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第二章 男装王子の秘密の結婚 〜王子として育てられた娘と護衛騎士の、恋の行方〜
083●フロー編●74.手がかり
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クーデターの主導者は絞り込んで処分を下したものの、首謀者はわからなかった。
主導者の中に首謀者が紛れただけで、厳しい処分を下したのだからもういいのではないかとフローリアンは思っていたが、どうにもシャインの顔だけは晴れなかった。
「首謀者が、処分を下した者たちの中にいればそれでも構わないのですが……」
シャインは胸になにかを詰まらせたような、苦しそうな顔をしている。
フローリアンの部屋で、いつもの三人は重い空気を吸い込んだ。
「シャイン殿は処分を下した者以外で、首謀者がいると思っているんですか?」
ラルスの問いに、シャインは「おそらくとしか言えませんが」と首を横に振る。
「私はいつも勘繰りすぎてしまうのですよ。結局、ウッツ・コルベの時もなにも出てきませんでしたし」
「あ、ウッツ・コルベと言えば……ブルーノっていう騎士をご存知ですか?」
ブルーノというと、ラルスの元後輩で、最後に降参を宣言した騎士だ。
騎士と言っても国に仕える公的騎士ではなく、貴族お抱えの私的騎士である。
しかしブルーノの仕えるシンドリュー家はクーデターとは関係がなく、ブルーノが個人的に組織に入っていたとのことだった。
「そのブルーノがどうかしたのか?」
フローリアンが首を傾げると、ラルスはこくりと頷いた。
「結婚したそうですよ。ゲルダ・コルベと」
「ゲルダ……」
フローリアンが呟くと、覚えてないと思われたのか、シャインが低い声で説明してくれる。
「ウッツの娘です。ディートフリート様と結婚させようとしていた」
そのウッツの娘のゲルダが、ブルーノと結婚をしたらしい。
特段、なにかおかしいようなところがあるようには思えず、やはりフローリアンは首を逆に傾げた。
「それが、どうかしたのか?」
「いえ、ただの世間話です。ブルーノの仕えるシンドリュー家って身内贔屓なんだなって思っただけで」
「身内贔屓とは?」
ラルスの話に疑問を浮かべたのは、フローリアンではなくシャインだった。その問いにラルスは言いにくそうに言葉を発した。
「ゲルダは犯罪者の娘ということもあって、婚期を大幅に過ぎた四十歳です。逆にブルーノはまだ二十七歳で、見目もいい優秀な騎士……こう言ってはなんですけど、シンドリュー家は勝手にクーデターに加担したブルーノに、身内のゲルダを押しつけたんじゃないかと……」
「今、なんと言った?」
ラルスの言葉の途中で、シャインがさらに低い声で滑り込んできた。
「え? 勝手にクーデターに加担した?」
「その後です」
「身内のゲルダを押し付けた……」
「身内……」
シャインはボソリと呟くと、改めてラルスの顔を見ている。
「どうして身内だと? コルベとシンドリューに繋がりはないはず。私はあの時、さんざんコルベの周辺を洗ったのだから、間違いありません」
シャインが珍しく睨むようにいったので、ラルスは慌てて両手を左右に振りはじめた。
「あ、そうなんですね! 俺の勘違いでした! シンドリュー家の人たちとゲルダの鼻の形がそっくりだったんで、身内かと思ってしまって」
「鼻……」
そう言われてフローリアンも思い返す。確かゲルダも、シンドリューの奥方と令息も、矢印のような特徴的な鼻をしていたように思った。それもなんとなくで、おぼろげにしか思い出せなかったが。
人の顔を一瞬で覚えることができるラルスは、すぐに鼻の形が一致したのだろう。
シャインは目を見開いたまま顎に手を当てて、何事かを考え込んでいる。
邪魔をしないようにフローリアンはラルスに話しかけた。
「シンドリューって、薬剤の会社を手掛けてる家だったよね」
「そうですね。貴族の位は高い方ではないですが、コルベ家よりも財産はあるようです」
「うん。そういうところの私的騎士は待遇がいいだろうから、雇い主の意に沿わない行動はしないと思うんだけど、ブルーノはよっぽど男性優位の社会がよかったのかな」
「うーん、男だから女だからとか、こだわるようなやつには見えないんですよね。あいつは寡黙で顔に出ない男なので、なにを考えているかわからないところはありましたが」
「じゃあ、ブルーノがクーデターに加わったのも、自分の意思じゃなかったってこと?」
「それはわかりませんが、もしそうだとしたらブルーノは誰かに弱みを握られていたか、恩のある相手のために組織に加わるしかなかったんじゃないですかね。ブルーノが自分の意思でクーデターに加わったと言われるより、俺はそっちの方が納得できます」
ラルスが言い終えると、シャインがいつもは穏やかな顔をギラつかせている。
「シャイン?」
「コルベとシンドリューの関係を洗います。ラルスは、ブルーノの生い立ちを調べてきてください。陛下、御前を失礼いたします!」
フローリアンがなにかを言う前に、シャインは部屋を出て行った。
あんなシャインを見たのは初めてだ。怖い顔ではあったが、どこか嬉しそうでもあった。
「なんだか楽しそうでしたね、シャイン殿」
ラルスも似たような感想を持っていて、フローリアンはこくりと頷く。
