世界の秩序は僕次第

虎鶫

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メクドの章:三つ巴編

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バサッバサッバサッ・・・
ヒューーーーッ!
空を飛ぶのって気持ちがいい。

メクドの章:三つ巴編

ヒューーーーッ!
あっという間にナトリの街の近くまで移動できた。
サーカさんと駆け抜けた草原も一瞬だ。

上から見る景色は新鮮だ。
これ以上街に近づくと攻撃されそうなので別のところに行ってみようかな。

そうだ!タスト村の様子を見に行こう!。
ヒューーーーッ!

やっぱり街と村では大きさが違う。
上から見ると一目瞭然だ。
僕の家も見える。

さすがにこの姿で家には帰られない。
タスト村の上空でUターンして一旦、巣のある木に戻ろうとすると前方から何かが飛んできた。

バサッバサッバサッ!

僕の目の前で止まった。
ブクドやリクドのような姿だが色が赤い。
もしかしてレクド?

「チッ!ガキがここでなんのようだ。ブクドから何も聞いてないのか?」
いきなり攻撃されたりはしないがかなりお怒りの状態なのはわかる。
「すみません、初めて飛べたのでつい・・・」
「初めてだろうがなんだろうが、決まり事はちゃんと守れ!ついでにブクドに早くしろと伝えておけ!」
怒られた。
でも、もっともである。

「す、すぐ戻ります」
「次は無いからな!」

バサッバサッバサッ!

必死で逃げた。
なるほど、あの辺り一帯はレクドの縄張りか。
ということは、ギノツに向うときにリクドと遭遇したってことは、あっちがリクドの縄張り。
3種族がそれぞれの縄張りを持ってる状況ってことか。
だから敵でも味方でもない。

あれ?
何か引っかかるものがある。
知ったところで何か変化があるわけではないが、知ることが出来る時に知っておいた方がよさそうだ。
僕は急いで巣に戻った。

バサッバサッバサッ!

巣に戻ったが誰も居なかった。
ブクドは不在か。
少し疲れたので休憩しよう。
ここだと回復が早いとも言ってたしな。

バサッバサッバサッ!

しばらくするとブクドが戻ってきた。
「帰ってたのか、メクド」
「さっき、レクドに会った」
「オ、オマエ、何やってるんだ!でも、よく無事で帰ってこれたな」
「初めてだからって許してくれた」
ブクドがホッとした表情になった。

「さっき、レクドとリクドの縄張りに入るなって言ってたよね」
「うむ、そういう決まりにしている」
決まり?
「レクドがブクドに早くしろって伝えとけって言われた」

「!」
今度はブクドの顔が強張った。
「早くしろって何を?」
「オマエには関係ない!」
「森に何かあるの?」
「・・・さっきの餌は知恵の実か何かだったのか!?」
どうやら森と縄張りは関係があるようだ。

「行くなと言っても、オマエは勝手に行くだろうな・・・」
ブクドが諦めた顔をした。

「ふむ・・・。リクドとは会ったか?」
「会ったような、会ってないような」
「なんだそれは?でも、まだちゃんと会ってないようだな」
「レクドとは偶然出合ったけど、縄張りがあるから行くなと言ったのはブクドでは?」
「まぁそうだが・・・」
なにやら歯切れが悪い。

「これから、リクドに会いに行け」
「え?でも、行くなって。というか、どこにいるかもわからない」
「山が噴火した話は前にしたな。その山の付近にいるはずだ」
「山の場所って?」
本当は知っているが、聞いておいた方が自然だろう。

「そういえばそうだな。あっちの方向だ」
セキダインの方を尻尾でさした。
そんな尻尾の使い方もあるのか。

「リクドに会ったら、オレの使いで来たと言え」
「わかった」
「ついでにセキダインの周辺も見ておけ」
僕は頷くと、セキダインの方に向って飛び立った。

ヒューーーーッ!

空の旅は快適だ。
人間でも空を飛ぶ事ができれば、タスト村からギノツ村までの移動も楽になるだろうな。
飛ぶ手段はないけど。

山が見えてきた。
噴火はおさまっている感じで、表面が溶岩の塊で覆われている。
森の方を見ると巨大な木が目立つ。
あそこにはアイツが!

炎で焼き払うか?
いや、それだとインツの身も危ない。

バサッバサッバサッ!

