世界一の鍛冶師を目指して!〜不遇スキル『鍛冶』と前世の知識の組み合わせが最強だった件〜

福寿草真@異世界エステ1巻12/25発売

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3章 魔剣創造と変わり者の竜人娘

プロローグ 王国ととある奴隷の噂

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「ファン、シュム。外を見てごらん」

 ガタゴトと馬車に揺られる中、突然そんな男声が聞こえてくる。
 その声に従って、僕は幌の一部──今回、防水布を持ち上げることで、窓のように開閉できる構造であった──を持ち上げると、外へと顔を覗かせた。

「あれがベゴニア王国の王都シュルカ……」

 馬車の前方、開けた視界の先に、巨大な外壁が見える。
 その大きさは、当然ではあるがガルドの町をゆうに超える。

「うにゃー! すごいにゃ! ひっろいにゃー!」

 僕の背中に抱きつくようにして、風に銀髪と黒毛の猫耳を揺らすのは獣人族にして僕のパーティーメンバーであるシュムだ。
 彼女は僕をギュッと抱きしめる。その力の強さから、シュムがかなり興奮していることがわかる。

「どう? 凄いでしょ!」

 ここで後方からそんな女声が聞こえてくる。
 声を受け、ちらと馬車内へと視線を向けると、桃髪の美少女がニコニコと人の良い笑みでこちらを見つめていた。

 彼女はルナセアさん。今回共に王都へと拠点を移すことになった冒険者パーティー、紫電一閃のヒーラーである。

 15歳という年齢でありながら、大人びた体躯を持つ美少女で、僕が大怪我を負った際に全力で回復をしてくれた命の恩人でもある。

「広いんだろうなとは思ってましたがまさかこれほどとは思いませんでした」

 僕はルナさんに笑顔を返す。すると続くように「シュムも! シュムもそう思ったにゃ!」とシュムが興奮冷めやらぬ様子で声を上げた。

「やっぱり初めて見た時は興奮するよね! 私もそうだったよ!」

 そんな僕たちに同調するように声を上げたのは、水色髪をしたこれまた美少女であった。

 彼女はカンナさん。14歳という年齢相応の天真爛漫な女性。ルナさんと同じく紫電一閃のメンバーであり、水魔法使いの後衛担当である。

 と、客車内へと戻り、そんな彼女達と会話をしつつ過ごしていると、ここで馬車が停車。その後少しして、外から会話が聞こえてくる。

 ……検問かなにかだろうか。

 しかしそれも一瞬のことで、すぐに馬車は動き出した。

 途端に聞こえてくる喧騒。
 ざわざわと、しかし心地の良いその声に、僕は再度客車の外へと顔を出す。
 同時になにやら腰辺りに柔らかい感触を覚える。

 ……なるほど、どうやらルナさんが危ないからと僕の身体を支えてくれているようだ。

 人通りもあるだろうと、控えめに顔を出した僕の視界に、広大な街並みが広がる。
 僕は思わず感嘆の声を上げた。

「うわーー!」

「どうだファン! 町の中も凄いだろ!」

 と、ここで御者席から力強い声が聞こえてくる。
 そちらへと視線を向けると、そこには紫電一閃のタンクである、アキレスさんの姿があり、馬を操作しながら、こちらへと豪快な笑みを浮かべている。

「はい! びっくりしました!」

 そんな彼に、僕は高いテンションのままそう返事をした。

 僕はそのままに視線をあちこちに向ける。
 やはり国が違うと店構えにも多少の差はあるのか、色々と気になる店が多く、思わずソワソワしてしまう。と、ここで御者席から、再び男声が聞こえてくる。