「なにか確信を得たのかな。ラルスも、言われた通りブルーノの生い立ちを詳しく調べるんだ」
「わかりました!」
命令すると、ラルスもまた嬉しそうに部屋を出て行った。
主導者の中に首謀者が紛れただけで、厳しい処分を下したのだからもういいのではないかとフローリアンは思っていたが、どうにもシャインの顔だけは晴れなかった。
「首謀者が、処分を下した者たちの中にいればそれでも構わないのですが……」
シャインは胸になにかを詰まらせたような、苦しそうな顔をしている。
フローリアンの部屋で、いつもの三人は重い空気を吸い込んだ。
「シャイン殿は処分を下した者以外で、首謀者がいると思っているんですか?」
ラルスの問いに、シャインは「おそらくとしか言えませんが」と首を横に振る。
「私はいつも勘繰りすぎてしまうのですよ。結局、ウッツ・コルベの時もなにも出てきませんでしたし」
「あ、ウッツ・コルベと言えば……ブルーノっていう騎士をご存知ですか?」
ブルーノというと、ラルスの元後輩で、最後に降参を宣言した騎士だ。
騎士と言っても国に仕える公的騎士ではなく、貴族お抱えの私的騎士である。
しかしブルーノの仕えるシンドリュー家はクーデターとは関係がなく、ブルーノが個人的に組織に入っていたとのことだった。
「そのブルーノがどうかしたのか?」
フローリアンが首を傾げると、ラルスはこくりと頷いた。
「結婚したそうですよ。ゲルダ・コルベと」
「ゲルダ……」
フローリアンが呟くと、覚えてないと思われたのか、シャインが低い声で説明してくれる。
「ウッツの娘です。ディートフリート様と結婚させようとしていた」
そのウッツの娘のゲルダが、ブルーノと結婚をしたらしい。
特段、なにかおかしいようなところがあるようには思えず、やはりフローリアンは首を逆に傾げた。
「それが、どうかしたのか?」
「いえ、ただの世間話です。ブルーノの仕えるシンドリュー家って身内贔屓なんだなって思っただけで」
「身内贔屓とは?」
ラルスの話に疑問を浮かべたのは、フローリアンではなくシャインだった。その問いにラルスは言いにくそうに言葉を発した。
「ゲルダは犯罪者の娘ということもあって、婚期を大幅に過ぎた四十歳です。逆にブルーノはまだ二十七歳で、見目もいい優秀な騎士……こう言ってはなんですけど、シンドリュー家は勝手にクーデターに加担したブルーノに、身内のゲルダを押しつけたんじゃないかと……」
「今、なんと言った?」
ラルスの言葉の途中で、シャインがさらに低い声で滑り込んできた。
「え? 勝手にクーデターに加担した?」
「その後です」
「身内のゲルダを押し付けた……」
「身内……」
シャインはボソリと呟くと、改めてラルスの顔を見ている。
「どうして身内だと? コルベとシンドリューに繋がりはないはず。私はあの時、さんざんコルベの周辺を洗ったのだから、間違いありません」
シャインが珍しく睨むようにいったので、ラルスは慌てて両手を左右に振りはじめた。
「あ、そうなんですね! 俺の勘違いでした! シンドリュー家の人たちとゲルダの鼻の形がそっくりだったんで、身内かと思ってしまって」
「鼻……」
そう言われてフローリアンも思い返す。確かゲルダも、シンドリューの奥方と令息も、矢印のような特徴的な鼻をしていたように思った。それもなんとなくで、おぼろげにしか思い出せなかったが。
人の顔を一瞬で覚えることができるラルスは、すぐに鼻の形が一致したのだろう。
シャインは目を見開いたまま顎に手を当てて、何事かを考え込んでいる。
邪魔をしないようにフローリアンはラルスに話しかけた。
「シンドリューって、薬剤の会社を手掛けてる家だったよね」
「そうですね。貴族の位は高い方ではないですが、コルベ家よりも財産はあるようです」
「うん。そういうところの私的騎士は待遇がいいだろうから、雇い主の意に沿わない行動はしないと思うんだけど、ブルーノはよっぽど男性優位の社会がよかったのかな」
「うーん、男だから女だからとか、こだわるようなやつには見えないんですよね。あいつは寡黙で顔に出ない男なので、なにを考えているかわからないところはありましたが」
「じゃあ、ブルーノがクーデターに加わったのも、自分の意思じゃなかったってこと?」
「それはわかりませんが、もしそうだとしたらブルーノは誰かに弱みを握られていたか、恩のある相手のために組織に加わるしかなかったんじゃないですかね。ブルーノが自分の意思でクーデターに加わったと言われるより、俺はそっちの方が納得できます」
ラルスが言い終えると、シャインがいつもは穏やかな顔をギラつかせている。
「シャイン?」
「コルベとシンドリューの関係を洗います。ラルスは、ブルーノの生い立ちを調べてきてください。陛下、御前を失礼いたします!」
フローリアンがなにかを言う前に、シャインは部屋を出て行った。
あんなシャインを見たのは初めてだ。怖い顔ではあったが、どこか嬉しそうでもあった。
「なんだか楽しそうでしたね、シャイン殿」
ラルスも似たような感想を持っていて、フローリアンはこくりと頷く。
「なにか確信を得たのかな。ラルスも、言われた通りブルーノの生い立ちを詳しく調べるんだ」
「わかりました!」
命令すると、ラルスもまた嬉しそうに部屋を出て行った。
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