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番外編
アーサーと女騎士〜Arthur and Swordswoman 3
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模擬戦まであと10日。
ヘンリー・モルガンを模擬戦に出られなくするにはどうしたら良いか、アーサーは考えた。
ロックフィールド公爵が介入すれば一気に片付くはずだが、そうなれば脅迫に屈したクレイトン副団長も処分されてしまう。
考えてひとつの案を思いついたアーサーは、デヴィッドに頭を下げて協力を願い出た。
デヴィッドは事情を聞いて大いに憤慨し、快く協力する事を約束した。
模擬戦まであと1週間となった日に、ロックフィールド公爵家に於いて、国の三つの騎士団である第一近衛騎士団、第二王都騎士団、第三辺境騎士団の団長ら幹部を招いての懇親会が開かれた。
父公爵はデヴィッドから、理由は今は明かせないが、騎士団を脅す輩を懲らしめようと思っている、父上は僕の言葉を肯定して、乗っかってくださいと聞かされた。
最近の騎士団の内規の緩みを気にかけていた公爵は、デヴィッドの企みに乗る事にした。
懇親会は恙無くすすみ、会もお開きという頃になって、デヴィッドが口を開いた。
「ところで、訓練生たちはトーナメントで模擬戦参加者を選びましたが、第二騎士団ではどういう基準がおありだったのでしょう?」
「自薦他薦で候補者を絞り、その中からわたしと副団長が選んだのです。王都を守る第二騎士団は、腕に覚えのあるものばかり、誰を選んでも必ずや結果を残しますからな」
「そうでしたか。わたしの友人も第二騎士団に在籍しておりまして騎士達の話はよく耳にいたします。その中でひとつ腑に落ちないことがあるのです」
「ほう、どういう事ですかな?」
第二騎士団長は気色ばんだ。
「選ばれた4名のうち3名は、実力人柄とも申し分なく、訓練生たちの良い手本になるだろうと聞いていますが、しかし1名の方は……なんでも婚約者の女性を蔑ろにし、パーティのエスコートもなく他の女性を連れて歩いていると有名らしいですね。清廉潔白な騎士として目に余る行為だと友人達の間ではなかなかの評判になっているようで」
クレイトン副団長の顔色が変わったのが見てとれたが、デヴィッドは構わず続けた。
「ああ、友人から聞いた話なので真偽は不明ですよ。
しかし、その方の名前を聞いてわたしも思い出しました。確かに、舞踏会でお見かけしたときに、随分と目立つ女性を連れておられたが、あの女性は婚約者ではない、ということなんですね」
「ほう、デヴィッド。何が言いたいのだ?婚約者を蔑ろにし、他の女性を連れていたことと、模擬戦参加と何の関係があると?」
「父上、別にそれを非難するつもりではないのです。個人の性格と騎士としての才能は別のものでしょう。
わたしと友人は騎士道精神とは何であるか、という話を良くいたします。我が身を削っても弱者を守り助けることこそ騎士道ではないかと、友人とそんな話になったのです。騎士とは高潔な魂の持ち主であり、そして騎士道を一途に歩む騎士達によって、我が国は守られているのである、とそう考えるのです」
「ふむ。つまりその、婚約者を蔑ろにし風紀を乱している騎士が、騎士見習いの訓練生との模擬戦に参加するのは、騎士道に反すると言いたいのだな」
「わたしは部外者ですので、騎士団が決めた事に口を出すつもりはございません。単なるわたし個人の疑問に過ぎません。
騎士道精神と騎士の在り方については、お集まりの団長様方にとっては、息をする様に当たり前のことでしょうから、部外者があれこれほざくなと思われても仕方ありません。
わたしは王国の一員として、騎士団の皆さんを誇らしく思っております。おそらくかの騎士ついての妙な噂も、噂なのでございましょう」
*
いよいよ、模擬戦当日となった。
アーサーとステファニーは訓練生代表4人の中にいた。
一方、若手騎士選抜の4名の中に、ヘンリー・モルガンの姿はなかった。
公爵邸での懇親会の後、ヘンリーは適当な理由をつけて王都から離れさせられた。
郊外に住む隠居した元侯爵が辺境へ赴くのに、身辺警護としてモルガン伯爵の子息を希望しているとして、模擬戦へ参加できないように画策した。
元侯爵には、年頃の孫がおり大層な美人であるが、未だ婚約者が決まらないという話に、ヘンリーは飛びついた。
うまくいけば、侯爵令嬢と婚約だ、そうなればあのクレイトンなど必要なくなる、むしろステファニーが邪魔だ。
そこで、モルガン伯爵は、クレイトン男爵家へ使いを出し、ステファニーとの婚約の事実はない、という言質を取ることにした。
そしてそれは、クレイトン父娘にとっては願ってもない事で、ステファニーは涙を流して喜んだ。
*
模擬戦は、ルールに乗っ取り公正明大に行われた。
アーサーと対戦した騎士は大層大柄で、その腕力にアーサーはひとたまりもなかったのだが、清々しい気持ちで試合を終えた。
他の面々もそれぞれ善戦したが、やはり現役の騎士に叶うはずもない。
それでも観覧に来た市民や貴族、騎士団の関係者たちは、訓練生たちの善戦と強い相手に立ち向かうその勇気を褒め称えた。
模擬戦会場にはいつまでも温かい拍手が鳴り響き、アーサーやステファニー、訓練生の仲間たちは、誇らしさに堂々と胸を張った。
彼らの善戦をたたえ、大舞踏会が王家の後援で開かれることが決まっており、アーサーはステファニーに、ダンスのパートナーを申し込んだ。
