突然ヒロインとなったマリアンナの恋愛事情〜女装の王子様に囲い込まれました

牧場のばら

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番外編

いつか王子様が〜Someday my Prince will come 5

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 あれからロレッタは、相変わらずやる気が出ずにいた。あれほど好きな恋愛小説もほったらかしで、ページを開く気にもならない。
 これまで脳裏を埋め尽くしていたのはデヴィッドであり、その後は小説の中の『ローレンス様』だったが、今やロレッタの頭の中は幼馴染のローレンスでいっぱいだった。

(なんだかわからないけど腹がたつわ。何なのよあいつ)

 ローレンスは確かに、自分から申し込むって言ってたけど、わたしの知ってる子なのかな……
 ロレッタは令嬢の顔を何人か思い浮かべたが、誰もピンと来なかった。
 髪飾りは帰ってきてすぐに外した。いっそのこと返してしまおうかと思う。

 学校では徹底的にローレンスを避けている。相手もまた、ロレッタには近寄ってこないし、以前は感じていた視線も無くなった。

 授業も上の空だったが、なんとか乗り越えて帰り支度をする。
 ぼんやりと窓から外を眺めていると、目に入ったのはローレンスと知らない女の子が連れ立って歩く様子だった。思わず凝視しているとローレンスと目があってしまった。
 ロレッタは咄嗟にカバンを持って、ごきげんようと教室を飛び出した。
(知らない、知らない、ローリーなんて知らない。
誰と婚約しようと関係ないわ)
 走ったせいか息が上がっているロレッタに、御者は心配したが、ロレッタは大丈夫、早く出して、と告げた。

 その夜、ロレッタは熱を出した。




「ロレッタ、俺はお前のことが好きだ。ずっと、子どもの頃から。俺じゃあ、お前の王子様になれないか?」
「ローリー。嬉しい!」
ロレッタはローレンスの胸に飛び込んだ。
(やっと、わたしだけの王子様を見つけたんだ!)

「………ローレンス様はわたくしのものよ。貴女なんかに渡さないわ。だってわたくし達婚約してるんだもの。ローレンス様から申し込まれたのよ」

「嘘よ!今、告白されたのよ!わたしの王子様になるって……」


 うぅぅぅ、うぅぅうーん、、

「、、さま。、、、うさま。お嬢様。
 お熱で苦しいのですか?ずいぶん魘されてましたけど」

 ロレッタは目を開けると、そこは自分の部屋のベッドの上。どうやら夢を見ていたようだ。
 心配そうな顔でジェーンが覗き込んでいる。

「大丈夫よ。夢を見ただけ」

 母もやってきた。
「ロレッタ、このところ元気もないし、しばらく学校は休みなさい。体調が戻るまでね」

 身体を起こしたものの、ぼんやりしていたロレッタは、サイドテーブルに置いた髪飾りを見た。

「ジェーン、これ要らない。捨てて」

「あら。これはローレンス様から頂いたものじゃありませんか。要らないのですか?お嬢様、ローレンス様と喧嘩でもなさったのですか?」

「喧嘩も何も。そんな仲じゃないから」

 ジェーンは承知しましたと、髪飾りを手に取ると、お嬢様を苦しめるこんなものっ!と、窓から投げ捨てた。 
 ロレッタは焦った。まさか、ジェーンが本当に捨てるとは思わなかったのだ。

「駄目ー!投げ捨てるなんて。酷いわ、ジェーン。
ローリーに貰ったのに、、」

 ロレッタは泣き出した。

「お嬢様、心にもない事を仰るからですよ。ほら、投げたふりをしただけです。ちゃんとここにらありますから」
 ジェーンはロレッタの手にそっと髪飾りを乗せた。

 ロレッタは髪飾りを胸元で抱きしめた。
「意地を張るのをやめたら、ぐっと楽になりますよ」
 ジェーンが背中をさすると、ロレッタは、うん、と小さく頷いた。

 翌日、熱は下がったが、学校へ行く気になれず、ロレッタは再びの引きこもり生活に入ろうとしていた。
 
 そんなロレッタを訪ねてきた人があった。学友だというが、名前に心当たりがない。
 しかも、ローレンス・アーチャー様のことで話したい事がある、とお見舞いの花束にメッセージカードが付いている。
 ロレッタは、会わないで後から気になるなら、会った方がいいと決心して、身なりを整えた。

「お待たせしました。」

 学友だと言う女性は立ち上がって深くお辞儀をした。
 自分は、エインズワースの領都でドレスを作っている工房の娘、メアリーだと名乗った。年はロレッタより1歳上だという。

「体調がすぐれないとお聞きしました。こんな時に伺うご無礼をお許しくださいませ」
 
 ロレッタはメアリーを観察した。大層美しい娘である。実家がドレス工房だけあって、シンプルながら上質の布を使ったドレスを着ている。

(あ、この人、ローリーと一緒にいた女性)
 ロレッタが一瞬眉を顰めたその様子を、メアリーはしっかりと見ていた。

「メアリー様、今日はどういったご用件かしら?
 わたくし、病み上がりですので、難しいお話はご遠慮願いたいわ」

 頷いたメアリーの口からは、信じられないような言葉が出てきて、ロレッタは頭が混乱してしまった。

「本当に?」
「ええ、本当です」
「わたくし、どうしたら良いのかわかりません」
「お待ちいただくのが一番かと」

 何を信じて待てば良いのだ?

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