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第33話 ふざけんなーーーーっ!!
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それからのデニスとサビーナは、一緒に食事に出掛ける仲となっていた。
周りからは脳足りんと能無しで似合いのカップルだと揶揄されている。が、決して付き合っているわけではない。デニスといると楽しくて居心地は良いが、でもそれだけだ。
互いの共通の話題は大抵セヴェリであり、二人はどれだけセヴェリの事を考えているかというのを、競い合うように話すのだ。サビーナには、これが楽しくてたまらなかった。
幼い頃から一緒にいるデニスは、『あんたと俺とじゃ年季が違う』とよくむくれっ面をする。確かにそうかもしれないが、それでもセヴェリを生かそうと思う心については、誰にも負けないつもりだ。
と思いながらも、セヴェリの攻略方法は全く考えつかないのだが。
そんな毎日を過ごしていたある日、終業の時間が過ぎた直後の事。サビーナの頭をグワシと引っ掴む者がいた。サビーナは驚いて頭を上げる。
「なっ!?」
「おい、サビーナ。ちょっとお前の部屋まで来てもらおうか」
リックバルドが『俺の部屋まで来てもらおうか』と同じニュアンスで怒気を放っている。何を言われるか見当が付くだけに憂鬱だ。
サビーナはリックバルドの小脇に抱えられて、自分の部屋に入る事となった。
「さぁて、何から言ってやろうか」
部屋に入ると、リックバルドは無造作にサビーナを放るように押し出した。サビーナはよろよろとバランスを崩し、足がもつれてベシャリと床に突っ伏す。
「うー」
「立て。ケツでも蹴られたいか」
「蹴られたいわけないよっ」
サビーナは慌てて立ち上がり、リックバルドと対峙した。彼は相変わらず偉そうに、腕を組んで仁王立ちしている。
長身で威圧感があり過ぎるため、やめて欲しいと心底願う。
「で、お前は何を呑気にデニスとデートなんぞをしている」
「デートじゃないし……」
「男と二人で出掛ければ、お前は思っていなくとも周りはそう思う。デニスが好きでも自重しろ。お前はデートする相手を間違っているだろう」
自重という言葉を聞いて、サビーナは瞠目して己の兄の顔を見た。
よくもそんな事が言えたものだ。厚顔にも程がある。レイスリーフェの誘いにホイホイと乗ってしまうこの兄にだけは、そんな事を言われたくない。
「あのね、リック! 私は別にデニスさんの事が好きなわけじゃないし、セヴェリ様の事だって一応頑張ってるんだよ!」
「頑張るって一体何をだ。この二週間、お前はデニスとデートしてただけだろう!」
「そ、そんなことないもん」
「じゃあセヴェリ様に対して何をした? 言ってみろっ」
「し、したよ!? お、お茶を淹れたりだとか……」
「それはただの仕事だろうがっ」
そんなに怒髪天を突く勢いで怒らなくてもいいと思うのだが、この高圧的な兄が怖くて、逆らえずにサビーナは口を噤む。
リックバルドはそんな妹をジロリと睨むと、冷たく言い放った。
「いいか、今からセヴェリ様をデートに誘え」
毎度の唐突発言が来た。この兄は本当に勝手過ぎる。こちらにも都合というものがあるというのに。
「今からとか、無理だよ。今日はデニスさんと食事に行く約束してんだから」
「心配するな。断っておいた」
「……はい??」
リックバルドの言葉に目が点になる。今この男は何と言ったか。信じられない言葉を耳にした気がするが、気のせいだろうか。
「デニスには、断っておいてやったと言っている」
残念ながら、気のせいではなかった。何という勝手な真似をしてくれるのか。サビーナの頭の中が、一瞬で真っ暗になった。
「う、うそぉ……」
「別に構わんだろう。お前は今デニスを好きではないと言っていたではないか」
「恋愛感情はないって意味で、友達として大切なのには変わりないよ! デニスさんに何て言って断っちゃったの!?」
「サビーナが迷惑しているから、今後食事になど誘うなと言っておいた」
「ふざけんなーーーーっ!!」
リックバルドの言葉に一気に血が上り、思わず部屋に立て掛けてあった剣を抜き取った。そしてオクスの構えからそのまま猪突猛進して行く。
「ヤーーッ!」
突進と同時にリックバルドは己の剣を抜き、呆気なくサビーナの剣を叩き上げる。
ガキンと音がしたかと思うと、懐に入られ剣を持つ手をねじり上げられた。
一瞬だった。何もできずにサビーナは眉を顰める。
