世界の秩序は僕次第

虎鶫

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続々々・メムロの章:大木編

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ハァハァハァ・・・
ズネとの戦いはさすがに疲れた。

続々々・メムロの章:大木編

ズネ自体は弱いが見切ることが出来ない分、体力の消耗が大きい。
しかも雨だから炎の威力も弱い。

『もう少しで、沼地を抜けるからがんばれ』
ドンリンさんが励ましてくれているような気がする。

「お!なんかごっつい木あるでー、あっこでちょっと雨宿りやー」
先頭を行っていたサーカさんが嬉しそうに叫んだ。

ゾクッ!
大きな木!?
何か嫌な予感がした。

『おい、サーカ。あんな木見た事無いぞ』
『そういえば、オレもこの辺来るのは久しぶりやけど、ここまでごっつい木はなかったな』
『どうする、別の場所を探すか?』
『んー、なんか妖しい雰囲気はあるけど、メムロちゃんを休ませたらんとなぁ』
『仕方ないか』
僕の方を見ながら2人が会話をしている。

結局、大きな木の下で休憩をすることにした。

「サーカさん、ヨサトまではあとどれぐらいですか?」
「この先の森を抜けたらすぐやで」
近いのか遠いのかがわからない。

大きな木の存在は気になったが、2人が何も感じていないのなら大丈夫なのだろう。
ぐるりと周ってみたが足場っぽいものもない。

「ちょうどいい場所にこの木があってよかったですね」
そういうと、サーカさんが珍しく困惑した顔をした。
「あったのはえぇんやけど、こんな木はオレの記憶にはないねん」
「え?でも、サーカさんは久しぶりだから大きくなる前の記憶では?」
自分でもおかしな事を言ってる気がした。
「メムロちゃん、こんなごっつい木やで。オレ何歳やと思ってんねん。急に成長するわけないやん」
素で返された。
ドンリンさんも知らないらしい。

「ギノツの近くの森にも大きな木がありましたね」
なんとなく言ってみた。
「なんや、メムロちゃんもあっこのん見たんかいな。さっすが迷子の名人やな」
褒められた気がしない。

「あっこの木もヤバそうな気配やったけど、ここもヤバそうな気配すんねんなー」
「じゃあ、早めに移動したほうがいいですね」
「メムロちゃんがそういうなら出発や」

サーカさんがそう言って木から出ようとすると、場の雰囲気が変わった気がした。
何度か感じたことのあるこのピリピリした空気感。

『サーカ、ヤバイな』
『せやな』
2人の顔つきが変わった。
会話の内容はわからないがかなりヤバイのだろう。

バサッバサッバサッ!

聞き覚えのある音が聞こえてきた。
リクド?
いや、色が違う。
微妙に青っぽい。

「サーカさん、アイツはリクドとは別の種類?」
「名前はちゃうけど、似たようなやっちゃ」

『ブクドか。でも、アイツの活動範囲は違うはず』
『別んの所でリクドとおうたで』
『ということは、レクドも別の場所に移動してる?』
『かもしれん。知らんけど』

「メムロちゃん、隠れる場所ないから自分の身は自分で守りやー」
「は、はい」
「ブクドに攻撃はせんでえぇから。とりあえず炎と尻尾にきーつけ」

バサッバサッバサッ!
リクドの時のようにゆっくり降りてくる。

『サーカ、やるしかないか』
『せなやー、ある程度相手したったら退散するやろ』
2人の会話はわからないが、撃退するようだ。

とにかく、僕は2人の邪魔にだけにならないようにしよう。

ドシーン!
ブワッ!
ブクドが地面についた衝撃波だけで僕の身体が飛ばされそうになる。

『作戦は?』
『オレに作戦なんかあると思うか?』
『愚問だったな』

2人は左右に分かれてブクドを攻撃するようだ。
今の会話はその打ち合わせなのだろう。

ブオーン!
ブクドが尻尾をサーカさんの方に向って振り回した。
サーカさんはひらりと回避した。
前に見た光景と同じ・・・ように見えたが違っていた。

ゴオオオオオオオーーーー!
尻尾を回しながら炎を飛ばしてきた。
いや、飛ばすというよりは炎が連なっている。

ジュッ!

