神に見捨てられた少年は、異世界で無双する 〜追放されたけど気づいたら最強の加護を持ってました〜

fuwamofu

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第4話 無効化と複製の力

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ルースの町は、山脈のふもとにある小さな交易都市だった。  
通りには露店が並び、旅人や商人たちが忙しそうに行き交っている。  
アルトとリリアは町門で身分証を提示し、ようやくその賑やかな中に足を踏み入れた。  

「ようやく着きましたね……ふぅ」  
「思ったよりも、大きな町だな」  

石造りの建物が整然と並び、中央には大きな噴水が見える。  
教会の鐘がちょうど鳴り響き、リリアはそれを見上げて微笑んだ。  

「ここには、私の騎士団の分隊がいるはずなんです。正式に報告すれば、町で休める場所を確保してもらえると思います」  
「それなら助かる。少し休みたいし、装備も整え直したい」  

リリアに案内され、二人は教会付属の宿舎に入った。  
白と銀の装飾が施された清潔な建物で、女性修道士が笑顔で迎えてくれる。  
包帯を替え、簡単な食事を済ませたあと、アルトは静かに窓辺に座った。  

外の夕暮れが赤く染まり、風に運ばれて鐘の音が再び響く。  
リリアは隣に座り、小瓶の聖水を手渡した。  

「アルトさん、あらためて言いますが…本当にありがとうございました。遺跡の探索任務、あなたのおかげで生きて戻れました」  
「気にするなよ。たまたま居合わせただけだ」  
「たまたま、で済ませる人じゃないと思います」  

微笑むリリアの声は穏やかだ。  
だがアルトの心の奥には、小さな不安がこびりついていた。  
昨日、女神リーゼから“封印が一枚解けた”と告げられて以来、彼の中の力は確実に増している。  
そしてそれは、制御が利かなくなる恐れを伴っていた。  

――力を使えば、この世界の均衡は崩れる。  

リーゼの言葉が、何度も頭の奥でこだまする。  

気を紛らわすように、アルトは掌を開いた。  
そこに小さな光を思い描く。  
意識するだけで、空間がわずかに歪む音がした。  
瞬きのあと、手の中には一枚の銀貨があった。  

「……これが、“複製”」  
「えっ?」  
リリアが驚いて身を乗り出す。  

アルトは笑って銀貨を彼女に渡した。  
「さっき渡した宿代とまったく同じ銀貨を、頭の中でイメージしただけで作り出せる。試したら、本物と見分けがつかない」  
「これ、本物です……。刻印まで一字一句同じ……」  
リリアが目を丸くした。  
「でも、そんな魔法聞いたことがありません。錬金術師でも、金属の再現は不可能なのに」  
「俺自身にも仕組みは分からない。思い浮かべたものを“写す”だけだ」  

アルトはさらに、そばに置かれた短剣を手に取った。  
集中し、意識の奥でイメージを重ねる。  
空気が波打つように揺れ、もう一本の短剣が生まれた。  
同時に手に持つ感触が伝わる。まるで最初から二本あったかのようだ。  

「……信じられない」  
リリアは短剣を手に取り、軽く振った。金属音が確かに響く。  
「本当に“実物”……触れますし、重さも同じです」  
「欠点があるとすれば、複製した物は一定時間で消えることだな。使っている間しか存在できない」  
「それでも十分すぎますよ!」  

彼女の興奮とは裏腹に、アルトはその力の意味を考えていた。  
もしこの能力を制約なく使い続けたら、文字通り何でも複製できる。  
武器や金貨だけでなく、神具や魔法そのものすらも――。  

だが同時に、胸の奥で何かが警告する。  
“触れるな”と。  

そのとき、宿舎の外から騒ぎ声がした。  
リリアが立ち上がる。  
「どうしたんでしょう? この時間にしては珍しい……」  
アルトも腰を上げ、扉を開いた。  

外では人々が中央広場の方角を見てざわめいている。  
「魔獣だ! 門の外から群れがやってくる!」  
「避難だ! 急いで教会へ!」  

悲鳴が飛び交う中、リリアは剣に手をかけた。  
「まさか……昨日の異常が、もうこの町にも……!」  
「俺も行く」  
「でも、アルトさんは――」  
「力を確かめるいい機会だ。大丈夫、無茶はしない」  

二人は広場へ駆け出した。  
すでに城門付近では騎士団が応戦しており、黒い毛並みの狼型魔獣が十数体、町へなだれ込もうとしていた。  
リリアは一瞬で剣を抜き、前線へ飛び出す。  
祈りの言葉とともに、その剣身に光が宿る。聖属性の刃。  

「はあっ!」  
リリアの一閃が魔獣の首を断ち、光の粒子が散った。  
さすが聖騎士見習いというだけあって、動きは鋭い。だが数が多い。  

アルトは左手を上げた。  
魔獣が放つ黒い瘴気が、触れる前に霧散して消えていく。  
守りを意識したわけでもない。ただ、邪魔だと思った瞬間、すべてが“消えた”のだ。  

「……無効化、か」  
かつては useless(使えない)と罵られたこのスキル。  
だが今は違う。相手の攻撃すら意味を無くす絶対の防壁。  

リリアが悲鳴を上げる方を振り返ると、後方で一体の大型個体が暴れている。  
城壁を破ろうとする巨狼――通常なら相手にならない。  

アルトは走りながら剣を構えた。  
その瞬間、頭の中でイメージが閃く。  
“リリアの剣”。柔らかく輝く、聖なる光。  

剣を振ると、手の中に同じ光が宿った。  
「複製……成功か」  
彼はそのまま地を蹴った。  

巨狼の咆哮が響く。  
アルトの身体がその足元に到達するより早く、光の軌跡が走った。  
時間が止まったような感覚。  
次の瞬間、巨狼は二つに裂けて崩れ落ちた。  

あたりに静けさが戻る。  
リリアが駆け寄り、信じられないというように言った。  
「今の……私の剣技と同じ構えでした。どうやって……?」  
「見ただけで再現できた。おそらく、技も“複製”できる」  
「そんなこと、あり得ません……!」  

周囲の兵士たちが次々と声を上げる。  
「誰だ、あの男は!?」  
「ひとりで大型を……!」  
視線が一斉にアルトに集まった。  
だが本人は何よりも、自分の腕の中で静かに脈打つ力に驚いていた。  

――無効化。複製。  
この二つが融合すれば、攻防すべてにおいて無敵になる。  
その実感が肌を通して伝わってくる。  

だが同時に、背筋を冷たい感覚が走った。  
ただの魔獣討伐にしては、敵の数が多すぎる。  
誰かが意図的にこの異常を起こしている。そう直感した。  

その予感は、翌日、現実になる。  

「アルトさん、王都の方から来た伝令が言ってました。領主が“例の異常地帯の調査者”を探しているって……あなたのことだと思います」  
「……来たか」  
「どうします? 応じますか?」  
「行くしかない。誰が裏で糸を引いているのか、確かめないと」  

新たな決意を胸に、アルトは剣を支度袋に仕舞った。  
かつて追放された無能は、今や自らの力を恐れる側に立っている。  
これから向かう王都こそ、彼の運命を左右する舞台となるだろう。  

(第4話 終)
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