何かが飛んできた。
恐らくリクドだろう。

僕の目の前で止まった。
やっぱりサーカさんと戦っていたやつだ。

「ガキがなんのようだ?」
リクドはレクドほど高圧的な態度ではない。

「リクドに会ったら【ブクドの使いで来た】と言えといわれたから来た」
「お使いってわけか。で、ブクドはなんと?」
「それだけしか聞いてない。いや、ついでにセキダインの周辺も見て来いと言われた」
「なるほど。どうせ、レクドに急かされたのだろう。レクドはいつも面倒事を押し付けてくるからな」
なかなか、するどい。

「まぁいい。見ての通りだ。山は噴火してワフどもはほぼ全滅。人間どもはかろうじて避難したみたいだが。森の方は相変わらず妖しい雰囲気が漂っている。良くも悪くも進展なしだ」
「さっき、面倒事と言っていたが、面倒事とは?」
「ブクドから何も聞いてないのか?」
「聞いたら、リクドに会いに行けと言われた」
「クソッ!結局いつも貧乏くじを引くのはオレか!どいつもこいつも面倒事を押しつけやがって!せっかく森が平穏になったと思ったのに!」

リクドがふてくされている。
3匹の関係はなんとなく分かった。
・・・いや、森が平穏?

「森が平穏とは?」
「セキダイコの森だ。異変は起きたがすぐにおさまった」
あぁ、スイダの件か。
というか、スイダを倒したのは僕だけど。

「セキダイコの森とリクドとの関係は?」
「元々あそこはオレの縄張りだ」

え?
どういうことだ、話が見えない。

「あそこはレクドの縄張りで、ここがリクドの縄張りなのでは?」
「だから違うって言ってるだろ。本当はあそこがオレの縄張りで、ここはオマエらの縄張りだ!」

え?え?
ますます意味がわからない。

「じゃあ、今ブクドの縄張りは元々はリクドの縄張り?」
「そういうことだ」

そういえばサーカさんがリクドに監視範囲が違うと言っていたな。
リクドの言う事の信憑性は増してきたが、なんで縄張りが入れ替わってるんだ?


「まったく、ブクドもちゃんと説明しておけよ」
いや、本当にその通り。

「すみません」
「いや、オマエが悪いわけじゃないから謝らなくてもいい」

うーん、このまま帰ってもブクドは本当の事を言わないだろうな。
リクドには気の毒だがもう少し聞いてみるか。

ストレートに聞こう。
「縄張りが入れ替わったのはなんで?」
リクドの顔がムッとした感じになった。
「騙された」
「誰に?」
「ブクド、いやレクドだな」

・・・

「確かに、一番ずるいのはレクドですね」
「だろ?アイツはいつもそうだ」
思った以上に根深そうな関係だ。

「それで、リクドさんの巣はどこに?」
「今は無い」
「え、無いってなんで?」
「元々は山の上にブクドが作った巣があったが噴火させてしまった」
あぁ、山が噴火したから無くなったのか。

さすがに噴火の原因が僕にあると知ったら怒るだろう。
・・・ん?
させてしまった?

「あの、噴火させてしまったって?」
「あ、いや、その、えっと・・・」
リクドの言葉がしどろもどろになっている。

「もしかして、球を見ませんでした?」
「し、知らん。勝手に動く妖しい球なんか見てない!」
「球しか言ってませんが・・・」
「オ、オマエ、ずるいぞ!そうやってみんなオレをバカにするんだ!」
なんだかリクドが哀れになってきた。

「で、その球をどうしたんですか?」
観念したのかリクドは正直に告白した。
「妖しい球だったので攻撃した」
「攻撃ってブレス?」
頷いた。

なんてことだ!
きっかけを作ったのは球だが、本当の原因はリクドの炎だったのか。

本来ならブクドの縄張りだったが、今はリクドの縄張りになっている事をフーリエがプリダルエに報告をしていた。
あの球の正体はわからないままだが、リクドなら攻撃すると読んでいたのか。

もし、ブクドだったら?
プリダルエの事だから別の手土産になっているだけで、恐らく結果は同じだろう。
何らかの方法で噴火させる、それがプリダルエの策だ。

「色々と教えてくれてありがとう、ブクドの元に帰ります」
「あぁ、よろしく言っておいてくれ」
まったくのんきなヤツだ。

ヒューーーーッ!

リクドに会って情報は聞けた。
でも、関係性と僕の罪の意識が若干薄れたぐらいで何も解決はしていない。
森に行けば何かわかるかもしれないが情報が足りない。
ブクドがどこまで教えてくれるかが問題だ。

リクドと違って骨が折れそうだ。

サーカとドンリンの章へつづく
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