「っくぅ!」
「相変わらず思い切りだけは良いが、少しはフェイントを入れろ。成長せん奴だな」
「ううーーっ! もうお説教はいらないよっ」
掴まれた手首が痛くて、サビーナは剣を手放す。ガランと音がして地に着いたそれを、リックバルドは拾われないように足で刃を踏みつけてから、サビーナの手を解放した。
「もうほんっとに最低……リック嫌いっ」
「その台詞、今までに何度言われただろうな。だが最終的にはいつも俺の言葉の方が正しかっただろう」
「今回は、絶対そうは思わない……だって、酷すぎるよ!」
サビーナが涙を滲ませると、リックバルドはそっと息を吐いた。そしてサビーナの頭を優しく撫でる。
「そう、だな……すまなかった」
「……え?」
この傲慢男の謝罪に、サビーナは耳を疑う。今までにリックバルドがサビーナに謝ったことなど、数える程しかない。
「だが今は、デニスなんぞにかまけている時間はない。セヴェリ様の婚姻の日が決まった。それを絶対に阻止して貰わなければならん」
「ちょ、それって自分のためなんじゃないの?」
「それも否定はせん」
いやいや否定してよと心で突っ込みを入れる。やはりこの兄は自分本位の考え方だ。
しかし実際にセヴェリとレイスリーフェが結婚してしまうと、謀反を起こす地盤が完成してしまう。阻止しなくてはいけない事態には変わりない。
「うー、でもセヴェリ様をデートに誘うって……どうすれば?」
「とにかくセヴェリ様の部屋に行くぞ」
そう言ってリックバルドは拾い上げた剣を鞘に戻すとサビーナに渡し、また小脇に抱えられてしまった。
「ちょ、何す……」
「黙ってろ」
リックバルドには何か良い考えでもあるのだろうか。
大人しく小脇に抱えられ、連れてこられた先はやはりセヴェリの部屋だった。
「どうするの……?」
「こうする」
リックバルドはサビーナを下ろし、コンコンとノックをする。しかし返事が来る前に、リックバルドは踵を返してさっさと元来た廊下を去ってしまった。
ポカーン、である。
置き去りにされたサビーナは、中から「どなたですか」と問うセヴェリの言葉に答えられない。
やがて中から開けられた扉から、セヴェリが顔を出した。
「サビーナ? どうしたんです?」
「セ、セヴェリ様……」
自分の兄のあまりの対応に涙が出て来る。
ここまで来ておいて、何の策もなくあとは任せたと言わんばかりに去っていくリックバルドが、心底恨めしい。
悔し涙を溜めているサビーナを見て、セヴェリは部屋の中へと入れてくれた。
周りからは脳足りんと能無しで似合いのカップルだと揶揄されている。が、決して付き合っているわけではない。デニスといると楽しくて居心地は良いが、でもそれだけだ。
互いの共通の話題は大抵セヴェリであり、二人はどれだけセヴェリの事を考えているかというのを、競い合うように話すのだ。サビーナには、これが楽しくてたまらなかった。
幼い頃から一緒にいるデニスは、『あんたと俺とじゃ年季が違う』とよくむくれっ面をする。確かにそうかもしれないが、それでもセヴェリを生かそうと思う心については、誰にも負けないつもりだ。
と思いながらも、セヴェリの攻略方法は全く考えつかないのだが。
そんな毎日を過ごしていたある日、終業の時間が過ぎた直後の事。サビーナの頭をグワシと引っ掴む者がいた。サビーナは驚いて頭を上げる。
「なっ!?」
「おい、サビーナ。ちょっとお前の部屋まで来てもらおうか」
リックバルドが『俺の部屋まで来てもらおうか』と同じニュアンスで怒気を放っている。何を言われるか見当が付くだけに憂鬱だ。
サビーナはリックバルドの小脇に抱えられて、自分の部屋に入る事となった。
「さぁて、何から言ってやろうか」
部屋に入ると、リックバルドは無造作にサビーナを放るように押し出した。サビーナはよろよろとバランスを崩し、足がもつれてベシャリと床に突っ伏す。
「うー」
「立て。ケツでも蹴られたいか」
「蹴られたいわけないよっ」
サビーナは慌てて立ち上がり、リックバルドと対峙した。彼は相変わらず偉そうに、腕を組んで仁王立ちしている。
長身で威圧感があり過ぎるため、やめて欲しいと心底願う。
「で、お前は何を呑気にデニスとデートなんぞをしている」
「デートじゃないし……」
「男と二人で出掛ければ、お前は思っていなくとも周りはそう思う。デニスが好きでも自重しろ。お前はデートする相手を間違っているだろう」
自重という言葉を聞いて、サビーナは瞠目して己の兄の顔を見た。
