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第三章 若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
104◆ディー編◆ 13.二十三年越しの約束
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ようやく、ようやくこの日がきた。
まるで自分を祝福してくれているかのような青い空と眩しい太陽に、ディートフリートは感謝を捧げる。
ここまでよくしてくれたルーゼン、シャイン。
そして両親に、王を引き継ぐことを決心してくれたフローリアン。
支えてくれた家臣たち、治安を維持してくれた騎士たち、支持してくれた国民たち──すべてに。
ディートフリートは今日、ずっとずっと待ってくれていた、ユリアーナを迎えに行く。
喜びで破裂しそうな心臓を押さえていると、隣を歩いていたルーゼンにからかわれて、少し力が抜けた。
せっかくの再会だ。どうせなら、かっこよく決めたいと思うのは男の性であると言える。
エルベスの町に入って歩いていると、町がざわつき始めた。
変装もしていなかったので、元王とばれてしまうのは仕方ないだろう。ルーゼンが適当にあしらいつつ、二人は進んだ。
とうとうユリアーナの働く宿に着いて中を覗くと、ここでもディートフリートを見た瞬間に周りが騒ぎ始める。
「お、王様……いや、元王様?!」
「ええ? 本物!? どうしてこんなところに!」
「もう私はただの一般人になったんだ。そう騒がなくても大丈夫だよ」
奥で働いていたユリアーナがディートフリートを見つめ、手に持っていた料理をことりとテーブルに置いていた。
色々言葉は考えていたが、まずはユリアーナがなにを言うのかを知りたいと、ほんの少しだけ待ってみる。
「ディー……なにも、王族を離脱しなくても……っ」
ユリアーナの第一声はそれで、少し震えていた。
「そうしないと、君とは結婚できなかった。それとも、王族でなくなった僕なんて、興味ないかい?」
「そんなわけはありません!! 私は、ディーが王族だから好きになったのではないんですから」
不思議なことに、ユリアーナと面と向かって話していると、一人称が『僕』に変わってしまっていた。
意識をしたわけじゃないが、あの日の感覚が蘇ってきたからか──それとも王という重責から、解き放たれたせいか。
どちらにせよ、あの頃の甘酸っぱい気持ちが徐々に蘇ってくる。
「僕も同じだよ。王としての使命は、弟がようやく引き継ぎを決心してくれた。僕は、できることをやったと思っている。今は、君との約束を果たしたい」
一歩前に出たディートフリートは、ユリアーナの手を取った。
二十三年間頑張ってきた彼女。
四十歳のユリアーナの苦労を物語る手は、とても美しく見えて──
気持ちは、溢れる。
「長い時を待たせてしまったね。どうか、僕と結婚してほしい」
ユリアーナがディートフリートを見つめている。
その瞳は、切なさをたたえていて、今すぐに抱きしめてあげたい気持ちに駆られた。
「私なんかでよろしいんですか? 私はもうおばさんだし、子どもだって産めるかわからない」
「なら僕も同じだな。もう王族ではないし、今の僕は無職だよ。仕事を探さなきゃいけないな。贅沢な暮らしとは縁遠いだろう」
事実だが、ディートフリートはちっとも不安になどなっていなかった。
仕事は、探せばなんでもあるだろう。そういう政策をしてきたのは他でもない、この自分なのだから。
料理の腕前は王城の料理人お墨付きだし、できればそっち方面で活躍したい。ユリアーナが心配することなど、何一つないのだ。
「こんな僕だけど、ユリアと結婚したいんだ」
大丈夫なはずだと思っていても、緊張した。
ディートフリートの言葉に、ユリアーナはこくりと頷いてくれる。
「はい。私、ディーと結婚します!」
「ユリア!」
全身の血が駆け巡ったような熱を感じ、ユリアーナの手をグイと引く。
そしてそのまま体を引き寄せると、優しく唇を落とした。
ここまで自制が効かなくなっているとは、自分でも思いもしていなかったことだ。
「一般人は、結婚前にキスしてもいいんだよね」
照れ隠しにそんなことを囁いてみる。
四十になったユリアーナは、少女のようにはにかんでいて、愛おしさが倍増した。
宿にいた人たちが、わぁっと祝福の声を上げてくれる。
