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俺が部活を選ぶまで
入学式当日
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今日は霊峰高校の入学式当日。上沢優一は入学式も式後の担任の説明も、全てぼんやりと聞き流していた。優一の頭はもっと大事なことでいっぱいだったからだ。一学年に三百六十人ほど生徒がいるにもかかわらず、大好きな幼馴染と同じクラスになれたのはある種の奇跡だと思う。優一は普段信じてなどいない神に感謝しながらゆっくりと目を瞑った。ようやく休み時間になったし、少しくらい寝ても構わないだろう。
優一はうつらうつらと夢の世界に意識を飛ばしかけていたが、急に頭に衝撃を受けて目を開けた。周囲はまだ知らない人間ばかりで、こんな状況で自分の頭を叩くやつなんて、一人しか優一には思いつかなかった。優一はため息を吐いて仕方ないなという雰囲気を出しながら顔を上げる。そこには予想通り、幼馴染の小島陽太がいたずらっぽい笑みを浮かべて優一を見つめていた。
「こら。何すんだよ」
「お前こそ何してんの。少しは周りとコミュニケーションとれって」
「陽太だって、俺のところに来てるじゃん」
「確かに」
新しく交友関係を築けという割には、陽太だって他に意識を向けることなく休憩時間が始まってすぐ優一のところにやってきた。優一はそれが誇らしく、そして何よりも嬉しくて仕方ない。だって優一は陽太のことが大好きなので。ただ陽太は優一の好意を知っていても周囲からそれを揶揄われることをよしとしない。そのため優一は自分の駄々洩れの好意を誤魔化すべくわざとらしい咳払いをして話題を変えた。
「で、どうしたの」
「そうそう。優一、部活何にする?」
「気がはえーよ。部活紹介もまだなのに」
「ああ、そっか。俺はもう野球部って決めてっからさぁ」
幼馴染である陽太が誇らしげに笑うのを、優一はどこか眩しく思いながら見つめる。陽太は中学の時からずっと強豪校である霊峰高校で野球をするのを楽しみに勉強にも部活にも必死に励んでいた。その甲斐あって推薦でこの霊峰高校に入学した陽太としては野球部以外へ入部することは決してない。目標に向かってひたむきに努力する陽太のことが好きだ。陽太の努力を一番近くで見たい気持ちはある。そのためにわざわざ同じ高校を選んだのだ。しかし、だからと言って運動部に入部する自分の姿を優一は全く想像ができなかった。
「部活ねえ……どうしよっかな」
「塾もないんだし、暇だろ? 野球一緒にやらねえ?」
「運動はちょっと……いや、だいぶ嫌」
「もったいねえな。立派な体格が泣いてるぞ」
「いじめられなくてよかったっていう嬉し泣きだろうね」
「まあ優一は運動するの嫌いだもんな。仕方ねえか」
陽太はちゃんと優一の意思を尊重してくれる。陽太のそういう優しさが優一は好きだった。中学の頃に入部を迫ってきたバスケ部の連中とは全く違う。優一が嫌な記憶に内心で舌を出していると、陽太は少し寂し気な表情を浮かべた。一体どうしたのだろう。優一が陽太に理由を尋ねるより早く、陽太は「仕方ねえけどさ」と口を開いた。
「残念。先帰っちゃうってことだもんなぁ」
「……あ」
しまった。そうか。部活をやらないということは、陽太とは帰宅時間が変わるということなのか。もちろん自習をするという体で学校に残ってもいいが、毎日そんなことをしていたら陽太はきっと気を遣わせていると思って気に病んでしまう。優一は若干の絶望を抱えながら学校説明の冊子を見つめる。やるしかないのか、部活。
優一はうつらうつらと夢の世界に意識を飛ばしかけていたが、急に頭に衝撃を受けて目を開けた。周囲はまだ知らない人間ばかりで、こんな状況で自分の頭を叩くやつなんて、一人しか優一には思いつかなかった。優一はため息を吐いて仕方ないなという雰囲気を出しながら顔を上げる。そこには予想通り、幼馴染の小島陽太がいたずらっぽい笑みを浮かべて優一を見つめていた。
「こら。何すんだよ」
「お前こそ何してんの。少しは周りとコミュニケーションとれって」
「陽太だって、俺のところに来てるじゃん」
「確かに」
新しく交友関係を築けという割には、陽太だって他に意識を向けることなく休憩時間が始まってすぐ優一のところにやってきた。優一はそれが誇らしく、そして何よりも嬉しくて仕方ない。だって優一は陽太のことが大好きなので。ただ陽太は優一の好意を知っていても周囲からそれを揶揄われることをよしとしない。そのため優一は自分の駄々洩れの好意を誤魔化すべくわざとらしい咳払いをして話題を変えた。
「で、どうしたの」
「そうそう。優一、部活何にする?」
「気がはえーよ。部活紹介もまだなのに」
「ああ、そっか。俺はもう野球部って決めてっからさぁ」
幼馴染である陽太が誇らしげに笑うのを、優一はどこか眩しく思いながら見つめる。陽太は中学の時からずっと強豪校である霊峰高校で野球をするのを楽しみに勉強にも部活にも必死に励んでいた。その甲斐あって推薦でこの霊峰高校に入学した陽太としては野球部以外へ入部することは決してない。目標に向かってひたむきに努力する陽太のことが好きだ。陽太の努力を一番近くで見たい気持ちはある。そのためにわざわざ同じ高校を選んだのだ。しかし、だからと言って運動部に入部する自分の姿を優一は全く想像ができなかった。
「部活ねえ……どうしよっかな」
「塾もないんだし、暇だろ? 野球一緒にやらねえ?」
「運動はちょっと……いや、だいぶ嫌」
「もったいねえな。立派な体格が泣いてるぞ」
「いじめられなくてよかったっていう嬉し泣きだろうね」
「まあ優一は運動するの嫌いだもんな。仕方ねえか」
陽太はちゃんと優一の意思を尊重してくれる。陽太のそういう優しさが優一は好きだった。中学の頃に入部を迫ってきたバスケ部の連中とは全く違う。優一が嫌な記憶に内心で舌を出していると、陽太は少し寂し気な表情を浮かべた。一体どうしたのだろう。優一が陽太に理由を尋ねるより早く、陽太は「仕方ねえけどさ」と口を開いた。
「残念。先帰っちゃうってことだもんなぁ」
「……あ」
しまった。そうか。部活をやらないということは、陽太とは帰宅時間が変わるということなのか。もちろん自習をするという体で学校に残ってもいいが、毎日そんなことをしていたら陽太はきっと気を遣わせていると思って気に病んでしまう。優一は若干の絶望を抱えながら学校説明の冊子を見つめる。やるしかないのか、部活。
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