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番外編
アーサーと女騎士〜Arthur and Swordswoman 4
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模擬戦後の興奮がおさまった頃、王家が後援する騎士団主催の大舞踏会が開かれることになった。
これは、騎士団と見習い訓練生なら誰でも参加できるパーティで、国の為に働く騎士たちを慰労するために毎年開催されている。
関係者から招待されると、貴族も平民も関係なく参加できる。婚約者のいない独身男性にとっては出会いの場でもあった。
アーサーたち見習い訓練生たちは、一足早く会場入りをして、設営の手伝いなどを済ませてから、それぞれ正装に着替えた。訓練生たちの中には平民もいたが、平民の仲間達には、貴族子息達が衣装を貸したりプレゼントしたりしていた。
長く辛い訓練を共にし、騎士相手の模擬戦を経験して、訓練生たちには仲間意識が芽生えている。
騎士団が見習い訓練生を募集し育てる目的のひとつは、実はそこにあった。
身分にこだわらず、強いものは強いと認められる公平な視点を養い、危機が迫った時には互いに手を取って助け合う仲間意識を育てる、それが狙いなのだ。
入り口でそわそわと誰かを待っていたアーサーは、公爵家の紋章が入った馬車から降りてきたステファニーを見つけると、彼女の元へと駆け寄った。
すらりと背が高く細身のステファニーには、無駄な装飾のないストレートな薄い金色のドレスが良く似合っている。
首元には真珠のネックレスがかけられている。普段ひとつに纏めているだけの長い黒髪は美しく編み込まれ、髪にも真珠が飾られていた。
「クレイトン、見違えた。綺麗だ」
アーサーはうっとりとステファニーを眺めた。
「こういう時くらいは名前で呼んでくれないか、なんだか練習中みたいな気分になる」
ステファニーは顔を真っ赤にしながら、早口で言った。
「そうだな。ステファニー、えっと、ステフって呼んでもいい?僕だけ特別って感じがするからさ」
アーサーは人懐こく笑った。
「好きに呼ぶといい。オディールの事は………」
「アーサーだ」
「は?」
「今日はステフとアーサーだ。パートナーなんだから親しみを込めて、アーサーって呼んでよ。もちろん、『アーサー様』でもいいよ」
「バカだな」
女性の声色を真似するアーサーに、ステファニーは声を出して笑った。
「ああ、いいよ。その笑顔。ステフは本当に綺麗だなあ。君をパートナーに出来るなんて夢みたいだ」
差し出された腕におずおずと手をかけたステファニーは、ヒールを履いているせいもあって、アーサーと背の高さが変わらない。
「背が高くて悪いな」
「なんで?同じ位置に顔があって、ステフの綺麗な顔が良く見える。最高じゃないか」
「アーサー、お前本当にバカだな」
「ステフの『バカ』は褒め言葉と受け取る」
2人で連れ立って会場に入ると、訓練生仲間が集まってきた。
「おお、クレイトン!美しくてびっくりした!」
「そんなドレス持ってたんだな」
「オディールとお似合いのカップルじゃないか」
仲間達は口々に声を掛けてきた。
今まで、訓練生達からは少し距離を置かれていたステファニーだったが、あの模擬戦以降みんなとの距離が縮まり、親しく声を掛けられるようになっていた。
「ドレスは僕が送ったんだ。瞳の色のドレスにしたんだよ。やっぱりステフには金色が似合うよなあ。
髪とか着付けとか、ロックフィールド家でお願いしたんだ。姉上が手伝ってくれたんだ」
ソーンダイク家のエルリーヌ様も、異様に張り切ってたなあ………
アーサーは遠い目をして、エルリーヌにあれこれ指示された事を思い出した。
ドレスやアクセサリーの手配では、要領の悪いオディール姉弟にテキパキと指示を飛ばしていたし、今朝もまたアーサーに対して、貴方が地味だと釣り合いが取れないと言って、ステファニーのドレスの共布で作った金色のバラのコサージュを、胸につけろと強要されたのだった。
エルリーヌは『マリアンナの弟ということはすなわちわたくしの弟よ!』という謎の論法で攻めてきたのだが、諦めて従った方が良いよというジェイムスの言葉に深く頷いたアーサーなのであった。
「ステフ……まさかの名前呼び捨て」
「お前らいつのまに」
