持って動いているなんて」
セリスは沈痛な面持ちで頷く。
「蛇の牙の幹部たちは、彼を“真の王”として崇め始めています。魔族だけでなく、人間の一部も彼に従っている。すでに複数の国で異変が」
「人間が……?」
「ええ。新しい秩序を願う者たちが、闇の力を栄光と捉えています」
リアンは拳を握った。
「俺のせいで……あの封印を解いたからだな」
「責めないでください」セリスが首を振る。
「それは運命です。あなたが目覚めなければ、蛇の牙はもっと早く世界を覆っていました。問題は――彼らが今、どこを狙っているか」
その瞬間、大神殿の外から地響きが起こった。
神官たちがざわめく。「敵襲です! 魔族の軍勢が聖都に!」
「なんだと!?」リアンは走り出した。
外を見ると、黒い霧を纏った魔獣たちが街を覆っていた。空の上では翼竜に跨る暗黒騎士たちが降りてくる。
「聖都を守れ!」
ルシェリアが片手を掲げて結界を展開する。だが、数が多すぎる。
リアンは剣を抜き、一歩踏み出す。
金紅の光が放たれ、空が一瞬で明るく染まった。
剣が閃くたびに、魔獣が音もなく蒸発していく。
「これ以上、誰も傷つけさせない!」
力が限界を超えた瞬間、胸の刻印が強く輝いた。
女神の声が再び響く。
――それでよい。あなたの決意、確かに受け取りました。
光の奔流が広がる。街を覆う闇が一気に晴れ上がり、魔族の軍勢が退き始めた。
ルシェリアがリアンの隣に立つ。
「やっぱり、あなたの力は女神そのもの……」
「俺はただ、守るって決めただけだ」
戦いが終わった後、聖都は静まり返っていた。
セリスが祭壇の前で頭を下げる。
「勇者殿、あなたは確かに神の加護を持つ者です。しかし、光を使えば使うほど、影もまた強くなる。どうか、そのことを忘れないでください」
リアンは小さく頷いた。
「分かってる。だが、あいつがどんな闇だろうと――俺はもう逃げない」
ルシェリアが窓の外を見る。空には、北方の空に黒い煙柱が立ち昇っていた。
「次の標的は……王国の北境ね」
「行くぞ」リアンの声はもう迷いがなかった。
聖都の鐘が再び鳴り響く。その音はまるで、新たな戦いの幕開けを告げるように街に広がっていった。
宿屋の前でミリアが別れを惜しむように立っている。
「本当に行っちゃうの?」
「行かなきゃならない。奴ら“蛇の牙”が動いてる以上、放っておけない」
「……でも無理はしないでね。あなたは、もうひとりじゃないんだから」
ミリアの瞳が少し潤む。リアンはそれを見て苦笑した。
「お前らを置いていくわけじゃない。また必ず帰ってくる」
そして、剣の勇者リオネルが一歩前に出る。
「リアン。お前が俺たちを救った恩、絶対に忘れない。今後は情報を共有する。俺たちも“蛇の牙”を追う」
リアンは頷き、手を差し出した。
「頼んだ。お互い生きてまた会おう」
馬車が出発する。ミリアたちが見送る中、リアンとルシェリアは一路、南の聖都リュミエルへ向かった。
聖都には古代神殿と大神殿があり、女神アリアの神官たちが住む場所でもある。
「聖都に向かうのは正解だと思います」
ルシェリアが言った。
「女神の力を継ぐ者が、無意識のうちに神殿へ導かれているのなら、何かしらの“神託”が待っているはず」
「なら、女神アリアとはっきり話せるといいんだがな」
「そう簡単にはいかないでしょう。彼女は創世の存在。“言葉”ですら真意を伝える術では足りない」
「つまり、また何か面倒くさい事になりそうってことだな……」
リアンがぼやくと、ルシェリアはくすりと笑った。
数日後、聖都リュミエルが見えてきた。
純白の石造りの街並みと、水晶の尖塔が空に向かってそびえ立つ。
大通りを歩く人々はどこか神聖な雰囲気をまとい、教会の鐘が穏やかに鳴り響いている。
大神殿の前へ到着すると、神官たちが来訪者を迎えていた。
一人の神官がリアンに目を留めると、息を呑んだように立ち尽くした。