ルーゼンは、周りに反して泣いているようだった。
ディートフリートはその柔らかな体を包み込み、ゆっくり、ゆっくりと幸せを噛みしめた。
まるで自分を祝福してくれているかのような青い空と眩しい太陽に、ディートフリートは感謝を捧げる。
ここまでよくしてくれたルーゼン、シャイン。
そして両親に、王を引き継ぐことを決心してくれたフローリアン。
支えてくれた家臣たち、治安を維持してくれた騎士たち、支持してくれた国民たち──すべてに。
ディートフリートは今日、ずっとずっと待ってくれていた、ユリアーナを迎えに行く。
喜びで破裂しそうな心臓を押さえていると、隣を歩いていたルーゼンにからかわれて、少し力が抜けた。
せっかくの再会だ。どうせなら、かっこよく決めたいと思うのは男の性であると言える。
エルベスの町に入って歩いていると、町がざわつき始めた。
変装もしていなかったので、元王とばれてしまうのは仕方ないだろう。ルーゼンが適当にあしらいつつ、二人は進んだ。
とうとうユリアーナの働く宿に着いて中を覗くと、ここでもディートフリートを見た瞬間に周りが騒ぎ始める。
「お、王様……いや、元王様?!」
「ええ? 本物!? どうしてこんなところに!」
「もう私はただの一般人になったんだ。そう騒がなくても大丈夫だよ」
奥で働いていたユリアーナがディートフリートを見つめ、手に持っていた料理をことりとテーブルに置いていた。
色々言葉は考えていたが、まずはユリアーナがなにを言うのかを知りたいと、ほんの少しだけ待ってみる。
「ディー……なにも、王族を離脱しなくても……っ」
ユリアーナの第一声はそれで、少し震えていた。
「そうしないと、君とは結婚できなかった。それとも、王族でなくなった僕なんて、興味ないかい?」
「そんなわけはありません!! 私は、ディーが王族だから好きになったのではないんですから」
不思議なことに、ユリアーナと面と向かって話していると、一人称が『僕』に変わってしまっていた。
意識をしたわけじゃないが、あの日の感覚が蘇ってきたからか──それとも王という重責から、解き放たれたせいか。
どちらにせよ、あの頃の甘酸っぱい気持ちが徐々に蘇ってくる。
「僕も同じだよ。王としての使命は、弟がようやく引き継ぎを決心してくれた。僕は、できることをやったと思っている。今は、君との約束を果たしたい」
一歩前に出たディートフリートは、ユリアーナの手を取った。
二十三年間頑張ってきた彼女。
四十歳のユリアーナの苦労を物語る手は、とても美しく見えて──
気持ちは、溢れる。
「長い時を待たせてしまったね。どうか、僕と結婚してほしい」
ユリアーナがディートフリートを見つめている。
その瞳は、切なさをたたえていて、今すぐに抱きしめてあげたい気持ちに駆られた。
「私なんかでよろしいんですか? 私はもうおばさんだし、子どもだって産めるかわからない」
「なら僕も同じだな。もう王族ではないし、今の僕は無職だよ。仕事を探さなきゃいけないな。贅沢な暮らしとは縁遠いだろう」
事実だが、ディートフリートはちっとも不安になどなっていなかった。
仕事は、探せばなんでもあるだろう。そういう政策をしてきたのは他でもない、この自分なのだから。
料理の腕前は王城の料理人お墨付きだし、できればそっち方面で活躍したい。ユリアーナが心配することなど、何一つないのだ。
「こんな僕だけど、ユリアと結婚したいんだ」
大丈夫なはずだと思っていても、緊張した。
ディートフリートの言葉に、ユリアーナはこくりと頷いてくれる。
「はい。私、ディーと結婚します!」
「ユリア!」
全身の血が駆け巡ったような熱を感じ、ユリアーナの手をグイと引く。
そしてそのまま体を引き寄せると、優しく唇を落とした。
ここまで自制が効かなくなっているとは、自分でも思いもしていなかったことだ。
「一般人は、結婚前にキスしてもいいんだよね」
照れ隠しにそんなことを囁いてみる。
四十になったユリアーナは、少女のようにはにかんでいて、愛おしさが倍増した。
宿にいた人たちが、わぁっと祝福の声を上げてくれる。
ルーゼンは、周りに反して泣いているようだった。
ディートフリートはその柔らかな体を包み込み、ゆっくり、ゆっくりと幸せを噛みしめた。
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