世界の秩序は僕次第

虎鶫

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メインストーリー1

続々・メムロの章

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タスト村が見えてきた。
村の入り口では母親が仁王立ちしている。

続々・メムロの章

「あ、おばちゃーん、依頼完了やでー。オレはギルドに報告してくるわー」
そういいながらサーカさんはギルドに向っていった。

母親はサーカさんに礼を言うと、こっちを見ている。
こっそり抜け出したから絶対に怒られるだろうと思った・・・
「まったく・・・。また迷子にでもなったのかい?部屋に篭りっぱなしよりはマシだけど、ちゃんと家には帰ってくるんだよ」
そういうと家へと帰って行った。

拍子抜け感はあったが、家で怒られるのか?
ここで家に帰らないとまた捜索の依頼が出るだけなので、おとなしく家に帰った。
「ただいまー」
「おかえりなさい。ご飯の準備は出来てるけど、食べるのはサーカさんが来てからよ」
サーカさんが来る?
「なんで、サーカさんが家に?」
「あんたの捜索依頼のお礼よ。ご馳走するって約束したから」
そう言ってる間にサーカさんが家に来た。
「じゃまするで~」

・・・

「スルーは悲しいわ。ま、えぇか。おばちゃんのご飯めっちゃうまいからなぁ」
そういいながらサーカさんは何事もなかったかのように椅子座った。
僕も座って一緒にご飯を食べた。

「ほんで、メムロちゃん。今回はなんであないなところで寝てたんや?見つけやすくて助かったけど」
当然の疑問である。
しかし、本当の事を言っても信用してもらえないだろう。
「うーん、マルムと戦った後にドゲルが現れたところまでは覚えてるんですけど・・・」
メムロとして行動していた内容としては嘘ではない。
「ドゲルっちゅーたら、毒あるやつやん。よぉ無事でおったなぁ」
サーカさんが呆れた感じで言ってきた。
実際は無事ではなかったのだが。
「あんたも、ちゃんとサーカさんにお礼をいいなさいよ」
「礼なんかいらん。また迷子になったらいつでも探したる。おばちゃんのご飯食べれるしなー」
やれやれといった感じではあるが、そこがサーカさんのいいところでもある。

「ごっつぉさん。やっぱり、おばちゃんの料理は最強やなー。そうそう、メムロちゃん今日ははよねーや。明日、朝一にギルド集合やでー。ほなー」

そういうとサーカさんは帰っていった。
ギルドに集合?
現在行われている村の修復のためにわざわざ集合をかけるほどでもない。
いったい何の用だろう。
考えたところで答えはでない。
今日のところはおとなしく寝ることにした。

翌朝;ギルド内

「ほんでセイドはん、みんなそろーたけど何の用なん?」
全員集まったのを見計らってサーカさんが口火を切った。

「うむ。先日、セキダイコ付近で大きな爆発が起きた」
みんなザワザワしだした。
「セキダイコは存在したのか・・・」
「そういえば、光の柱があがってたような」

爆発?もしかして・・・

「この村からセキダイコまでは距離があるから知らない者も多いが、ナトリのギルドからそういう連絡が来た」
「で、ギルドからの連絡の内容は?」
「ナトリのギルドがセキダイコに調査に出る事になったので、人手が欲しいとのことだ。危険の伴う任務にな・・・」
「はいはーい。オレいくでー」
セイドさんの言葉を遮るようにサーカさんが挙手した。
目はキラキラしている。
よっぽど村から出たかったのだろう。

セイドさんはやっぱりかという感じの顔をしながら話を続けた。
「他に行きたいやつはいるか?」

みんな顔を合わせて動向をうかがっている。

「僕も行きます!」
全員が意外な顔をしてこっちを見てきた。
当たり前の反応である。
ギルドに入りたてのペーペー、しかもそれまでは家に引き篭もっていた僕が行くと言うなんて誰も想像しないからだ。
なにより僕自身もそう思っている。

