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第二章 男装王子の秘密の結婚 〜王子として育てられた娘と護衛騎士の、恋の行方〜
076●フロー編●67.地獄
「やった……イグナーツがやってくれたよ、ツェツィー!!」
「はい……、はい、フロー様!」
上から見ていたフローリアンたちは、その様子を見て手を取り合った。
組織側は降参した。これで抗争は終わるのだと、二人は疑っていなかった。
しかし、扉の向こう側の剣戟の音は、まだ止んでいない。
フローリアンは部屋の外に聞こえるように、喉の限界まで叫んだ。
「剣を納めよ!! 決着はついた!! クーデターは失敗に終わっている!!」
聞こえているのかいないのか、それとも信じていないのか。争う声は止まらない。
「ラルス無事か!? 聞こえているなら返事をしてくれ!!」
そう叫ぶと、ドンッと壁に誰かがぶつかる音がした。そしてドサリと床に倒れる音が響く。
「ラルス……ラルス?!」
最初と比べて、動いている人数が随分と減っているような気がする。
もしかして、ラルスはすでに床に沈んでいるのかもしれないと思うと、背筋がゾッと凍った。
フローリアンの手の中にある、ラルスの剣帯。
愛する人に刺繍をしてもらうと、〝無事に帰ることができる〟という意味があるとラルスは言っていた。
が、今その剣帯はフローリアンが持っている。その意味を〝あなたを必ず生かす〟に変えて。
(これ、僕が持ってちゃ、意味がなかったんじゃ……!!)
最悪の事態が脳裏をよぎり、心臓に氷をつけられたのかと思うほど、体が冷たくなる。
「これ以上の抗争は許さない!! 外の歓声が聞こえないのか!! 戦いは終わりだ……終わったんだ!!」
どれだけフローリアンが必死に叫んでも、争う音は絶え間なく聞こえてくる。
フローリアンは思わず扉の前に行き、その鍵を外そうとした。
「なにをなさっていますの、フロー様!」
慌てて駆け寄ってきたツェツィーリアが、扉の前に滑り込んでくる。
「そこを避けて、ツェツィー!! 開けるんだ! 止めないと!!」
「いけませんわ!! 危険です!!」
ツェツィーリアは大きく手を広げて扉を塞いだ。その間にも、うめき声をあげてどさりと倒れる音が聞こえてくる。
「お願いだ! 早く止めなきゃ……!!」
「すぐに下から通達が来ますわ! そうすれば、ここでの戦闘も終わります!!」
「そんなんじゃ、間に合わなくなる!!」
イラついて叫ぶと、フローリアンの首にツェツィーリアの腕がふわりと巻きつけられた。
「落ち着いてくださいませ、どうか……! ラルス様は、フロー様のために出ていかれたのです……その思いを、無にしてはいけませんわ……!」
「でも……っ」
そういった瞬間、「ぐああっ」と声が上がり、二人分の倒れる音が聞こえた。
そして、外の気配がしなくなった。
「う……そ……ラルス……?」
相打ち、という言葉が脳内で揺らぐ。
愕然としているツェツィーリアの腕をすり抜けて、もう一度フローリアンは扉の前に立った。
たった今まで早く開けたいと思っていた扉に手を掛けようとするも、尋常じゃなくぶるぶると震えて鍵を外せない。
「フロー様……お下がりくださいませ……わたくしが、確認いたしますわ……」
ツェツィーリアはそういうと、フローリアンをベッドの上に座らせてくれる。そして、ツェツィーリアが扉を開けた、その時。
「きゃあああああ!!」
ツェツィーリアのつんざくような声が部屋に響き、フローリアンの視界は赤く染まっていた。
***
フローリアンは、重い扉を閉め、自分で鍵をかけた。
そして、ベッドに横たわる美しいツェツィーリアとその娘のリーゼロッテをみやる。
この部屋で動いているのは、フローリアンとメイベルティーネだけだ。
頭がぼうっとした。この二日間は夢だったのではないかと思ってしまうほど。
流れ込んできてしまった血の匂いが気持ち悪いと、フローリアンは緊急避難用の部屋の小さな窓から外を覗いた。
もうすぐ、外にも伝えられるはずだ。
王妃のツェツィーリア、そして次女のリーゼロッテが死んだことを。
一人の騎士が外に出たかと思うと、傷の手当てをされているシャインに向かって話をしている。
その瞬間、ずっと鳴り響いていたイグナーツのリュートの音が、止んだ。
