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09.リア充になりたい
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拓真くんの引っ越しの日、看護師の仕事が休みになるように調整してもらっていた。
拓真くんのお父さんはパン屋を休めないので、来ていたのは母親の池畑さんだけ。私も微力ながらも片付けのお手伝いをすると、とっても喜んでくれた。
「園田さん、休みの日に本当にありがとうね。助かったわ! もう、住む場所から何からお世話になりっぱなしで……」
「いえいえ、これくらいなんて事ないですよ」
池畑さんがお礼を言ってくれるけど、むしろお礼を言いたいのは私の方。このアパートに決めてくれて、本当にありがとうございます!!
「お世話になりついでに、もう一つ頼んでもいいかしら?」
「え? 私にできる事なら……何ですか?」
「拓真が何か悪いことしてたら、連絡くれない?」
「悪い事ってなんだよ。するわけないだろ」
後ろから背の高い拓真くんがぬっと現れて、呆れたように息を吐いてる。
「一人暮らしなんて初めてだし、バカをやらかさないかとお母さんは心配よ」
「何もしないって!!」
「園田さん、気づいた事があったらよろしくお願いね。電話番号、私も聞いておいて良いかしら」
「あ、はい。もちろん!」
池畑さんとも携帯の番号を交換する。これで安心だととても喜んでくれた。
「ありがとう。園田さんみたいなしっかりした人がお隣で良かったわぁ。拓真、悪い事してもすぐ母さんに伝わってくるんですからね!」
「だからしねーって!!」
「園田さん、拓真の事、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ!」
池畑さんはその後も拓真くんに、くれぐれもバカな事はするんじゃないって念を押してから帰って行った。何度も心配されてしまった拓真くんは、ちょっと腹を立てているみたい。
「まったく、ちょっとは息子を信用してくれてもいいのに」
「池畑さんは心配してくれてるんだよ。良いお母さんじゃない」
そう言っても、拓真くんはどこか納得いかない様子だったけど。
私はもう、拓真くんがお隣さんってだけでパラダイス!
これからはきっと、どんどん仲良くなれるに違いないよね。
「じゃ、園田さんもありがとう」
「あ、うん。もう手伝う事ない?」
「大丈夫、後は自分でしかやれない事だから。じゃ」
バタン、と扉が目の前で閉まる。
……あっさり、だね……。
一緒にお茶でもしたかったんだけど……仕方ないか。
これからいくらでも機会はある!!
その日はそう思って、るんるん気分で隣に帰った。
けど、それから一ヶ月。
拓真くんとの仲は……全く変わってない。
不規則な看護師の私の仕事と、学校が終わった後はアルバイトをして、夜はバレーに出かける拓真くんとは、ほとんど会えない!!
どういう事!! もっと親密になれる予定だったのにー!!
ゴールデンウィークには、拓真くんは地元に帰っちゃうし。こっちは一人寂しく仕事だよー。
拓真くんに会いたいよーー。
仕事を終えて、今日も拓真くんに会えないんだろうなという思いで、苛立ちながらロッカーを締める。
「園田、やさぐれてどしたの」
「別にやさぐれてなんか、ないよ!」
よしちゃんの言葉にプンプンと頬を膨らませると、ロッカーで白衣を脱いだよしちゃんは苦笑いをしてる。
「あのさ、園田がやさぐれてる時に言うのも悪いんだけどさ」
「なに、よしちゃん」
「私、結婚する事にしたから」
「え、えー!? 二年前から付き合ってた彼氏と!?」
「うん、なんか先週いきなりプロポーズされてさー」
よしちゃんはそう言いながら、照れ臭そうにほっぺをカリカリと掻いてる。
プ、プロポーズ……っ! なんて羨ましいっ!
「おめでとう、よしちゃん!」
「ありがと。まぁ実際結婚するのはまだ先だけどね」
「結婚式は挙げるの?」
「多分ね。私は籍を入れるだけでも良いんだけどさ。あっちのご両親がうるさそうなんだよね」
そんな事を言いながらも、よしちゃんの顔はニマニマと笑ってる。
よしちゃんは私と同期だけど、四年制の大学を出て看護師になったから、一つ年上の二十五歳だ。
二十五歳って、世間的には若いって思われそうだけど、結婚するにはちょうど良い年齢だと思う。
「園田はまだ彼氏出来ないの?」
「うっ! 言わないで……」
「ごめんごめん。でもまぁ、お姉さんとしてはちょっと心配かな?」
「もうっ、お姉さんぶって、いっこしか変わんないでしょー!」
「あははっ」
よしちゃんはこういう事になると、いっつも子供扱いしてくる。悔しいなぁ。本当に心配してくれてるのは分かってるんだけど。
「園田は奥手そうだからね。手伝って欲しい事があったら言ってよ? 私が押しまくってあげる!」
よしちゃんなら本当に押しまくりそう……嬉しいような、怖いような。
「うーん、いつかそんな時が来たら、その時はお願い」
「お? そんな風に言うって事は、好きな人でも出来たかな、園田くん」
よしちゃんはおどけながらそう言って、ニヤニヤと笑ってくる。
うーー。今はまだ、恥ずかしくて言えない。
「そ、そんなんじゃないから!」
「ふふーん、そう?」
なんか、よしちゃんには見透かされてる感じがする。
さすがに、相手が拓真くんだとは思ってないだろうけど。
よしちゃんに教えるにしても、せめてもう少しだけ、拓真くんと仲良くなってからにしたいなぁ。
それにしても、結婚かぁ。私もいつか結婚、できるのかな?