「お、迷子常習者のメムロちゃん、やる気まんまんやないの。えぇやん、えぇやん」
サーカさんはなぜか嬉しそうにしている。
足手まといと言われるよりはマシか。

セイドさんの方を見ると、うーんという表情をしている。
さすがに即答は出来ないか。

「セイドはん、メムロちゃんが自分からゆーてるんやし、えぇんちゃうのん」
「うむー、だがメムロにはまだ戦闘の経験がほとんどないからなぁ」
「メムロちゃんはこーみえても、ドゲルの生息地で眠りこくぐらい度胸あるねんで」
完全に誤解されているが、サーカさんが薦めてくれていることで渋々了承してくれた。

「では、この件はサーカとメムロに任せる。他の者はこれまで通り村の修復を続けるように。解散」
セイドさんがそう言うと、みんなギルドから出て行った。
心配して声をかけてくれる人や装備を分けてくれる人もいた。

ありがたい。
が、僕には扱えない武器もあるのでそれは家に置いとくことにした。

準備を早々に終わらせていたサーカさんが村の入り口で待っていた。
「お、メムロちゃん短剣にしたんかいな。まぁ木刀よりはマシやし、色んな武器を試して自分に合うのを探すのも修行の一環やで」
長剣も貰ったが、今の僕では重くて振り回せない。
消去法で短剣になっただけだが、確かに木刀よりはマシである。

村を出ようとすると母親が駆け寄ってきた。
「サーカさん、うちの子を頼んだよ。報酬は先払いってことで」
といって、お弁当を渡していた。
「おばちゃん、ありがとなー。メムロちゃんの事はまかしときー、一人前にして帰したる」

とりあえず壊れた看板のところまで順調にたどり着いた。
マルムが現れたがサーカさんがサクッと倒してくれた。
僕の出番はない。

「サーカさんは魔法を使えるの?」
興味本位で聞いてみた。
「それがさっぱりやねん。素質っちゅーのがいるみたいやけど。メムロちゃんは?本とかいっぱい読んでるからいけるんちゃうの?」
「うーん・・・」
「こないだ抜け出した時は、つこーてないんか?」
「呪文とか契約は済ませたんですけど・・・使う暇がなくて」
前の時は全くできなかった。
でも、カシジュマの時はバンバン魔法が使えた。
中級レベルの魔法も覚えている。

「んー、ほな次、モンスター出てきたら引きつけといたるから魔法試してみー」
「はい、おねがいします!」
記憶と経験は残っている。
今度こそは使える・・・はず。

ナトリが見える時にマルムが現れた。
「メムロちゃん、魔法使うチャンスやでー」
そういうと、マルムの注意をサーカさんに向けるようにしてくれた。

お膳立ては十分。
カシジュマの時を思い出しながら呪文を唱えてみた。

プスッ!

・・・

「メムロちゃん、冗談きっついでー、ちゃんとやりやー」
もう一度、呪文を唱えてみた。

プスッ!

結果は同じだった。
サーカさんが残念そうな顔をしている。
本当に残念なのはこっちの方だ。
あれだけ魔法をバンバン使っていたのに、メムロだと全く使えないとは。

「ま、まぁ、アレやな。メムロちゃんは素質がないんやのーて、まだまだ修行が足りんっちゅーことや・・・知らんけど」
サーカさんが苦し紛れのフォローをしてくれた。
虚しい。

魔法が使えないと分かると、サーカさんはマルムをサクッと倒して先へと進んでいった。
考えていても仕方が無いので後をついていった。

ナトリの街に着いた。
「ガイアちゃん、元気でやってるかなー」
「!」
サーカさんの何気ない一言に思わず顔が強張った。

「ん?どないしたんや?」
「いえ、別に」
「ははーん。こないにでっかい街見るの初めてやからびびってるんやろー」
「ち、違いますよ!」
「びびっとーる、メムロちゃんのへたれー、やーいやーい」
サーカさんが茶化してきた。
でも、こういう時にサーカさんのこの性格はありがたい。

続々・メムロの章つづく
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