思い出の夏祭り 〜君が私の気持ちに気づくまで〜

長岡更紗

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30.タコ飯

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 次の日は、私のリクエスト通りタコ飯にしてもらった。
 大体午後六時くらいに家に来てくれって言われたから、家に帰ってゆっくりとバレーに行く準備をして、それからお隣に行った。

「ごめん、まだもうちょい。座って待ってて」

 時間ちょうどに行ったけど、まだご飯は出来てなかったみたい。
 中にお邪魔させてもらうも、どうにも手持ち無沙汰。かと言って、私が料理を手伝うなんて出来るはずもないし……
 ふと見ると、ベッドの上にハンガーがついたままの服が放りっぱなしになってた。帰って来て洗濯物を取り込んで、そのままにしちゃったんだろうな。
 学校帰りにバイトして、ちゃんとご飯を作ってバレーにも行くって大変そう。他の家事なんて、きっと煩わしいよね。よし、私が一肌脱いじゃおう。
 ハンガーから服を外して、一枚一枚丁寧に畳んでいく。
 あ、なんか奥さんっぽいかも? な、なんちゃって!

「ミキー、ご飯出来……ちょ、何やって……?!」

 拓真くんが私の姿を見て、慌ててご飯をテーブルの上に置いてる。

「あ、勝手にごめんなさい。ちょっとでも拓真くんの家事の手間がなくなれば良いかと思って」
「や、うん……嬉しいんだけど、それ……俺のパンツ……」

 え? あ!! ちょうど手に取ったのが、拓真くんのパンツだったー!!
 やだ、よりによって、今とか!!

「あ、ご、ごめんね! でも大丈夫だよ、私、男の人のパンツなんて見慣れてるし!」

 お兄ちゃんもいたんだから、パンツを畳むくらいは慣れてる。それに職業柄、年頃の男の子の剃毛や、尿管を通した事だってあるんだからね?!
 こ、こんな……パンツ、パンツくらい……拓真くんのパンツ……
 はわわわ、ドキドキしちゃう! 拓真くんはボクサーパンツなのか、そうか……じゃなくって!!
 お願い、今は鼻血出ないで!! 変に思われちゃう!!
 拓真くんは複雑そうな顔してるし……ああああっ。
 アワアワしながらも何とかパンツを畳み終えた。はぁ、まだ心臓がおさまらない。

「まぁ……出来たから、食べようぜ」

 拓真くんがそう言ったから、洗濯物を畳むのは一時中断してご飯を食べる。
 タコ飯が……何故か、体に沁みるよ……超美味しい。
 この食感が良いよね。生姜も入ってるっぽい。うわぁ、合うんだこれが!!

「もうこれ美味し過ぎるよーっ」
「だろ? 俺、これが一番好きなんだよな! タコさえ安けりゃなぁ~」

 美味しいものを食べるって、ホント幸せ!!
 しかも好きな人が作って、好きな人と一緒に食べるんだもん。こんな贅沢は他にないよね!
 私も拓真くんもお腹いっぱいに食べちゃった。おひつの中は見事に空っぽ。
 拓真くんは食器を片付け始めたから、私は洗濯物の続きをする。

「ミキ、置いといて良いよ。なんか悪ぃし」
「ううん、私は台所周りは苦手だから、こんな事しかできないし……拓真くんが嫌じゃないなら、させて?」
「ミキが嫌じゃないなら、俺はまぁ……うん、まぁ別に良いけど」
「もう畳んじゃったから、他に手伝える事ない?」
「うーん……じゃあ風呂掃除とか?」
「分かった、任せて!」

 そうしてお風呂掃除を終えて出てくると、拓真くんも台所の片付けを終わらせた所だった。

「あ、掃除ありがとう」
「ううん、拓真くんはご飯を作る手間もあるんだから、このくらいはさせて」
「助かるよ。家にいた頃も、家事はほとんど俺の仕事だったからなぁ。やってくれるとありがたい」
「ええ、そうなの?」
「リナが八ヶ月間入院してる時なんかは、家事はぜーんぶ俺の仕事だったよ。家事って大変だよなぁ。料理は良いんだけど、細かい掃除とかすげぇ苦手」

 リナちゃんが入院してた時は、お母さんの池畑さんも付き添いでずっと病院だったもんね。高校生が全部の家事をするって大変だったろうなぁ。
 そういう経験のお陰か、綺麗な部屋にしてると思うけどね。苦手ながらも頑張ってるんだろうな。
 見ると、拓真くんは私が昨日あげたスポーツタオルを手に取ってた。それをいつものスポーツバッグに入れてくれてる。

「ありがとう、使ってくれるんだ」
「当たり前だろ? 折角くれたんだから」
「あ、そういえば、拓真くんの誕生日っていつなの?」

 昨日、タオルをあげた時に誕生日の話が出たから、気になってたんだけど。いきなり聞いて、不自然だったかな?

「え、俺? 四月十四日だけど」

 あーー、もうとっくに過ぎてたー! 引っ越してすぐに誕生日だったんだね……残念。

「そ、そっかぁ……」
「やば、時間なくなってきた。行こうぜ」

 私の誕生日も聞いてくれるかなって思ったけど……興味ないんだろうな。聞かれなかった。ちょっと寂しいけど、仕方ないのかな。
 急いで靴を履く拓真くんの後ろで、私は密かな溜め息を吐いた。
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