「そなた……その右手の刻印……まさか勇者の……」
「案内をお願いしたい。女神アリアに関わることだ」
神官たちは驚き、そして慌ただしく中へ案内した。
大神殿の中央広間は荘厳だった。天井には金色の竜と翼の模様、床一面に魔法陣が描かれている。
祭壇の奥に、白いローブを纏った人物――聖女セリスが立っていた。彼女こそ女神アリアの巫女であり、聖都の象徴とも言われる存在だった。
セリスはリアンたちをまっすぐに見つめた。
「よく来ました、勇者リアン=グレイハート。女神はあなたの訪れを知っておられます」
「やはり俺を知っているのか」
「ええ、あなたはかつて封じられた“均衡の鍵”の継承者。闇の勇者が目覚めた今こそ、あなたが世界の釣り合いを取る者だと」
リアンは無意識に拳を握った。
「女神アリアが言ったんだな?」
「はい。しかし……それだけではありません」
セリスが手を上げると、頭上のステンドグラスが金色に光り、女神の声がこだました。
――勇者よ。我が声が届くか。
「……アリア!」
――光と影、今再び均衡が揺らいでいます。あなたが選ぶ力が、闇を滅ぼすのか、あるいは新たな破滅を招くのか。
「どういう意味だ?」
――あなたの中には二人の勇者の魂が在る。ひとつは“光”。もうひとつは、“影”。その完全な融合こそが真なる勇者の姿。
――しかし、影は今、蛇の牙と手を組み、世界を対に引き裂こうとしている。
「アーゼル……!」リアンの声に怒りがにじむ。
――あの者はあなたの半身。滅ぼすことは、同時に自らを削ること。よく考えなさい。
光が消え、静寂が戻る。ルシェリアは難しい表情をしていた。
「やはり、あの幻影の男……アーゼルは実在している。しかも彼自ら意志を持って動いているなんて」
セリスは沈痛な面持ちで頷く。
「蛇の牙の幹部たちは、彼を“真の王”として崇め始めています。魔族だけでなく、人間の一部も彼に従っている。すでに複数の国で異変が」
「人間が……?」
「ええ。新しい秩序を願う者たちが、闇の力を栄光と捉えています」
リアンは拳を握った。
「俺のせいで……あの封印を解いたからだな」
「責めないでください」セリスが首を振る。
「それは運命です。あなたが目覚めなければ、蛇の牙はもっと早く世界を覆っていました。問題は――彼らが今、どこを狙っているか」
その瞬間、大神殿の外から地響きが起こった。
神官たちがざわめく。「敵襲です! 魔族の軍勢が聖都に!」
「なんだと!?」リアンは走り出した。
外を見ると、黒い霧を纏った魔獣たちが街を覆っていた。空の上では翼竜に跨る暗黒騎士たちが降りてくる。
「聖都を守れ!」
ルシェリアが片手を掲げて結界を展開する。だが、数が多すぎる。
リアンは剣を抜き、一歩踏み出す。
金紅の光が放たれ、空が一瞬で明るく染まった。
剣が閃くたびに、魔獣が音もなく蒸発していく。
「これ以上、誰も傷つけさせない!」
力が限界を超えた瞬間、胸の刻印が強く輝いた。
女神の声が再び響く。
――それでよい。あなたの決意、確かに受け取りました。
光の奔流が広がる。街を覆う闇が一気に晴れ上がり、魔族の軍勢が退き始めた。
ルシェリアがリアンの隣に立つ。
「やっぱり、あなたの力は女神そのもの……」
「俺はただ、守るって決めただけだ」
戦いが終わった後、聖都は静まり返っていた。
セリスが祭壇の前で頭を下げる。
「勇者殿、あなたは確かに神の加護を持つ者です。しかし、光を使えば使うほど、影もまた強くなる。どうか、そのことを忘れないでください」
リアンは小さく頷いた。
「分かってる。だが、あいつがどんな闇だろうと――俺はもう逃げない」
ルシェリアが窓の外を見る。空には、北方の空に黒い煙柱が立ち昇っていた。
「次の標的は……王国の北境ね」
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