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ロイドのはからい
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三日後。
道具屋を閉めたヴァルは、ロイドとの約束通り王城区にある大噴水へ向かっていた。
頭に浮かぶのは、三ツ星レストランの高級料理。
ちょうど夕飯時なので、想像するだけで口の中が湿った。
「さ~て、どんなお肉が俺を待ってんのかな~」
夕闇が迫る中、ヴァルは噴水前に到着した。
辺りを見渡すが、ロイドの姿はまだない。
ヴァルは噴水の縁に腰かけて、ロイドを待つ。
しかし、ロイドはなかなか現れなかった。
(ロイドの奴おっそいな~。予約時間もうすぐじゃん。なにやって――)
「ヴァ、ヴァル……」
その時、不意に名前を呼ばれヴァルは顔を上げる。
だが、そこにいたのはロイドではなかった。
「ア、 アメリア……」
目の前に立っていたのは、紅蓮の勇者アメリア=レッドストーン。ヴァルは驚く。それは、偶然の遭遇だけが理由ではない。
彼女はいつもの冒険服ではなく、赤い髪が映える漆黒のドレスを身に纏っていた。
お城の舞踏会に出席しても全く不思議ではない煌びやかな服装。
元より大人っぽいアメリアなので、こんな格好は本当によく似合う。思わず見入ってしまうほど、女性的な魅力を漂わせていた。
「す、すまない。待たせてしまって……」
アメリアは恥ずかしそうに呟くが、ヴァルには彼女が何を言っているのかよく分からなかった。
「は? え? 待たせてってどういうことだ?」
「そ、そうか。ヴァルは聞いてなかったんだな。実は、ロイドさんにレストランのチケットを貰ったんだ。ヴァルと仲直りしてこいと……」
「ロイドが!? あいつ……そういうことか……」
思い返すと、ロイドの奴は「もう一枚チケットを持っている」と言っていたが、「俺が一緒に行く」とは一言も言っていなかった。きっと最初からアメリアにチケットを渡すつもりだったのだろう。例の一件以来ぎくしゃくしていたヴァルとアメリアの仲を気遣ってくれたようだ。
「もしかして、その恰好も?」
「わ、私は普通の恰好でいいと言ったんだが、ロイドさんがこれを着ていけと……や、やっぱり変か?」
アメリアは恥ずかしそうに呟く。
「いいや、よく似合ってると思うぜ。最初見た時は、どこぞのお姫様かと思ったしな」
「や、やめてくれ……。すごく恥ずかしい……。でも……ありがとう」
顔を真っ赤にして照れるアメリアは、紅蓮の勇者などではなく、普通の女の子に見えた。どこか嬉しそうに頬を緩める彼女を見て、ヴァルも思わずドキっとしてしまう。
「じゃ、じゃあ、そろそろ行こうぜ。予約時間ももうすぐだし」
照れ臭さを隠すようにヴァルは歩き始める。
アメリアもヴァルに続いたが、慣れない恰好のせいだろうか、すごく歩きにくそうにしていた。
「す、すまない。こういう恰好は慣れていなくて……先に行ってくれて構わないから」
「なに言ってんだよ、お前は……。ほら」
ヴァルはアメリアの隣に立って右腕を差し出す。
「え?」
「掴まれよ。歩きにくいんだろ?」
「し、しかし……」
「なに遠慮してんだよ。ガキの頃はおんぶにだっこ何でもありだったじゃねえか。それに比べりゃ腕組むくらいなんともねえだろ」
「あ、あの頃とは……いや、そうだったな。鈍くさい私は、転んで怪我をしてはヴァルにおぶってもらっていた気がする。私はやっぱり何も変わっていないようだ。ありがとう、ヴァル」
アメリアは、そう言ってヴァルの右腕に身体を寄せてきた。別に下心があったわけではないが、柔らかな膨らみが腕に触れた瞬間は、やはり胸が高鳴ったしまう。
