30 / 34
シリアスなハゲ王
しおりを挟む
「あんたはたぶん間違ってないよ。あんたが抱いた憎しみと怒りは、それだけ強かったってことなんだろ」
「クク、お前ならそう言うと思っていた。俺と来い。俺ならお前の痛みを分かってやれる。もう我慢する必要はないんだ。お前の不満を――」
「でも、俺はあんたと同じ道は歩まない!」
ヴァルが断言すると、ミルザの目つきが変わった。
それを見て、ヴァルはゆっくりと腰の剣を抜く。
「ほう、俺に剣を構えるか」
「勘違いすんなよ。別に王様を守って点数稼ぎをしようってわけじゃないぜ。王様のことは正直好きじゃねえし、あんたには同情する部分も大きい」
「ならば、なぜ俺に逆らおうとする」
「俺は……この街が好きだからだ」
ヴァルの素直な気持ちだ。
この街で道具屋を営み、その中で触れ合ってきた人々の想いがヴァルに剣を抜かせた。今は純粋にこの街を守りたいと思う。それは勇者として旅立つことよりも強い想いだった。
「この城は、街に住む人々の中心であり支えだ。そんな場所をあんたたちのような人間に好き勝手させるわけにはいかない!」
「そうか……残念だ。お前とは分かり合える気がしたんだがな」
ミルザも剣を抜き、ヴァルに構えた。その瞬間、二人の間にある空気がぴたりと止まる。
僅かな静寂の後、二人が動いたのはほぼ同時だった。
二つの刃が交差し、甲高い金切音が玉座の間に響く。
ヴァルもこれで剣の扱いには、そこそこ自身がある。冒険の旅に出られなくても、訓練を欠かしたことはない。
それでも、ミルザの腕はヴァルを遥かに凌駕していた。
(く……やっぱこいつ強え……)
そもそもの勇者としての経験値が、冒険に旅立っていないヴァルと、曲がりなりにも幾多の死線を潜り抜けてきたであろうミルザでは雲泥の差。剣がぶつかり合う度に、ヴァルは少しずつミルザに押されていく。そして――。
「うあっ!!」
つばぜり合いで押し負けたヴァルは、地面に倒れこむ。
「無駄だ。力も経験も信念もないお前が、俺に勝つことなどできない。俺の下につかぬのなら、とっとと消えろ。これ以上は、ただでは済まんことになるぞ」
「くそっ、俺が言ってみたい台詞を……」
完全に雑魚扱いされるヴァル。
悔しいが、実力差は歴然だ。
(大人しくあいつの言うことを聞くつもりはねえが……どうする? このままじゃ歯がたたな――)
ヴァルがそんなことを考えていると――。
「ヴァル=ブルーイット! これを使うのじゃ!」
王様が叫び声を共に、小さな小袋を投げて寄越した。
ヴァルの心に希望の光が灯る。
王様からのサポートアイテムだ。きっと起死回生の一品に違いない。
「あ、ありがてえ! じゃあ、遠慮なく使わせて――!?」
袋の中に入っていたのは緑のアレ――薬草だった。
「おい……なんだよ、コレ」
「何って、見ての通り薬草じゃ。遠慮なく使って体力を回復するが良い」
「そうじゃねえだろうが!!」
ヴァルは薬草を床に叩きつけた。
「お前、王様だろ!? だったらさ、もっとこうゴージャスなアイテムなり武器なりを寄越せよ! 国宝級のがあんだろ? なんで薬草なんだよ! お前のせいでシリアスな雰囲気が台無しだよ!」
「馬鹿者! せっかくのワシのサポートを無駄にするでない!」
「うるせえ! だったら、てめえの頭皮にでも塗ってろ!」
「えっ? 薬草ってハゲに効くの? そんなに万能なの? まさしく魔法のアイテムじゃん!」
おおはしゃぎする王様を見て、ヴァルは「やっぱりこいつをアテにした自分が愚かだった」と思う。
「クク、お前ならそう言うと思っていた。俺と来い。俺ならお前の痛みを分かってやれる。もう我慢する必要はないんだ。お前の不満を――」
「でも、俺はあんたと同じ道は歩まない!」
ヴァルが断言すると、ミルザの目つきが変わった。
それを見て、ヴァルはゆっくりと腰の剣を抜く。
「ほう、俺に剣を構えるか」
「勘違いすんなよ。別に王様を守って点数稼ぎをしようってわけじゃないぜ。王様のことは正直好きじゃねえし、あんたには同情する部分も大きい」
「ならば、なぜ俺に逆らおうとする」
「俺は……この街が好きだからだ」
ヴァルの素直な気持ちだ。
この街で道具屋を営み、その中で触れ合ってきた人々の想いがヴァルに剣を抜かせた。今は純粋にこの街を守りたいと思う。それは勇者として旅立つことよりも強い想いだった。
「この城は、街に住む人々の中心であり支えだ。そんな場所をあんたたちのような人間に好き勝手させるわけにはいかない!」
「そうか……残念だ。お前とは分かり合える気がしたんだがな」
ミルザも剣を抜き、ヴァルに構えた。その瞬間、二人の間にある空気がぴたりと止まる。
僅かな静寂の後、二人が動いたのはほぼ同時だった。
二つの刃が交差し、甲高い金切音が玉座の間に響く。
ヴァルもこれで剣の扱いには、そこそこ自身がある。冒険の旅に出られなくても、訓練を欠かしたことはない。
それでも、ミルザの腕はヴァルを遥かに凌駕していた。
(く……やっぱこいつ強え……)
そもそもの勇者としての経験値が、冒険に旅立っていないヴァルと、曲がりなりにも幾多の死線を潜り抜けてきたであろうミルザでは雲泥の差。剣がぶつかり合う度に、ヴァルは少しずつミルザに押されていく。そして――。
「うあっ!!」
つばぜり合いで押し負けたヴァルは、地面に倒れこむ。
「無駄だ。力も経験も信念もないお前が、俺に勝つことなどできない。俺の下につかぬのなら、とっとと消えろ。これ以上は、ただでは済まんことになるぞ」
「くそっ、俺が言ってみたい台詞を……」
完全に雑魚扱いされるヴァル。
悔しいが、実力差は歴然だ。
(大人しくあいつの言うことを聞くつもりはねえが……どうする? このままじゃ歯がたたな――)
ヴァルがそんなことを考えていると――。
「ヴァル=ブルーイット! これを使うのじゃ!」
王様が叫び声を共に、小さな小袋を投げて寄越した。
ヴァルの心に希望の光が灯る。
王様からのサポートアイテムだ。きっと起死回生の一品に違いない。
「あ、ありがてえ! じゃあ、遠慮なく使わせて――!?」
袋の中に入っていたのは緑のアレ――薬草だった。
「おい……なんだよ、コレ」
「何って、見ての通り薬草じゃ。遠慮なく使って体力を回復するが良い」
「そうじゃねえだろうが!!」
ヴァルは薬草を床に叩きつけた。
「お前、王様だろ!? だったらさ、もっとこうゴージャスなアイテムなり武器なりを寄越せよ! 国宝級のがあんだろ? なんで薬草なんだよ! お前のせいでシリアスな雰囲気が台無しだよ!」
「馬鹿者! せっかくのワシのサポートを無駄にするでない!」
「うるせえ! だったら、てめえの頭皮にでも塗ってろ!」
「えっ? 薬草ってハゲに効くの? そんなに万能なの? まさしく魔法のアイテムじゃん!」
おおはしゃぎする王様を見て、ヴァルは「やっぱりこいつをアテにした自分が愚かだった」と思う。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる