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3章 魔剣創造と変わり者の竜人娘
19話 アイシャ父、襲来
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いつものようにギルドに納品し、宿に戻っている最中にそれは起こった。
「アイシャ」
突然背後からアイシャの名を呼ぶ、太く威圧感のある声が届いた。アイシャがバッと振り向き「げっ……」と声を上げる。
いったいどうしたのか。僕もつられるようにそちらへと目をやると、そこには身長2mはゆうに超えるだろうか、大柄な壮年の男性が立っていた。
その姿を見ただけで、僕はその人物が誰なのかおおよその検討がついた。
なぜならばその男はアイシャと同じ赤髪、2本の角、大きな翼、そして太く力強い尻尾を有していたからである。
壮年の竜人族。まさか──
「実の父に向かってその反応はなんだ」
どうやら僕の予想は正しかったようだ。竜人族の男──アイシャのお父さんは片眉を上げる。
「ご、ごめんなさい」
あのアイシャがシュンとしながら下を向く。
「少年、お主がこれの面倒を?」
言葉と共にアイシャ父はまるで品定めするかのように僕の姿を見る。僕はその圧に気圧されながらも、すぐさま居住まいを正した。
「は、はい。ファンと申します。現在アイシャさんと共に冒険者として活動しています」
「それだけではないはずだ。少年、お主はアイシャの主人でもあるのだろう?」
……アイシャが奴隷になったこと知ってるのか?
疑問に思いながらも、おそらくここで嘘をついても見抜かれるだろうと踏んだ僕は、間髪入れずうんと頷く。
「はい。主人でもあります」
「ふむ……やはり奴隷になったという噂は本当だったのだな」
アイシャ父は呟くようにそう言うと、こちらへと向き直った。
「申し遅れた。俺はグラン・ルーガ。すでに察していると思うがアイシャの父だ」
「改めてファンです。よろしくお願いします、グランさん」
「んで。パパはこんなところまで一体なにをしにきたんだ? あたしまだ旅の最中なんだけど」
「なに、つい数日前村に竜人族の少女が奴隷になったという噂が流れてきてな。まさかと思い確認しに来たのだが……いやはや噂は本当だったとはな」
「えーっと……」
「大方奴隷商に騙されでもしたんだろう?」
「うぅ……そ、それは」
言葉を濁すアイシャに、グランさんは溜息をつく。
「まったくそれだけでも情けないが、まさか最終的にこんな年端もいかぬ子に買われるとはな。竜人族として情けなくはないのかアイシャ」
「確かに奴隷になったのはあたしの落ち度さ。でも、誰に付き従おうとそれはあたしの勝手だろ。パパが口出すことじゃない!」
「……まさかとは思うが、この少年を将来の伴侶として考えているのではあるまいな」
……ん? 伴侶? いったいなんの──
「そうだよ。悪りぃかよ」
アイシャが顔を赤らめながらボソボソとそう言う。
……いや、そんな魂胆が!?
まさかの内容に僕が内心驚いていると、ここでグランさんはもう一度僕をチラと見た後、目を閉じる。
「申し訳ないが俺はこの少年にそこまでの可能性を感じない。竜人族の伴侶として相応しいとは一切思えない」
「それはご主人のことを何も知らないからそう言えるんだ。すごいんだぞご主人は」
「ほう?」
言いながらグランさんは僕に鋭い眼光を向けてくる。
「……ッ!」
そのあまりの圧に、僕は恐怖から思わずピクリと反応してしまう。
グランさんは小さく息を吐く。
「これしきの威圧にも耐えられないのだ。やはりそれほどの大成の器とは思えんが」
「そりゃ今は強くないさ。なんてったってご主人はまだ10歳だからな! でも遠くない将来にパパをも超える強者になる!」
「俺をも超えるだと?」
「あたしは確信してる。だからご主人について行ってるんだ!」
アイシャの力強い声音を受け、グランさんは顎に手を当て考えるような素振りを見せる。そして数瞬の後、再び口を開いた。
「──そうか。ならば証明してみろ」
「……証明?」
「それだけの器であることを俺に証明してみせよ」
「どうすりゃいいのさ」
「俺と模擬戦をしろ。ただし今の少年1人では酷だ。そっちは3人、俺は1人でいい。それで一撃でも俺に攻撃を入れられればそちらの勝ち。勝てばこれからもその少年と共に歩むことを認める。負ければ奴隷契約を破棄し、俺と共に村に戻る。どうだ?」
……いや、さすがに厳しくないか。
僕は目の前のグランさんに目をやりながらそう思う。
しかしそれも仕方がないと言えるだろう。なぜならば、相手はアイシャの父親なのだ。
アイシャが冒険者Aランク相当だとすれば、おそらくグランさんはSランク相当かそれ以上の強さであろう。竜人族である以上、まず間違いないはずだ。
そんな人相手では、アイシャはまだしも、僕とシュムではまったく太刀打ちできないのは目に見えている。
「ご主人! やろうぜ!」
しかしアイシャはやる気満々のようだ。シュムもアイシャに感化されたのか、メラメラと燃えている。
……断りにくい雰囲気。いや、仮にここで断ったら、グランさんから軟弱だと非難されて終わりそうだ。──つまり逃げ場はない。
僕はハーッと息を吐く。次いでしっかりとグランさんの目を見つめると「わかりました。やりましょう」と力強く言葉を返した。
「アイシャ」
突然背後からアイシャの名を呼ぶ、太く威圧感のある声が届いた。アイシャがバッと振り向き「げっ……」と声を上げる。
いったいどうしたのか。僕もつられるようにそちらへと目をやると、そこには身長2mはゆうに超えるだろうか、大柄な壮年の男性が立っていた。
その姿を見ただけで、僕はその人物が誰なのかおおよその検討がついた。
なぜならばその男はアイシャと同じ赤髪、2本の角、大きな翼、そして太く力強い尻尾を有していたからである。
壮年の竜人族。まさか──
「実の父に向かってその反応はなんだ」
どうやら僕の予想は正しかったようだ。竜人族の男──アイシャのお父さんは片眉を上げる。
「ご、ごめんなさい」
あのアイシャがシュンとしながら下を向く。
「少年、お主がこれの面倒を?」
言葉と共にアイシャ父はまるで品定めするかのように僕の姿を見る。僕はその圧に気圧されながらも、すぐさま居住まいを正した。
「は、はい。ファンと申します。現在アイシャさんと共に冒険者として活動しています」
「それだけではないはずだ。少年、お主はアイシャの主人でもあるのだろう?」
……アイシャが奴隷になったこと知ってるのか?