よくもそんな事が言えたものだ。厚顔にも程がある。レイスリーフェの誘いにホイホイと乗ってしまうこの兄にだけは、そんな事を言われたくない。
「あのね、リック! 私は別にデニスさんの事が好きなわけじゃないし、セヴェリ様の事だって一応頑張ってるんだよ!」
「頑張るって一体何をだ。この二週間、お前はデニスとデートしてただけだろう!」
「そ、そんなことないもん」
「じゃあセヴェリ様に対して何をした? 言ってみろっ」
「し、したよ!? お、お茶を淹れたりだとか……」
「それはただの仕事だろうがっ」
そんなに怒髪天を突く勢いで怒らなくてもいいと思うのだが、この高圧的な兄が怖くて、逆らえずにサビーナは口を噤む。
リックバルドはそんな妹をジロリと睨むと、冷たく言い放った。
「いいか、今からセヴェリ様をデートに誘え」
毎度の唐突発言が来た。この兄は本当に勝手過ぎる。こちらにも都合というものがあるというのに。
「今からとか、無理だよ。今日はデニスさんと食事に行く約束してんだから」
「心配するな。断っておいた」
「……はい??」
リックバルドの言葉に目が点になる。今この男は何と言ったか。信じられない言葉を耳にした気がするが、気のせいだろうか。
「デニスには、断っておいてやったと言っている」
残念ながら、気のせいではなかった。何という勝手な真似をしてくれるのか。サビーナの頭の中が、一瞬で真っ暗になった。
「う、うそぉ……」
「別に構わんだろう。お前は今デニスを好きではないと言っていたではないか」
「恋愛感情はないって意味で、友達として大切なのには変わりないよ! デニスさんに何て言って断っちゃったの!?」
「サビーナが迷惑しているから、今後食事になど誘うなと言っておいた」
「ふざけんなーーーーっ!!」
リックバルドの言葉に一気に血が上り、思わず部屋に立て掛けてあった剣を抜き取った。そしてオクスの構えからそのまま猪突猛進して行く。
「ヤーーッ!」
突進と同時にリックバルドは己の剣を抜き、呆気なくサビーナの剣を叩き上げる。
ガキンと音がしたかと思うと、懐に入られ剣を持つ手をねじり上げられた。
一瞬だった。何もできずにサビーナは眉を顰める。
「っくぅ!」
「相変わらず思い切りだけは良いが、少しはフェイントを入れろ。成長せん奴だな」
「ううーーっ! もうお説教はいらないよっ」
掴まれた手首が痛くて、サビーナは剣を手放す。ガランと音がして地に着いたそれを、リックバルドは拾われないように足で刃を踏みつけてから、サビーナの手を解放した。
「もうほんっとに最低……リック嫌いっ」
「その台詞、今までに何度言われただろうな。だが最終的にはいつも俺の言葉の方が正しかっただろう」
「今回は、絶対そうは思わない……だって、酷すぎるよ!」
サビーナが涙を滲ませると、リックバルドはそっと息を吐いた。そしてサビーナの頭を優しく撫でる。
「そう、だな……すまなかった」
「……え?」
この傲慢男の謝罪に、サビーナは耳を疑う。今までにリックバルドがサビーナに謝ったことなど、数える程しかない。
「だが今は、デニスなんぞにかまけている時間はない。セヴェリ様の婚姻の日が決まった。それを絶対に阻止して貰わなければならん」
「ちょ、それって自分のためなんじゃないの?」
「それも否定はせん」
いやいや否定してよと心で突っ込みを入れる。やはりこの兄は自分本位の考え方だ。
しかし実際にセヴェリとレイスリーフェが結婚してしまうと、謀反を起こす地盤が完成してしまう。阻止しなくてはいけない事態には変わりない。
「うー、でもセヴェリ様をデートに誘うって……どうすれば?」
「とにかくセヴェリ様の部屋に行くぞ」
そう言ってリックバルドは拾い上げた剣を鞘に戻すとサビーナに渡し、また小脇に抱えられてしまった。
「ちょ、何す……」
「黙ってろ」
リックバルドには何か良い考えでもあるのだろうか。
大人しく小脇に抱えられ、連れてこられた先はやはりセヴェリの部屋だった。
「どうするの……?」
「こうする」
リックバルドはサビーナを下ろし、コンコンとノックをする。しかし返事が来る前に、リックバルドは踵を返してさっさと元来た廊下を去ってしまった。
ポカーン、である。
置き去りにされたサビーナは、中から「どなたですか」と問うセヴェリの言葉に答えられない。
やがて中から開けられた扉から、セヴェリが顔を出した。
「サビーナ? どうしたんです?」
「セ、セヴェリ様……」
自分の兄のあまりの対応に涙が出て来る。
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