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第二章 男装王子の秘密の結婚 〜王子として育てられた娘と護衛騎士の、恋の行方〜
086●フロー編●77.再会
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それから一週間が経ち、シャインが戻ってきた。
ディートフリートとユリアーナ、それにリシェルとルーゼンを連れて。
赤い絨毯の敷かれた王の間では、王座に王冠を被ったフローリアンが、その隣にはラルスが立っている。
ディートフリートとユリアーナがフローリアンの前に跪き、ルーゼンはその後ろで跪いた。
フローリアンは他の警備の者を下がらせて人払いすると、リシェルの相手をしているというシャインを中へと呼ぶ。
「ママ、ママ!」
シャインの手の中のリシェルが、ユリアーナを乞うように手を伸ばした。
ユリアーナは娘が気になる様子だが、王の御前ということもあって顔を上げてはいない。
扉が閉まったのを確認したフローリアンは、ようやく声を上げた。
「みんな、楽にしていいよ。久々の再会なんだ、堅苦しいのはやめよう」
王の言葉に、兄と義姉はゆっくりと顔を上げる。それでも立ち上がろうとしない二人を見て、フローリアンは王座から立ち上がるとシャインの元へと歩いた。
「かわいいね。君がリシェルかい。僕の姪っ子だね」
シャインの手からリシェルを受け取ると、優しくその体を抱き上げた。
「ママーー、ママぁ!!」
「すごいなぁ、もうママってハッキリと言えるんだ」
暴れるようにユリアーナに手を伸ばしているリシェル。
生まれたのはメイベルティーネの方が先だが、まだママという言葉を言ったことはない。
「あはは、やっぱりママがいいようだよ。ほら、ユリアーナ」
促すと、ようやくディートフリートとユリアーナは立ち上がってリシェルを受け取ってくれる。
フローリアンは久しぶりに見る兄の顔を見上げた。
「お久しぶりです、兄さま」
「久しぶりだね、フロー……いや、陛下」
「僕をまだ家族だと思っているなら、そんな他人行儀な言葉はやめてください。それとも僕はもう、兄さまの家族ですらないのですか?」
悲哀の目で訴えると、ディートフリートは慌てて首を振った。
「いや、フロー、もちろん私の大事な弟だよ。……立派になったね。会えて嬉しいよ」
「僕もです、兄さま」
昔のように抱きつくと、ディートフリートも迷わず抱きしめ返してくれる。
またこうできることが、なによりも嬉しい。
ゆっくりと離れると、隣にいるユリアーナが目に涙を溜めながら頭を下げた。
「陛下、父ホルストの嫌疑を晴らしてくださり、本当にありがとうございました……! これで父も浮かばれます……」
「ホルストの嫌疑を晴らしたのは、シャインだよ。シャインの思いが、ドラドの悪事を暴いたんだ」
フローリアンの言葉で注目を浴びたシャインは、穏やかな笑みを浮かべている。そんなシャインからディートフリートたちに視線を戻し、フローリアンはきりっと眉を上げた。
「これで兄さまは、王族に戻ってくることができるね」
「……え?」
そんなことを言われるとは、思ってもいなかったのだろう。ディートフリートは目を広げて驚いている。
「ホルストの無実が証明されたんだ。ユリアーナの王都居住禁止措置もなくなる。ユリアーナが戻ってくるなら、兄さまだって戻ってこられるでしょう」
「だが私は、一度王族を離脱した身だ。もう一度王族に戻るという都合の良いことなど、できるはずが……」
「兄さまは、ご自分の部下を舐めておいでじゃないですか?」
フローリアンがそういうと、シャインとルーゼンがニッと笑みを向けていて、ディートフリートはその視線に気づいて振り向く。
「シャイン、ルーゼン……」
「できるよね、二人とも?」
「「お任せください」!」
この二人なら、堅物の議員たちをもうまく言いくるめてくれるだろう。
今はフローリアンに味方してくれる女性も多いし、なんとかなるはずだ。
「ラルス、ベルを連れてきてくれ。兄さまたちに見せてあげたいんだ」
「わかりました」
そう命令すると、ラルスは王の間を出て行った。
「兄さま、僕の子を見てくれる? かわいいんだよ」
「それはもちろん見るが……待ってくれ、フロー。私が王族に戻ってどうなる? 王はお前だ。我が国で継承争いがあった過去を忘れたか!? 私が王族に戻れば、無用な争いが起きることになるかもしれない」