「わたしで良いのなら」
ステファニーは頬を赤らめて承諾したのだった。
ヘンリー・モルガンを模擬戦に出られなくするにはどうしたら良いか、アーサーは考えた。
ロックフィールド公爵が介入すれば一気に片付くはずだが、そうなれば脅迫に屈したクレイトン副団長も処分されてしまう。
考えてひとつの案を思いついたアーサーは、デヴィッドに頭を下げて協力を願い出た。
デヴィッドは事情を聞いて大いに憤慨し、快く協力する事を約束した。
模擬戦まであと1週間となった日に、ロックフィールド公爵家に於いて、国の三つの騎士団である第一近衛騎士団、第二王都騎士団、第三辺境騎士団の団長ら幹部を招いての懇親会が開かれた。
父公爵はデヴィッドから、理由は今は明かせないが、騎士団を脅す輩を懲らしめようと思っている、父上は僕の言葉を肯定して、乗っかってくださいと聞かされた。
最近の騎士団の内規の緩みを気にかけていた公爵は、デヴィッドの企みに乗る事にした。
懇親会は恙無くすすみ、会もお開きという頃になって、デヴィッドが口を開いた。
「ところで、訓練生たちはトーナメントで模擬戦参加者を選びましたが、第二騎士団ではどういう基準がおありだったのでしょう?」
「自薦他薦で候補者を絞り、その中からわたしと副団長が選んだのです。王都を守る第二騎士団は、腕に覚えのあるものばかり、誰を選んでも必ずや結果を残しますからな」
「そうでしたか。わたしの友人も第二騎士団に在籍しておりまして騎士達の話はよく耳にいたします。その中でひとつ腑に落ちないことがあるのです」
「ほう、どういう事ですかな?」
第二騎士団長は気色ばんだ。
「選ばれた4名のうち3名は、実力人柄とも申し分なく、訓練生たちの良い手本になるだろうと聞いていますが、しかし1名の方は……なんでも婚約者の女性を蔑ろにし、パーティのエスコートもなく他の女性を連れて歩いていると有名らしいですね。清廉潔白な騎士として目に余る行為だと友人達の間ではなかなかの評判になっているようで」
クレイトン副団長の顔色が変わったのが見てとれたが、デヴィッドは構わず続けた。
「ああ、友人から聞いた話なので真偽は不明ですよ。
しかし、その方の名前を聞いてわたしも思い出しました。確かに、舞踏会でお見かけしたときに、随分と目立つ女性を連れておられたが、あの女性は婚約者ではない、ということなんですね」
「ほう、デヴィッド。何が言いたいのだ?婚約者を蔑ろにし、他の女性を連れていたことと、模擬戦参加と何の関係があると?」
「父上、別にそれを非難するつもりではないのです。個人の性格と騎士としての才能は別のものでしょう。
わたしと友人は騎士道精神とは何であるか、という話を良くいたします。我が身を削っても弱者を守り助けることこそ騎士道ではないかと、友人とそんな話になったのです。騎士とは高潔な魂の持ち主であり、そして騎士道を一途に歩む騎士達によって、我が国は守られているのである、とそう考えるのです」
「ふむ。つまりその、婚約者を蔑ろにし風紀を乱している騎士が、騎士見習いの訓練生との模擬戦に参加するのは、騎士道に反すると言いたいのだな」
「わたしは部外者ですので、騎士団が決めた事に口を出すつもりはございません。単なるわたし個人の疑問に過ぎません。
騎士道精神と騎士の在り方については、お集まりの団長様方にとっては、息をする様に当たり前のことでしょうから、部外者があれこれほざくなと思われても仕方ありません。
わたしは王国の一員として、騎士団の皆さんを誇らしく思っております。おそらくかの騎士ついての妙な噂も、噂なのでございましょう」
*
いよいよ、模擬戦当日となった。
アーサーとステファニーは訓練生代表4人の中にいた。
一方、若手騎士選抜の4名の中に、ヘンリー・モルガンの姿はなかった。
公爵邸での懇親会の後、ヘンリーは適当な理由をつけて王都から離れさせられた。
郊外に住む隠居した元侯爵が辺境へ赴くのに、身辺警護としてモルガン伯爵の子息を希望しているとして、模擬戦へ参加できないように画策した。
元侯爵には、年頃の孫がおり大層な美人であるが、未だ婚約者が決まらないという話に、ヘンリーは飛びついた。
うまくいけば、侯爵令嬢と婚約だ、そうなればあのクレイトンなど必要なくなる、むしろステファニーが邪魔だ。
そこで、モルガン伯爵は、クレイトン男爵家へ使いを出し、ステファニーとの婚約の事実はない、という言質を取ることにした。
そしてそれは、クレイトン父娘にとっては願ってもない事で、ステファニーは涙を流して喜んだ。
*
模擬戦は、ルールに乗っ取り公正明大に行われた。
アーサーと対戦した騎士は大層大柄で、その腕力にアーサーはひとたまりもなかったのだが、清々しい気持ちで試合を終えた。
他の面々もそれぞれ善戦したが、やはり現役の騎士に叶うはずもない。
それでも観覧に来た市民や貴族、騎士団の関係者たちは、訓練生たちの善戦と強い相手に立ち向かうその勇気を褒め称えた。
模擬戦会場にはいつまでも温かい拍手が鳴り響き、アーサーやステファニー、訓練生の仲間たちは、誇らしさに堂々と胸を張った。
彼らの善戦をたたえ、大舞踏会が王家の後援で開かれることが決まっており、アーサーはステファニーに、ダンスのパートナーを申し込んだ。
「わたしで良いのなら」
ステファニーは頬を赤らめて承諾したのだった。
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