……一生、家と病院の往復で終わりそうな気がする。
えーん、私もリア充になりたーい!
拓真くんのお父さんはパン屋を休めないので、来ていたのは母親の池畑さんだけ。私も微力ながらも片付けのお手伝いをすると、とっても喜んでくれた。
「園田さん、休みの日に本当にありがとうね。助かったわ! もう、住む場所から何からお世話になりっぱなしで……」
「いえいえ、これくらいなんて事ないですよ」
池畑さんがお礼を言ってくれるけど、むしろお礼を言いたいのは私の方。このアパートに決めてくれて、本当にありがとうございます!!
「お世話になりついでに、もう一つ頼んでもいいかしら?」
「え? 私にできる事なら……何ですか?」
「拓真が何か悪いことしてたら、連絡くれない?」
「悪い事ってなんだよ。するわけないだろ」
後ろから背の高い拓真くんがぬっと現れて、呆れたように息を吐いてる。
「一人暮らしなんて初めてだし、バカをやらかさないかとお母さんは心配よ」
「何もしないって!!」
「園田さん、気づいた事があったらよろしくお願いね。電話番号、私も聞いておいて良いかしら」
「あ、はい。もちろん!」
池畑さんとも携帯の番号を交換する。これで安心だととても喜んでくれた。
「ありがとう。園田さんみたいなしっかりした人がお隣で良かったわぁ。拓真、悪い事してもすぐ母さんに伝わってくるんですからね!」
「だからしねーって!!」
「園田さん、拓真の事、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ!」
池畑さんはその後も拓真くんに、くれぐれもバカな事はするんじゃないって念を押してから帰って行った。何度も心配されてしまった拓真くんは、ちょっと腹を立てているみたい。
「まったく、ちょっとは息子を信用してくれてもいいのに」
「池畑さんは心配してくれてるんだよ。良いお母さんじゃない」
そう言っても、拓真くんはどこか納得いかない様子だったけど。
私はもう、拓真くんがお隣さんってだけでパラダイス!
これからはきっと、どんどん仲良くなれるに違いないよね。
「じゃ、園田さんもありがとう」
「あ、うん。もう手伝う事ない?」
「大丈夫、後は自分でしかやれない事だから。じゃ」
バタン、と扉が目の前で閉まる。
……あっさり、だね……。
一緒にお茶でもしたかったんだけど……仕方ないか。
これからいくらでも機会はある!!
その日はそう思って、るんるん気分で隣に帰った。
けど、それから一ヶ月。
拓真くんとの仲は……全く変わってない。
不規則な看護師の私の仕事と、学校が終わった後はアルバイトをして、夜はバレーに出かける拓真くんとは、ほとんど会えない!!
どういう事!! もっと親密になれる予定だったのにー!!
ゴールデンウィークには、拓真くんは地元に帰っちゃうし。こっちは一人寂しく仕事だよー。
拓真くんに会いたいよーー。
仕事を終えて、今日も拓真くんに会えないんだろうなという思いで、苛立ちながらロッカーを締める。
「園田、やさぐれてどしたの」
「別にやさぐれてなんか、ないよ!」
よしちゃんの言葉にプンプンと頬を膨らませると、ロッカーで白衣を脱いだよしちゃんは苦笑いをしてる。
「あのさ、園田がやさぐれてる時に言うのも悪いんだけどさ」
「なに、よしちゃん」
「私、結婚する事にしたから」
「え、えー!? 二年前から付き合ってた彼氏と!?」
「うん、なんか先週いきなりプロポーズされてさー」
よしちゃんはそう言いながら、照れ臭そうにほっぺをカリカリと掻いてる。
プ、プロポーズ……っ! なんて羨ましいっ!
「おめでとう、よしちゃん!」
「ありがと。まぁ実際結婚するのはまだ先だけどね」
「結婚式は挙げるの?」
「多分ね。私は籍を入れるだけでも良いんだけどさ。あっちのご両親がうるさそうなんだよね」
そんな事を言いながらも、よしちゃんの顔はニマニマと笑ってる。
よしちゃんは私と同期だけど、四年制の大学を出て看護師になったから、一つ年上の二十五歳だ。
二十五歳って、世間的には若いって思われそうだけど、結婚するにはちょうど良い年齢だと思う。
「園田はまだ彼氏出来ないの?」
「うっ! 言わないで……」
「ごめんごめん。でもまぁ、お姉さんとしてはちょっと心配かな?」
「もうっ、お姉さんぶって、いっこしか変わんないでしょー!」
「あははっ」
よしちゃんはこういう事になると、いっつも子供扱いしてくる。悔しいなぁ。本当に心配してくれてるのは分かってるんだけど。
「園田は奥手そうだからね。手伝って欲しい事があったら言ってよ? 私が押しまくってあげる!」
よしちゃんなら本当に押しまくりそう……嬉しいような、怖いような。
「うーん、いつかそんな時が来たら、その時はお願い」
「お? そんな風に言うって事は、好きな人でも出来たかな、園田くん」
よしちゃんはおどけながらそう言って、ニヤニヤと笑ってくる。
うーー。今はまだ、恥ずかしくて言えない。
「そ、そんなんじゃないから!」
「ふふーん、そう?」
なんか、よしちゃんには見透かされてる感じがする。
さすがに、相手が拓真くんだとは思ってないだろうけど。
よしちゃんに教えるにしても、せめてもう少しだけ、拓真くんと仲良くなってからにしたいなぁ。
それにしても、結婚かぁ。私もいつか結婚、できるのかな?
……一生、家と病院の往復で終わりそうな気がする。
えーん、私もリア充になりたーい!
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