世界の秩序は僕次第

虎鶫

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メインストーリー2

メクタウの章:名前編

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セキダイコに行った時以上に疲れたが、ようやく住処が見えてきた。
「おかえり、メクタウさ・・・」
いつものようにウスタスさんが出迎えてくれたが様子が変だ。

メクタウの章:名前編

言葉を詰まらせたウスタスさんは僕を指差して、口をパクパクさせている。
いや、正確に言えば、指は僕の後ろの方をさしている。

バッ!
僕が後ろを振り返ると・・・!

そこにはアイツが居た。
全く気配を感じなかった。
いつの間に?
それよりも何のようなのだ。

『ほう、ここがタウス族の住処か』
『オ、オマエ・・・なんのようだ!』
『メクタウ、オマエの知りたかった目的を伝えるために。そして見識を広げるためについてきた』
本当にこいつは何がしたいのだ。

「メクタウ様、この者と話ができるのですか?」
ウスタスさんが心配そうに聞いてきた。
「一応ね。あと、危険かもしれないからウスタスさんは下がっていて。あ、いや、みんなを避難させる準備をしておいて」
「は、はい。わかりました」
そういうと、ウスタスさんはみんなの元へ向っていった。

『見識を広げてどうするつもりだ』
『どうしようか。メクタウならどうしたらいいと思う?』
何を考えているかさっぱり読めない。

『オレは平穏な生活を望む。それだけだ』
『ほう、ではもし、その平穏を乱すようなヤツが現れたらどうする?』
『説得をしてみるが、通じないようであれば平穏を守るために戦うしかないだろうな』
『ふむ、なるほどな・・・』
もしかして、試されている?

『オマエに出会う前に森の近くにある2つの洞窟へ行った』
ドマシとジュマシの洞窟か。
『どちらの洞窟も出会うヤツらは攻撃してくる様子はなく、再来だー!と歓喜の声を上げていた』
そこはボルカシの話と共通するか。

『あいつらはオレの言う事をなんでも聞いてくれるような雰囲気だった』
『恐らく、そうだろうな』
『オマエが言った【長】、つまりオレはあいつらの【長】。上に立つ者なのだろう』
『そ、そういう事になるな・・・』
『上に立つ者・・・そう認識した瞬間、何物にも代え難い快感を得ることが出来た』
まずい、これはまずい展開になりそうだ。
そうならないように誘導しなければ。

『前にオレはオレを取り戻すとオマエに言ったな』
『あぁ、オレには意味がわからないが、そう言ったな』
いや、恐らくはボルカシが関係あるのだろう。

『オマエが欲しがっていた目的とやらが決まった』
『その目的はたぶん間違っている!』
『まだ何も言ってないが?』
焦りすぎて先走りすぎたか。

『オマエの言う平穏な生活。それもいいだろう』
『そうだ、争い事は何も産み出さない。それでよくないか?』
『だが、オレを取り戻すためにはこの前のように障害がある!』
ロキさんの件か。

『その障害を乗り越えるには戦いは必須!』
やっぱりそうなるのか。
『オマエがオマエというのを取り戻したら?』
『オレもそれで終わりだと思っていた・・・だが、オマエが教えてくれた。上に立つ者としての快感を!』
くっ、皮肉にも僕の発言がこいつをマズイ方に向わせてしまったのか。

『洞窟の中で見て知った。この世界は広く様々な種族が居るという事を』
『そ、それで・・・』
『オレはその全てを手中に治める!』
思った通りだった。
僕は完全にしくじった。
こいつは動き出すだろう。
何か足止めさせる手段はないか?

『それで、手始めにタウス族を攻めに来たのか?』
『自分の事を【長】と言うオマエを倒せば、タウス族はオレに従うだろう』
『では、ここでオレと戦うのか?』
『いや・・・最初はそのつもりで来たが、オマエとちゃんと向き合うことでわかった』
『何がわかった?』
『オマエには何か秘密がある。それが何かはわからないが、今はオマエと戦う時ではない事がわかった』
『!』
感覚で把握したのか。
いや、考えようによってはタウス族はまだ安全という事か。

『それで、オマエはこれからどうするのだ?』
『まだ何も決まっていないが、徐々に勢力を広げていく!』
『タウス族や人間も攻めるのか?』
『タウス族はオマエがオマエで無くなった時に攻め込む。人間は数が多いので手を焼きそうだ』
どちらも当面は大丈夫・・・か?

『話を戻すが、何をするためにここにきた?』
『オマエが目的を知りたがっていたから、それを伝えに来た』
意外と律儀なヤツだ。

『それと、もう1つ』
なんだ?
『オレは今日からプリジュド!そう呼ぶがよい!』
あ、名前を決めたのね。
態度は相変わらずだがやっぱり律儀だ。

『わかった、プリジュド。ご足労すまないな』
一応、礼を言っておいた。

『それだけだ。では、またな』
そう言うとプリジュドが立ち去ろうとした。

そうだ!
『プリジュド!』
『なんだ?何か用があるのか?』
『教えてもらった礼ではないが、いい事を教えてやる』
『ほう、なんだ?』
『オマエと同じようにこの世を手中に治めようとしているやつがいる。名はプリダルエ』
『なるほど。それでオレをけしかけるつもりか。だが、いずれは戦う相手になるだろう。礼を言う』
さすがにこの手にはのらないか。

でも、何らかの布石にはなるのかもしれない。
プリジュドは森へと帰っていった。

とりあえず、タウス族は無事ですみそうだ。
しかし、これからどうする。
僕はまだこの姿のままで居ていいのか。
人間はすぐに攻めないような感じだが、それも時間の問題だろう。
なにより、ナトリにはボルカシが居る。

ウスタスさんなら妙案を出してくれるかな。
なんにしても、みんなを安心させにウスタスさんのところに行くか。

メクタウの章つづく
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