「まあな、オディールはずっとクレイトンが好きだったもんな。悔しいが認めざるを得ないな。お前たちお似合いだぜ」
仲間達は快活に笑い声を上げ、アーサーを祝福した。
恥ずかしかさに穴があったら入りたいと思ったステファニーだったが、ふと前から歩いてくる人影に気がついて、顔を引き締め「やあ、ステファニー。ここにいたのか。
君たち、ステファニーは僕の婚約者だ。返してくれるかな?」
それは騎士団のヘンリー・モルガンであった。
「モルガン様、婚約は解消されたはずです。
というより、わたくしは貴方に婚約破棄された筈では?」
「何を寝ぼけたことを。婚約は継続だ。お前は俺の妻になるんだよ。父上のクレイトン副団長にも今朝その旨使いを出した。
さあ、ステファニー、来るんだ。なんだそのドレスは?みっともない。お前みたいな貧相な体に全く似合っていないじゃないか。
控室に用意がある。着替えろ」
「モルガン殿。どうぞお引き取りください。
ステファニー・クレイトン嬢との婚約は確かに解消されております。クレイトン男爵に届いた書状を僕も確認しました。
これ以上無理なことをおっしゃるのでしたら、こちらも黙っていません」
ヘンリーは目を細めてアーサーを見た。
「アーサー・オディールだな。貧乏子爵風情が何を言うのかと思えば。ははっ、誰が黙ってないって?
お前の姉は色仕掛けでロックフィールド公爵子息を落としたって噂だがな、公爵閣下がお前の味方をするわけがないだろうが。田舎の猿はさっさと山へ帰れよ。目障りなんだよ」
アーサーは歯を食いしばった。自分を貶されるのは我慢できるが、大切な人達、ステファニーと姉を貶める発言は許せなかった。
「貴様……ステフだけでは飽き足らず、姉上まで馬鹿にするのか」
「なんだその目は?決闘でもするってのか?騎士団の俺にお前が勝てるつもりでいるのか?」
「おう。僕がお前に決闘で勝ったらステファニーに金輪際近付かないと誓え!そして無礼な発言を撤回してもらおうか」
「そうだな、約束してやろう。お前が勝てばこの女は要らんし、お前にも謝ってやるさ。
俺には女としてのこいつは不要だが、副団長の後ろ盾は欲しい。何かと役に立つからな。
しかし、こんな剣しか取り柄のない『おとこおんな』が欲しいとはお前も物好きだな。こいつのために命落とすかもしれないというのに?」
その時、ステファニーが纏う空気がかわった。ステファニーはすっとアーサーの前に立った。
「その決闘、わたしが受けて立つ。
わたしが勝ったら、先ほどの約束に加え、父への圧迫からも手を引いてもらおう」
これは、騎士団と見習い訓練生なら誰でも参加できるパーティで、国の為に働く騎士たちを慰労するために毎年開催されている。
関係者から招待されると、貴族も平民も関係なく参加できる。婚約者のいない独身男性にとっては出会いの場でもあった。
アーサーたち見習い訓練生たちは、一足早く会場入りをして、設営の手伝いなどを済ませてから、それぞれ正装に着替えた。訓練生たちの中には平民もいたが、平民の仲間達には、貴族子息達が衣装を貸したりプレゼントしたりしていた。
長く辛い訓練を共にし、騎士相手の模擬戦を経験して、訓練生たちには仲間意識が芽生えている。
騎士団が見習い訓練生を募集し育てる目的のひとつは、実はそこにあった。
身分にこだわらず、強いものは強いと認められる公平な視点を養い、危機が迫った時には互いに手を取って助け合う仲間意識を育てる、それが狙いなのだ。
入り口でそわそわと誰かを待っていたアーサーは、公爵家の紋章が入った馬車から降りてきたステファニーを見つけると、彼女の元へと駆け寄った。
すらりと背が高く細身のステファニーには、無駄な装飾のないストレートな薄い金色のドレスが良く似合っている。
首元には真珠のネックレスがかけられている。普段ひとつに纏めているだけの長い黒髪は美しく編み込まれ、髪にも真珠が飾られていた。
「クレイトン、見違えた。綺麗だ」
アーサーはうっとりとステファニーを眺めた。
「こういう時くらいは名前で呼んでくれないか、なんだか練習中みたいな気分になる」
ステファニーは顔を真っ赤にしながら、早口で言った。
「そうだな。ステファニー、えっと、ステフって呼んでもいい?僕だけ特別って感じがするからさ」
アーサーは人懐こく笑った。
「好きに呼ぶといい。オディールの事は………」
「アーサーだ」
「は?」