「そ、それじゃあ行くか」
ヴァルはアメリアに合わせてゆっくりと歩き出す。
道具屋を閉めたヴァルは、ロイドとの約束通り王城区にある大噴水へ向かっていた。
頭に浮かぶのは、三ツ星レストランの高級料理。
ちょうど夕飯時なので、想像するだけで口の中が湿った。
「さ~て、どんなお肉が俺を待ってんのかな~」
夕闇が迫る中、ヴァルは噴水前に到着した。
辺りを見渡すが、ロイドの姿はまだない。
ヴァルは噴水の縁に腰かけて、ロイドを待つ。
しかし、ロイドはなかなか現れなかった。
(ロイドの奴おっそいな~。予約時間もうすぐじゃん。なにやって――)
「ヴァ、ヴァル……」
その時、不意に名前を呼ばれヴァルは顔を上げる。
だが、そこにいたのはロイドではなかった。
「ア、 アメリア……」
目の前に立っていたのは、紅蓮の勇者アメリア=レッドストーン。ヴァルは驚く。それは、偶然の遭遇だけが理由ではない。
彼女はいつもの冒険服ではなく、赤い髪が映える漆黒のドレスを身に纏っていた。
お城の舞踏会に出席しても全く不思議ではない煌びやかな服装。
元より大人っぽいアメリアなので、こんな格好は本当によく似合う。思わず見入ってしまうほど、女性的な魅力を漂わせていた。
「す、すまない。待たせてしまって……」
アメリアは恥ずかしそうに呟くが、ヴァルには彼女が何を言っているのかよく分からなかった。
「は? え? 待たせてってどういうことだ?」
「そ、そうか。ヴァルは聞いてなかったんだな。実は、ロイドさんにレストランのチケットを貰ったんだ。ヴァルと仲直りしてこいと……」
「ロイドが!? あいつ……そういうことか……」
思い返すと、ロイドの奴は「もう一枚チケットを持っている」と言っていたが、「俺が一緒に行く」とは一言も言っていなかった。きっと最初からアメリアにチケットを渡すつもりだったのだろう。例の一件以来ぎくしゃくしていたヴァルとアメリアの仲を気遣ってくれたようだ。
「もしかして、その恰好も?」
「わ、私は普通の恰好でいいと言ったんだが、ロイドさんがこれを着ていけと……や、やっぱり変か?」
アメリアは恥ずかしそうに呟く。
「いいや、よく似合ってると思うぜ。最初見た時は、どこぞのお姫様かと思ったしな」
「や、やめてくれ……。すごく恥ずかしい……。でも……ありがとう」
顔を真っ赤にして照れるアメリアは、紅蓮の勇者などではなく、普通の女の子に見えた。どこか嬉しそうに頬を緩める彼女を見て、ヴァルも思わずドキっとしてしまう。
「じゃ、じゃあ、そろそろ行こうぜ。予約時間ももうすぐだし」
照れ臭さを隠すようにヴァルは歩き始める。
アメリアもヴァルに続いたが、慣れない恰好のせいだろうか、すごく歩きにくそうにしていた。
「す、すまない。こういう恰好は慣れていなくて……先に行ってくれて構わないから」
「なに言ってんだよ、お前は……。ほら」
ヴァルはアメリアの隣に立って右腕を差し出す。
「え?」
「掴まれよ。歩きにくいんだろ?」
「し、しかし……」
「なに遠慮してんだよ。ガキの頃はおんぶにだっこ何でもありだったじゃねえか。それに比べりゃ腕組むくらいなんともねえだろ」
「あ、あの頃とは……いや、そうだったな。鈍くさい私は、転んで怪我をしてはヴァルにおぶってもらっていた気がする。私はやっぱり何も変わっていないようだ。ありがとう、ヴァル」
アメリアは、そう言ってヴァルの右腕に身体を寄せてきた。別に下心があったわけではないが、柔らかな膨らみが腕に触れた瞬間は、やはり胸が高鳴ったしまう。
「そ、それじゃあ行くか」
ヴァルはアメリアに合わせてゆっくりと歩き出す。
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