『グッ!』
ドンリンさんの足がちょっとかすったようだ。
『ドンちゃん、洞窟に篭りっぱなしで運動不足ちゃうのん』
『こんなのかすり傷だ』

「メムロちゃん、もうちょいはなれときー」
サーカさんに言われて気がついた。
炎の範囲が意外と長いので、ここだと炎を喰らう可能性がある。

一応、剣を構えながらも後ろへ後退しておいた。

ブオーン!
また尻尾をサーカさんの方に向けて振り回した。
さっきのようにまた飛んでかわせるだろう。
ピタッ!
シュッ!
尻尾が途中で止まり、上向に振り上げた。

バチーン!
サーカさんに直撃した。

『おいおい、サーカの方こそ村でゴロゴロしていたのか』
『そんなわけあるかい、こいつが器用なだけや』

ヒューッ!
サーカさんがこっちに向って飛んでくる。

「サーカさん!」
「大丈夫やから、そこのいて」
そうだ今の僕の場所だと直撃する。

シュタッ!

「メムロちゃん、これがウルトラCの技ってやつや」
「は、はい?」
華麗に着地した事を言いたかったのだろう。

『サーカ!そっち行ったぞ!』
ドンリンさんが何か叫んだ!

サーカさんを見ている場合じゃなかった。
ブクドの方をみるとこっちに向って突進してきていた。

「メムロちゃん、回避や回避!」
「うわーーーっ!」

僕はドタバタしながら回避した。
ギリギリ突進からは免れた。
しかし、まだブクドの攻撃範囲内にいる。
早く退避しなくては。

剣を構えたまま、ジリジリと後退する。

バサッバサッバサッ・・・

ブクドが飛び出した。
これで窮地を脱したか?

「まだやで、メムロちゃん!」

ゴオオオオオオオーーーー!
ブクドは空から炎を吐き出した。

「うわーーーっ!」
必死で逃げる。

『ドンちゃん、アレ頼むわ』
『おうよ!』

また何かの作戦を決めたようだ。
サーカさんがドンリンさんの方に向って走り出した。
ドンリンさんが手を前で組んだ状態になっていた。

タッタッタッタッ!

『オラーッ!』
ドンリンさんの手の上にサーカさんが乗ったと同時にドンリンさんが叫びながら腕を上にあげた。
サーカさんもタイミングを合わせてジャンプする。

スパッ!スパッ!スパッ!

空中でもサーカさんの攻撃は舞を踊っているようだ。
連続攻撃でブクドの足を狙う。

グガーーーッ!
ドシーーーンッ!

たまらずブクドが落下した。

ドンリンさんはすかさずブクドの頭を攻撃する。

ドゴッ!

鈍い音がする。
かなり重たい一撃だ。

グギャーーッ!

ブオーン!
ブオーン!
ブオーン!

ブクドが闇雲に尻尾を振り回してきた。

「うわーーーっ!」
僕はさっきからこればっかりだ。

バサッバサッバサッ・・・

またブクドが飛び上がった。
と、思ったら急降下してきた。

ガシッ!

「へ?」
僕の身体が宙に浮いている。

「メムロちゃーん!」
サーカさんの声が下から聞こえる。

バサッバサッバサッ・・・

「サーカさーーーん!」

バサッバサッバサッ・・・
僕はブクドに捕獲されて連れ去られてしまったようだ。
え、どうなるの?

ブクドがさっきの大きな木の上に移動した。
そこには小さいブクドが居た。

ポイッ!

僕は無造作に投げ捨てられた。

パクッ!
小さいブクドに丸のみされた。

・・・

目の前にブクドが居る。
うわーっ!と飛びのいたら宙を浮いた。

「やっとオマエも空を飛べるようになったんだなメクド」
メクド?
空を飛ぶ?

メクドの章へつづく
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