「今日はステフとアーサーだ。パートナーなんだから親しみを込めて、アーサーって呼んでよ。もちろん、『アーサー様』でもいいよ」
「バカだな」
女性の声色を真似するアーサーに、ステファニーは声を出して笑った。
「ああ、いいよ。その笑顔。ステフは本当に綺麗だなあ。君をパートナーに出来るなんて夢みたいだ」
差し出された腕におずおずと手をかけたステファニーは、ヒールを履いているせいもあって、アーサーと背の高さが変わらない。
「背が高くて悪いな」
「なんで?同じ位置に顔があって、ステフの綺麗な顔が良く見える。最高じゃないか」
「アーサー、お前本当にバカだな」
「ステフの『バカ』は褒め言葉と受け取る」
2人で連れ立って会場に入ると、訓練生仲間が集まってきた。
「おお、クレイトン!美しくてびっくりした!」
「そんなドレス持ってたんだな」
「オディールとお似合いのカップルじゃないか」
仲間達は口々に声を掛けてきた。
今まで、訓練生達からは少し距離を置かれていたステファニーだったが、あの模擬戦以降みんなとの距離が縮まり、親しく声を掛けられるようになっていた。
「ドレスは僕が送ったんだ。瞳の色のドレスにしたんだよ。やっぱりステフには金色が似合うよなあ。
髪とか着付けとか、ロックフィールド家でお願いしたんだ。姉上が手伝ってくれたんだ」
ソーンダイク家のエルリーヌ様も、異様に張り切ってたなあ………
アーサーは遠い目をして、エルリーヌにあれこれ指示された事を思い出した。
ドレスやアクセサリーの手配では、要領の悪いオディール姉弟にテキパキと指示を飛ばしていたし、今朝もまたアーサーに対して、貴方が地味だと釣り合いが取れないと言って、ステファニーのドレスの共布で作った金色のバラのコサージュを、胸につけろと強要されたのだった。
エルリーヌは『マリアンナの弟ということはすなわちわたくしの弟よ!』という謎の論法で攻めてきたのだが、諦めて従った方が良いよというジェイムスの言葉に深く頷いたアーサーなのであった。
「ステフ……まさかの名前呼び捨て」
「お前らいつのまに」
「まあな、オディールはずっとクレイトンが好きだったもんな。悔しいが認めざるを得ないな。お前たちお似合いだぜ」
仲間達は快活に笑い声を上げ、アーサーを祝福した。
恥ずかしかさに穴があったら入りたいと思ったステファニーだったが、ふと前から歩いてくる人影に気がついて、顔を引き締め「やあ、ステファニー。ここにいたのか。
君たち、ステファニーは僕の婚約者だ。返してくれるかな?」
それは騎士団のヘンリー・モルガンであった。
「モルガン様、婚約は解消されたはずです。
というより、わたくしは貴方に婚約破棄された筈では?」
「何を寝ぼけたことを。婚約は継続だ。お前は俺の妻になるんだよ。父上のクレイトン副団長にも今朝その旨使いを出した。
さあ、ステファニー、来るんだ。なんだそのドレスは?みっともない。お前みたいな貧相な体に全く似合っていないじゃないか。
控室に用意がある。着替えろ」
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「アーサー・オディールだな。貧乏子爵風情が何を言うのかと思えば。ははっ、誰が黙ってないって?
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アーサーは歯を食いしばった。自分を貶されるのは我慢できるが、大切な人達、ステファニーと姉を貶める発言は許せなかった。
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「なんだその目は?決闘でもするってのか?騎士団の俺にお前が勝てるつもりでいるのか?」
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「そうだな、約束してやろう。お前が勝てばこの女は要らんし、お前にも謝ってやるさ。
俺には女としてのこいつは不要だが、副団長の後ろ盾は欲しい。何かと役に立つからな。
しかし、こんな剣しか取り柄のない『おとこおんな』が欲しいとはお前も物好きだな。こいつのために命落とすかもしれないというのに?」
その時、ステファニーが纏う空気がかわった。ステファニーはすっとアーサーの前に立った。
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