疑問に思いながらも、おそらくここで嘘をついても見抜かれるだろうと踏んだ僕は、間髪入れずうんと頷く。
「はい。主人でもあります」
「ふむ……やはり奴隷になったという噂は本当だったのだな」
アイシャ父は呟くようにそう言うと、こちらへと向き直った。
「申し遅れた。俺はグラン・ルーガ。すでに察していると思うがアイシャの父だ」
「改めてファンです。よろしくお願いします、グランさん」
「んで。パパはこんなところまで一体なにをしにきたんだ? あたしまだ旅の最中なんだけど」
「なに、つい数日前村に竜人族の少女が奴隷になったという噂が流れてきてな。まさかと思い確認しに来たのだが……いやはや噂は本当だったとはな」
「えーっと……」
「大方奴隷商に騙されでもしたんだろう?」
「うぅ……そ、それは」
言葉を濁すアイシャに、グランさんは溜息をつく。
「まったくそれだけでも情けないが、まさか最終的にこんな年端もいかぬ子に買われるとはな。竜人族として情けなくはないのかアイシャ」
「確かに奴隷になったのはあたしの落ち度さ。でも、誰に付き従おうとそれはあたしの勝手だろ。パパが口出すことじゃない!」
「……まさかとは思うが、この少年を将来の伴侶として考えているのではあるまいな」
……ん? 伴侶? いったいなんの──
「そうだよ。悪りぃかよ」
アイシャが顔を赤らめながらボソボソとそう言う。
……いや、そんな魂胆が!?
まさかの内容に僕が内心驚いていると、ここでグランさんはもう一度僕をチラと見た後、目を閉じる。
「申し訳ないが俺はこの少年にそこまでの可能性を感じない。竜人族の伴侶として相応しいとは一切思えない」
「それはご主人のことを何も知らないからそう言えるんだ。すごいんだぞご主人は」
「ほう?」
言いながらグランさんは僕に鋭い眼光を向けてくる。
「……ッ!」
そのあまりの圧に、僕は恐怖から思わずピクリと反応してしまう。
グランさんは小さく息を吐く。
「これしきの威圧にも耐えられないのだ。やはりそれほどの大成の器とは思えんが」
「そりゃ今は強くないさ。なんてったってご主人はまだ10歳だからな! でも遠くない将来にパパをも超える強者になる!」
「俺をも超えるだと?」
「あたしは確信してる。だからご主人について行ってるんだ!」
アイシャの力強い声音を受け、グランさんは顎に手を当て考えるような素振りを見せる。そして数瞬の後、再び口を開いた。
「──そうか。ならば証明してみろ」
「……証明?」
「それだけの器であることを俺に証明してみせよ」
「どうすりゃいいのさ」
「俺と模擬戦をしろ。ただし今の少年1人では酷だ。そっちは3人、俺は1人でいい。それで一撃でも俺に攻撃を入れられればそちらの勝ち。勝てばこれからもその少年と共に歩むことを認める。負ければ奴隷契約を破棄し、俺と共に村に戻る。どうだ?」
……いや、さすがに厳しくないか。
僕は目の前のグランさんに目をやりながらそう思う。
しかしそれも仕方がないと言えるだろう。なぜならば、相手はアイシャの父親なのだ。
アイシャが冒険者Aランク相当だとすれば、おそらくグランさんはSランク相当かそれ以上の強さであろう。竜人族である以上、まず間違いないはずだ。
そんな人相手では、アイシャはまだしも、僕とシュムではまったく太刀打ちできないのは目に見えている。
「ご主人! やろうぜ!」
しかしアイシャはやる気満々のようだ。シュムもアイシャに感化されたのか、メラメラと燃えている。
……断りにくい雰囲気。いや、仮にここで断ったら、グランさんから軟弱だと非難されて終わりそうだ。──つまり逃げ場はない。
僕はハーッと息を吐く。次いでしっかりとグランさんの目を見つめると「わかりました。やりましょう」と力強く言葉を返した。
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