「観光も良いけれど、その前に冒険者ギルドだよ」

 アキレスさんの隣に座るその声の主は、メリオさん。紫電一閃のリーダーであり、14歳という年齢をつい忘れてしまうほどに大人びた方だ。

 僕はその声に「はい!」と返すと、再び馬車の中へと戻った。

 なぜギルドへ真っ先に向かうのか。
 道中に聞いたのだが、冒険者は、籍を移す際はまずギルドに行かなければならないらしい。

 町に入り、ある程度進んだところで馬車を預けると、僕達はギルドへ向けて歩いた。

 その間、紫電一閃の皆さんはこちらでも名が知れているのか、周囲からいくつもの視線を向けられる。
 しかしその中にシュムに対する侮蔑の表情はない。

 ……よかった。大丈夫そうだ。

 ホッと息を吐きつつも歩みを進めると、ここで前方に見知った形状の建物が見えてくる。

「メリオさん、もしかして……」

「うん。あれが王都の冒険者ギルドだね」

「あれが……」

 建物に視線を固定しながら、思わずボーッと呆けてしまう。
 しかしそれも仕方がないだろう。

 何故ならば、前方に見えるその建物は、見知った形状であれど、その大きさはガルドの町のものとは比べ物にならないくらいに大きいからである。

「凄い……」

「なんてったって王国一の冒険者ギルドだからな! でかいのも当然だ!」

 言いながら、アキレスさんが豪快に笑う。

「さあ、時間もあれだし早速受付に向かおうか」

「はい!」

 言葉の後、僕たちは再度歩き出した。そして少しして、ついにギルドの中へと入る。

 内部も当然ではあるがガルドの町とは比べ物にならない広さであった。
 全体の構造としては同じである。だがたとえば受付嬢の数がガルドの町の3倍であったり、貼り出されている依頼の数が比べ物にならない程多かったりしている。

 当然人も多い。僕はガルドの町では感じられなかった活気に圧倒されながら、メリオさんに続いて受付へと向かった。

 ◇

 冒険者ギルドで籍を移した後、続いて商人ギルドへと向かう。そしてこちらでも同様の手続きを済ませた。

「終わったかい?」

「はい。お待たせしました」

「よし。それじゃ次は観光がてら宿を探そうか」

「わかりました!」

 言葉の後、僕たちは町を歩く。

 ちなみに王都の作りとしては、中央に王族の住む王城があり、その周囲を貴族街が、さらにその外周に一般市民街が広がっている形だ。
 当然ではあるが貴族街を含めた中心部に僕たちが泊まれるような場所はないため、今回歩くのは一般的な市民街である。

 ……いつか貴族街やその内部に入ることはできるのだろうか。

 噂によると王国一の学園や高位冒険者の拠点なども中心部にはあるらしい。
 機会があれば是非見てまわりたいところである。

 そんな将来的な願望も抱きながら僕たちは観光を続ける。

 こうして主要なエリアを見て回った所で、僕とシュムは一度紫電一閃の皆さんと別れることにした。

 これは彼らと僕たちでは泊まる場所が異なるため、それぞれの宿で予約を取るためである。

 程なくして僕とシュムは紫電一閃の皆さんおすすめの宿へと到着した。そこでオーナーさんに空きがあるか尋ねると、どうやら2人部屋であれば問題なく空きがあるらしい。

 ということでひとまず1週間分予約を取り、料金を支払った。
 ちなみに値段は2人で1日銀貨2枚。以前泊まっていた宿より1日あたり銀貨1枚高くなる。
 正直決して安いとは言えないが、露店である程度稼いでいた僕にとってはそれなりの期間であれば払える値段であった。

 ただし当然ではあるが働かなければ近いうちに貯金がなくなる。そのため準備が整い次第まずは冒険者として活動を始めようと僕とシュムは決意を固めた。

 ◇

 宿に荷物を置いた後、僕たちはとある飲食店へと向かった。というのも、宿確保後はここで共に食事を取ろうと紫電一閃の皆さんと話をしていたのである。

「皆さんもういるかな?」

「いるみたいにゃ! ファン、早くいくにゃ!」

「うん!」

 シュムがご自慢の嗅覚で彼らの存在を感じ取ったため、僕たちは急いで飲食店へと入った。そしてキョロキョロと辺りを見回す。

「こっちだよ~」

 ルナさんが大きく手を振る。

「あ、すみませんお待たせしました!」

「いや、俺たちも今きたばかりだよ。さぁ、座って」

「ありがとうございます!」

 メリオさんの言葉に従い、僕は腰掛ける。ちなみに席としてはルナさんとシュムに挟まれる位置となる。ガルドの町にいた頃からこれが定位置であったため、僕は特に疑問を抱くこともなく席に着いた。

