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初恋
奮闘する恋心
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新年を迎え冬休み期間中のため、学園内も寮内も閑散としている。
ふと人に見られているような感じがして振り替えるが誰も居ない。
気のせいだった。
人の気配が薄まった校内は、これはこれで味わいがあるが、なんだか少し怖い。
あの細胞爆発事件の日から俺は結構頑張った。
叶羽に相談しながら朝日さんにメールをし、時々電話をしてみたり、何かしら理由を付けて管理人窓口に行き、学校では用務員室に雑用がてら寄ってみたり、第二図書室で朝日さんを待ってみたり、とにかく色々細々と姑息に接点を作った。
話すたびに好きになり、同時に戸惑う。
どうやったら俺の事を好きになってもらえるんだろうか。
考えれば考えるほど答えは出ない。
堂々巡り。
姉に相談してみたら、恋とはそういう物なのだよ!と言われた。
押して押して押しまくれ、むしろ押し倒せというアドバイスしか得られなかったため相談した事を少々後悔している。
姉のアドバイスのような空回りしたストーカーみたいにはなりたくないため、叶羽に相談しながら頑張った。
いつかちゃんと気持ちを伝えられるように。
そして駄目でも後悔しないように。
相談相手の叶羽は年末年始は実家の掃除をしたり墓参りに行かないといけないという事で帰省している。
残念ながら暫くの間会えない。
俺は実家に帰っても両親は海外で、姉は正月返上で働いているため殆ど会えないらしいので帰らなかった。
叶羽が居ないと、とたんに暇になった。
年末忙しくて捕まらなかった萱島先生に会いになので美術教務室まで来てみた。
明けましておめでとうございますと入ると、教務室には萱島先生だけ。
「やっぱり居た。正月休みなのに社畜の鏡。」
「社畜じゃねえ、仕事人間と言え。」
そうのたまう仕事中の先生に、少し時間を貰っても大丈夫かと確認し了承を得たので、はいコレどうぞ、とゴッホ展で購入したお土産を渡す。
夜のカフェテラスのポスターカードと、ゴッホの自画像のハンカチ。
「先生部室に来ないし、忙しくて捕まらないし。遅くなってすみません。」
「お前…まじかよ。しっかりしてんなあ。気ぃ使わせて悪かったな、ありがとう。正直めっちゃ嬉しいわ。」
良かった。喜んでもらえて。
「朝日と行ってきたんだって?クリスマスデートだっつって美術部のミーハー達が騒いでた。」
「デートではないですけどね。すんごい楽しかったです。」
この前朝日さんから聞いて驚いたのだが、鬼束先生と萱島先生と朝日さんは高校の同級生なのだそうだ。
この学園ではないが同じ系列の高校で、萱島先生は生徒会長だったらしい。
当時からくたびれてたんですか?と聞いたら朝日さんは笑って昔からくたびれた生徒会長だったと教えてくれた。
「夜のカフェテラスめっちゃ良かったです。吸い込まれました。」
「だろ?」
萱島先生に熱くゴッホ展の良かった所を喉が乾くまで語り尽くし、今度朝日さんにもゴッホ展の話聞いてみて下さいと美術教務室を後にした。
これで少しは行けなかった悔しさが晴れてくれれば良いのだけれど。
ふと人に見られているような感じがして振り替えるが誰も居ない。
気のせいだった。
人の気配が薄まった校内は、これはこれで味わいがあるが、なんだか少し怖い。
あの細胞爆発事件の日から俺は結構頑張った。
叶羽に相談しながら朝日さんにメールをし、時々電話をしてみたり、何かしら理由を付けて管理人窓口に行き、学校では用務員室に雑用がてら寄ってみたり、第二図書室で朝日さんを待ってみたり、とにかく色々細々と姑息に接点を作った。
話すたびに好きになり、同時に戸惑う。
どうやったら俺の事を好きになってもらえるんだろうか。
考えれば考えるほど答えは出ない。
堂々巡り。
姉に相談してみたら、恋とはそういう物なのだよ!と言われた。
押して押して押しまくれ、むしろ押し倒せというアドバイスしか得られなかったため相談した事を少々後悔している。
姉のアドバイスのような空回りしたストーカーみたいにはなりたくないため、叶羽に相談しながら頑張った。
いつかちゃんと気持ちを伝えられるように。
そして駄目でも後悔しないように。
相談相手の叶羽は年末年始は実家の掃除をしたり墓参りに行かないといけないという事で帰省している。
残念ながら暫くの間会えない。
俺は実家に帰っても両親は海外で、姉は正月返上で働いているため殆ど会えないらしいので帰らなかった。
叶羽が居ないと、とたんに暇になった。
年末忙しくて捕まらなかった萱島先生に会いになので美術教務室まで来てみた。
明けましておめでとうございますと入ると、教務室には萱島先生だけ。
「やっぱり居た。正月休みなのに社畜の鏡。」
「社畜じゃねえ、仕事人間と言え。」
そうのたまう仕事中の先生に、少し時間を貰っても大丈夫かと確認し了承を得たので、はいコレどうぞ、とゴッホ展で購入したお土産を渡す。
夜のカフェテラスのポスターカードと、ゴッホの自画像のハンカチ。
「先生部室に来ないし、忙しくて捕まらないし。遅くなってすみません。」
「お前…まじかよ。しっかりしてんなあ。気ぃ使わせて悪かったな、ありがとう。正直めっちゃ嬉しいわ。」
良かった。喜んでもらえて。
「朝日と行ってきたんだって?クリスマスデートだっつって美術部のミーハー達が騒いでた。」
「デートではないですけどね。すんごい楽しかったです。」
この前朝日さんから聞いて驚いたのだが、鬼束先生と萱島先生と朝日さんは高校の同級生なのだそうだ。
この学園ではないが同じ系列の高校で、萱島先生は生徒会長だったらしい。
当時からくたびれてたんですか?と聞いたら朝日さんは笑って昔からくたびれた生徒会長だったと教えてくれた。
「夜のカフェテラスめっちゃ良かったです。吸い込まれました。」
「だろ?」
萱島先生に熱くゴッホ展の良かった所を喉が乾くまで語り尽くし、今度朝日さんにもゴッホ展の話聞いてみて下さいと美術教務室を後にした。
これで少しは行けなかった悔しさが晴れてくれれば良いのだけれど。
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