突然ヒロインとなったマリアンナの恋愛事情〜女装の王子様に囲い込まれました

牧場のばら

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番外編

アーサーと女騎士〜Arthur and Swordswoman 5

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「というわけで、ステファニー・クレイトンがヘンリー・モルガンと決闘することになりました」

 アーサーは公爵家の人々の前で、こうなった経緯を話した。黙って聞いている公爵閣下は正直怖い。デヴィッド義兄上は怒ってる。(多分ヘンリーに)姉上も怒ってる。(多分、不甲斐ない僕に)
 ジェイムス様は口元は笑っているが、目が笑っていない。エルリーヌ様は……はて?なんでエルリーヌ様がここにいる?

「アーサー様、お忘れかもしれないけど、今の騎士団のトップはうちのお父様なのよね」

「ええーっ!っと、失礼しました。ソーンダイク侯爵様が、ですか?」

「そうなのです。元々はお義父様が管轄されていたのだけど、宰相のお仕事のご都合もあって、わたくしの父が騎士団統括に着くことになりましたのよ。
 意外かもしれませんが、お父様はもともと第二騎士団の団長をしておりましたの」

「成程そうでありましたか。そうすると、クレイトン副団長とは旧知の仲ということでしょうか?」

「黙っててごめんなさいね。デヴィッド様から、ステファニー様とアーサー様のことを聞いていたのだけど、サイラスお義父様から黙っておくように、と言われてたの」

 咳払いをして公爵閣下が口を開いた。
「君たちの仲を取り持つのは簡単だけど、それでは面白くないだろう?
 アーサー君はクレイトンの何も知らずに、ステファニー嬢を好きになった。それなら彼女を振り向かせるのも自分の力だけで行うべきだからな。
 しかし、ヘンリー・モルガンが、クレイトンに圧力をかけているのは初耳だった。そちらの件はわたしに任せなさい。クレイトンとモルガン伯爵との縁を断ち切り、今後は我がロックフィールド家がクレイトンの後見となることにしよう。モルガンはごねるだろうがね。
 アーサー君はステファニー嬢を全力で支えなさい。間違っても彼女がモルガンの倅に負けぬようにな。
 それから先は大人の仕事だ。我々に任せたまえ」」

 アーサーは深々とお辞儀をした。マリアンナもまた、公爵に向かって頭を下げた。

「可愛い嫁の弟ならば、わたしにとっても息子のようなものだ」

(エルリーヌもマリアンナもまだ嫁じゃないんだけどな)

 ジェイムスは心の中で思ったが、口には出さなかった。デヴィッドと違い、感情を表に出すことはなかったが、ジェイムスもまたモルガン伯爵のやり方が不愉快だった。     



 あっという間にステファニーとヘンリーの決闘の日になった。 
 ヘンリーの挑発をステファニーが受けたのだが、あの日パーティ会場で彼らのやりとりを目にしていた騎士団員達がいて、ヘンリー・モルガンの発言は騎士団長へ報告されていた。

 ステファニー・クレイトンと、アーサー・オディールに対しての暴言と挑発は騎士にあるまじき態度であり、わざと決闘へと導いたのはヘンリーである、しかも事故に見せかけた故意の殺人まで言外に匂わせており、その言動は悪質であると判断された。
 なおかつ、ヘンリーの父であるモルガン伯爵が、寄親である事を利用してクレイトン副団長へ圧力をかけていることもわかった。
 騎士団のトップであるソーンダイク侯爵は、関係筋からさまざまな証言を入手して、ステファニー・クレイトン男爵令嬢を人質にした脅迫罪により、モルガン伯爵の断罪とヘンリーの処分を決めていたが、それは幹部のみに知らされていた。

 それらを踏まえて、決闘は一対一ではなく団体戦となった。私怨による決闘は実は禁止されているのだ。
 ヘンリーによるステファニーへの度を越した暴行もありえるので、彼女を守るための策でもあった。

 あの模擬戦のリベンジだ、とアーサー達訓練生は実戦練習を重ねてきた。彼らはステファニーを守ることを誓い合っていた。ステファニー個人を通り越して訓練生に対する侮蔑を、決して許してはやらないのだ。

「あの、色ボケ野郎にひと泡吹かせてやろうぜ!」

 ステファニーは、仲間の優しさが身にしみて、嬉しくて泣きそうだった。
 自らの剣の腕前に加え、副団長の娘ということで、誰もが遠慮して近寄ってこなかった。女性であることで軽く見られたくなかったので、わざと孤立している部分もあった。ひとりが気楽だったのだ。

 そのステファニーの懐にいきなり飛び込んできたのがアーサーだった。
 どれほど打ちのめしても全くへこたれず、次は勝つ!と宣言するアーサー。模擬戦でボロボロになりながらも、最後まで諦めなかったアーサー。
 そしてパーティで、ドレスを贈ってきて、綺麗だと褒めてくれたアーサー。

(わたし、彼のことが好き。アーサーが好き)

 ステファニーは心を決めていた。
(わたしは必ず勝つ、アーサーの為に勝つわ。そして勝ったならばアーサーに言うの。貴方が好きだと)

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