人々の口からは嘆きの声が放たれ、イグナーツはその場で狂うように叫んでいた。
「はい……、はい、フロー様!」
上から見ていたフローリアンたちは、その様子を見て手を取り合った。
組織側は降参した。これで抗争は終わるのだと、二人は疑っていなかった。
しかし、扉の向こう側の剣戟の音は、まだ止んでいない。
フローリアンは部屋の外に聞こえるように、喉の限界まで叫んだ。
「剣を納めよ!! 決着はついた!! クーデターは失敗に終わっている!!」
聞こえているのかいないのか、それとも信じていないのか。争う声は止まらない。
「ラルス無事か!? 聞こえているなら返事をしてくれ!!」
そう叫ぶと、ドンッと壁に誰かがぶつかる音がした。そしてドサリと床に倒れる音が響く。
「ラルス……ラルス?!」
最初と比べて、動いている人数が随分と減っているような気がする。
もしかして、ラルスはすでに床に沈んでいるのかもしれないと思うと、背筋がゾッと凍った。
フローリアンの手の中にある、ラルスの剣帯。
愛する人に刺繍をしてもらうと、〝無事に帰ることができる〟という意味があるとラルスは言っていた。
が、今その剣帯はフローリアンが持っている。その意味を〝あなたを必ず生かす〟に変えて。
(これ、僕が持ってちゃ、意味がなかったんじゃ……!!)
最悪の事態が脳裏をよぎり、心臓に氷をつけられたのかと思うほど、体が冷たくなる。
「これ以上の抗争は許さない!! 外の歓声が聞こえないのか!! 戦いは終わりだ……終わったんだ!!」
どれだけフローリアンが必死に叫んでも、争う音は絶え間なく聞こえてくる。
フローリアンは思わず扉の前に行き、その鍵を外そうとした。
「なにをなさっていますの、フロー様!」
慌てて駆け寄ってきたツェツィーリアが、扉の前に滑り込んでくる。
「そこを避けて、ツェツィー!! 開けるんだ! 止めないと!!」
「いけませんわ!! 危険です!!」
ツェツィーリアは大きく手を広げて扉を塞いだ。その間にも、うめき声をあげてどさりと倒れる音が聞こえてくる。
「お願いだ! 早く止めなきゃ……!!」
「すぐに下から通達が来ますわ! そうすれば、ここでの戦闘も終わります!!」
「そんなんじゃ、間に合わなくなる!!」
イラついて叫ぶと、フローリアンの首にツェツィーリアの腕がふわりと巻きつけられた。
「落ち着いてくださいませ、どうか……! ラルス様は、フロー様のために出ていかれたのです……その思いを、無にしてはいけませんわ……!」
「でも……っ」
そういった瞬間、「ぐああっ」と声が上がり、二人分の倒れる音が聞こえた。
そして、外の気配がしなくなった。
「う……そ……ラルス……?」
相打ち、という言葉が脳内で揺らぐ。
愕然としているツェツィーリアの腕をすり抜けて、もう一度フローリアンは扉の前に立った。
たった今まで早く開けたいと思っていた扉に手を掛けようとするも、尋常じゃなくぶるぶると震えて鍵を外せない。
「フロー様……お下がりくださいませ……わたくしが、確認いたしますわ……」
ツェツィーリアはそういうと、フローリアンをベッドの上に座らせてくれる。そして、ツェツィーリアが扉を開けた、その時。
「きゃあああああ!!」
ツェツィーリアのつんざくような声が部屋に響き、フローリアンの視界は赤く染まっていた。
***
フローリアンは、重い扉を閉め、自分で鍵をかけた。
そして、ベッドに横たわる美しいツェツィーリアとその娘のリーゼロッテをみやる。
この部屋で動いているのは、フローリアンとメイベルティーネだけだ。
頭がぼうっとした。この二日間は夢だったのではないかと思ってしまうほど。
流れ込んできてしまった血の匂いが気持ち悪いと、フローリアンは緊急避難用の部屋の小さな窓から外を覗いた。
もうすぐ、外にも伝えられるはずだ。
王妃のツェツィーリア、そして次女のリーゼロッテが死んだことを。
一人の騎士が外に出たかと思うと、傷の手当てをされているシャインに向かって話をしている。
その瞬間、ずっと鳴り響いていたイグナーツのリュートの音が、止んだ。
人々の口からは嘆きの声が放たれ、イグナーツはその場で狂うように叫んでいた。
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