 こうして全員が揃った所で皆各々食べたいものを注文し、食事を始めた。

 時折談笑を挟みつつ美味しい料理に舌鼓を打つ中で、僕はタイミングを見計らってずっと気になっていたことを皆さんへと問うた。

「実はこの前の襲撃の件を踏まえて、用心棒を雇おうと考えているのですが……何か良い案とかってありますか?」

 僕の言葉を受け、メリオさんは顎に手をやりながら目線を上へとやる。

「ふむ、用心棒か。色々と選択肢はあるだろうけど、やはり信頼のおける存在となると奴隷が最適かな」

「やっぱりそうですよね」

 しかし僕は浮かない表現をする。その理由がわかっているのだろう、メリオさんはうんと頷く。

「ただファンの懸念する通り、用心棒が務まるほど強者でかつ信頼のおける相手、例えば犯罪奴隷以外となると、相応の金額にはなってしまうね」

「ちなみに相場は……」

「うーん。冒険者ランクB以上で犯罪奴隷以外となると、どんなに安くても金貨200枚以上にはなるかな」

「ですよね……」

「条件の良い奴隷となるとどうしてもね」

 僕はガックリと肩を落とす。

「情報ありがとうございます。……ひとまずは別の方向で考えてみます」

 と、ここで突然ルナさんが何かを思い出したかのように「あっ」と声を上げた。

「どうしたルナ」

「あの子ってどうなったんだろう。ほら1年前に王都に来た時に噂になった……」

「あぁ、あの変わり者の少女か!」

「変わり者の少女……?」

 アキレスさんの言葉を繰り返すように声を上げる。
 メリオさんは彼らの話を受けて思い出したように「あぁ……」と声を漏らす。ただしその表情はあまり優れない。

「あのよろしければ教えていただけませんか?」

「実はね1年前とある奴隷商館に竜人の娘が入荷されたという噂が広がってね」

「竜人! あの強い人達にゃ!?」

「そう。シュムの言う通り強者の一族である竜人族の少女だよ。さらに滅多に姿を現さない珍しい種族でもあってね。その強さと物珍しさから、多くの人々が彼女を購入しようとその商館に赴いたらしいんだ。ただ……結局誰も購入できなくてね」

「購入できない……? そんなに高価で……いや、それでも貴族なら手は出せるはず……」

「そう、本来ならどんなに高値でも誰かしら貴族が購入するはずなんだ。ただこの竜人の少女は購入の条件としてとんでもない要求をしていてね」

「どんな要求にゃ?」

「──直接対峙し、彼女を屈服させ、彼女の手に掛けられた手錠の鍵を外すこと……らしい」

「にゃ!? そんにゃの無理にゃ!」

「そ、そんなに強いんですか? その竜人の少女は」

「少なくともAランク冒険者と同等の力を有しているという噂だよ」

「そ、そんなに……」

 僕は驚愕しつつもふと疑問を口にする。

「にしても奴隷が自らの購入の条件をそこまで詳細に定めることって可能でしたっけ」

 奴隷とはいうが、この世界では扱いはそこまで悪くはない。故に奴隷堕ちしたとしても購入者に多少の条件を設定することができるのが常識だ。
 ただし今回のようにこうも具体的な条件を定めるのは、商館側が不利になるためどんなに優遇されていようと不可能であったはずだが。

「普通は難しいね。ただ詳しくは知らないけれど、どうやらかけた隷属魔法が不完全だったようでね。こうして詳細な条件を定めることができたらしいんだ」

「隷属魔法が不完全……そんなこともあるんですね」

「本来ならありえないことなんだけど、相手が竜人族だからね。想定外のことでもあったのかもしれない」

「なるほど……」

「ただ長々と説明したけれど、これは1年前の噂さ。さすがの強者といえども、すでに誰かに購入されていてもおかしくはない。けれど……どうだい? どうせなら時間もあるし様子を見に行ってみるかい?」

「えっ!? いや、仮にいまだ残っていても僕ではどう頑張っても購入なんてできませんし……」

 僕の声に、メリオさんは微笑みながら言葉を返す。

「わからないさ。なんとなくファンなら特別な方法でその子の要求を満たすんじゃないかと、俺はそう思うんだ」

「そんなかいかぶり過ぎですよ。さすがにAランク相当を屈服させるなんてそんなこと僕には……」

「ファン~シュム見てみたいにゃ」

「シュム?」

「どうにゃるかは別として、竜人の強さが気ににゃるにゃ!」

「竜人の強さか……」

 確かにシュムの言う通り、その強さや存在が気にならないといえば嘘になる。
 ならばここは購入の可否は置いておいて、ひとまず見に行くのも良いのかもしれない。

「わかったよ。……メリオさん。ぜひその竜人の少女の元に連れて行ってください!」

「わかった。それならこれからみんなで向かってみようか」

「はい。よろしくお願いします!」

 こうして僕たちは、現在残っているかも不明な竜人族の少女を見に行くことになった。
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