「大丈夫ですよ、兄さま。僕が王位を退きます」
「フロー!? なにを……!」
フローリアンの言い分に、ディートフリートは驚き、目を見張っていた。
ディートフリートとユリアーナ、それにリシェルとルーゼンを連れて。
赤い絨毯の敷かれた王の間では、王座に王冠を被ったフローリアンが、その隣にはラルスが立っている。
ディートフリートとユリアーナがフローリアンの前に跪き、ルーゼンはその後ろで跪いた。
フローリアンは他の警備の者を下がらせて人払いすると、リシェルの相手をしているというシャインを中へと呼ぶ。
「ママ、ママ!」
シャインの手の中のリシェルが、ユリアーナを乞うように手を伸ばした。
ユリアーナは娘が気になる様子だが、王の御前ということもあって顔を上げてはいない。
扉が閉まったのを確認したフローリアンは、ようやく声を上げた。
「みんな、楽にしていいよ。久々の再会なんだ、堅苦しいのはやめよう」
王の言葉に、兄と義姉はゆっくりと顔を上げる。それでも立ち上がろうとしない二人を見て、フローリアンは王座から立ち上がるとシャインの元へと歩いた。
「かわいいね。君がリシェルかい。僕の姪っ子だね」
シャインの手からリシェルを受け取ると、優しくその体を抱き上げた。
「ママーー、ママぁ!!」
「すごいなぁ、もうママってハッキリと言えるんだ」
暴れるようにユリアーナに手を伸ばしているリシェル。
生まれたのはメイベルティーネの方が先だが、まだママという言葉を言ったことはない。
「あはは、やっぱりママがいいようだよ。ほら、ユリアーナ」
促すと、ようやくディートフリートとユリアーナは立ち上がってリシェルを受け取ってくれる。
フローリアンは久しぶりに見る兄の顔を見上げた。
「お久しぶりです、兄さま」
「久しぶりだね、フロー……いや、陛下」
「僕をまだ家族だと思っているなら、そんな他人行儀な言葉はやめてください。それとも僕はもう、兄さまの家族ですらないのですか?」
悲哀の目で訴えると、ディートフリートは慌てて首を振った。
「いや、フロー、もちろん私の大事な弟だよ。……立派になったね。会えて嬉しいよ」
「僕もです、兄さま」
昔のように抱きつくと、ディートフリートも迷わず抱きしめ返してくれる。
またこうできることが、なによりも嬉しい。
ゆっくりと離れると、隣にいるユリアーナが目に涙を溜めながら頭を下げた。
「陛下、父ホルストの嫌疑を晴らしてくださり、本当にありがとうございました……! これで父も浮かばれます……」
「ホルストの嫌疑を晴らしたのは、シャインだよ。シャインの思いが、ドラドの悪事を暴いたんだ」
フローリアンの言葉で注目を浴びたシャインは、穏やかな笑みを浮かべている。そんなシャインからディートフリートたちに視線を戻し、フローリアンはきりっと眉を上げた。
「これで兄さまは、王族に戻ってくることができるね」
「……え?」
そんなことを言われるとは、思ってもいなかったのだろう。ディートフリートは目を広げて驚いている。
「ホルストの無実が証明されたんだ。ユリアーナの王都居住禁止措置もなくなる。ユリアーナが戻ってくるなら、兄さまだって戻ってこられるでしょう」
「だが私は、一度王族を離脱した身だ。もう一度王族に戻るという都合の良いことなど、できるはずが……」
「兄さまは、ご自分の部下を舐めておいでじゃないですか?」
フローリアンがそういうと、シャインとルーゼンがニッと笑みを向けていて、ディートフリートはその視線に気づいて振り向く。
「シャイン、ルーゼン……」
「できるよね、二人とも?」
「「お任せください」!」
この二人なら、堅物の議員たちをもうまく言いくるめてくれるだろう。
今はフローリアンに味方してくれる女性も多いし、なんとかなるはずだ。
「ラルス、ベルを連れてきてくれ。兄さまたちに見せてあげたいんだ」
「わかりました」
そう命令すると、ラルスは王の間を出て行った。
「兄さま、僕の子を見てくれる? かわいいんだよ」
「それはもちろん見るが……待ってくれ、フロー。私が王族に戻ってどうなる? 王はお前だ。我が国で継承争いがあった過去を忘れたか!? 私が王族に戻れば、無用な争いが起きることになるかもしれない」
「大丈夫ですよ、兄さま。僕が王位を退きます」
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